第十六話:告白イベント再び
第十六話
俺は心配だった。同情されるかもっていうのもあるけど、僕に愛想を尽かしてどこかへいなくなってしまうことが怖かった。本当にそれだけは怖い。
それでも俺は普段通りにすごしていく。今日も一人で通学。最近あいつらが野球がんばってるみたいだし、素直に応援しておこう。
今気づいたけど弁当家に忘れてきた・・・。せっかく今日は肉結構入れたのに・・・。ミスったー!
そして今は放課後。呼び出しらしいけどなぁ・・・。なんで呼び出されてるんだろう?
「つきあってあげても良いわよ。」
普段通り、平穏。そのはずなのになんでそれを崩されてるんだろう?
私はあのことを聞いてショックを受けていた。どう接すればいいのだろう?なんと言えばいいかわからない。
朝練でもそのせいでキレがなかったみたい。
「さつき先輩大丈夫ですか?」
「あ、梓・・・。うん、大丈夫。」
「大丈夫じゃないですよ!思いっきり繕ったような表情してるんですけど!」
そんなのだろうか?顔を触ってみる。その瞬間「やっぱり・・・。」という梓のつぶやきが聞こえた。
「やっぱりって?」
「悩み事があるってことですよ。カマをかけてみただけです。」
私、こんなのに弱いのね・・・。駄目じゃん。さらに気落ちする。
「元気だしてください!それはそうと、市ヶ谷空のことですか?」
「ななななななな、なんで!ってはぁ〜。」
私本格的に駄目ね・・・。ポーカーフェイスくらい作れないと・・・。
「なんでって・・・、結構噂になってますよ?霧月さつきと市ヶ谷空が仲がいいって。最近はそれに斑鳩リョウと、進藤兄弟が入ってきてますけど。」
「え・・・。みんなにばれてるの・・・?」
「ええ、知らない人の方が少ないですけど。」
そうよね・・・。空君は人気なんだから、みんなに噂が伝わるのも速いわよね・・・。
私はがっくりと肩を落とした。
「先輩?それと手紙預かってるんですけど。」
「誰から?」
いろいろと混乱した状態で話を続ける。着替えながらなので、よく手紙が見えなかった。
「知りません。」
「わかった。ありがとう。」
もう始業開始まで10分ない。私たちは急いで着替えた。
そして放課後。
「つきあってください!」
なんでこのイベントがよりによっておこるの?
朝、下駄箱にたどり着く。そこで栄介たちと出会い、教室へ行くために階段を上がった。
「野球部調子どう?」
「結構良好。みんなしっかり動けるようになったし。」
とは言ってるものの、栄介と健介の表情は芳しくない。なにか理由があるのだろうか?
「どうしてそんなに暗いんだ?」
「それは・・・。」
「栄介のバカが、いきなりシード落ちだった高校と当たる番号引いてきやがった。本当に最悪だなこいつ。今年で引退する先輩もいるってのに。ほんっとこいつ駄目だよな。」
いつも全然しゃべらない健介がここまで言うとは・・・。そこまでさせるとは・・・。栄介と対戦相手、恐るべし。そんなところとやり合って、勝算はあるのか?
しかも栄介の足思いっきり踏んでるし。
「勝算は?」
「現時点で0,1%。ピッチャーの調子がよければ1%。そんなもんだ。」
そこまできついのかよ・・・。こいつらがいて勝てないのは、ピッチャーがものすごく悪いとかそんなもんだろうけど。でも聞いてる感じだと、悪くはないみたいだけどな・・・。
ここで健介が足を踏むのをやめた。栄介は悶絶中。
「どこと当たるんだ?」
「泰仙高校。」
「ってマジか!」
俺は叫ぶ。確かに勝算はほぼ0だ。この学校で勝てる方がおかしい。
「泰仙高校。数年前から弱体化し、今年はシードではない。だが今年の選手たちは、数年前に甲子園に行った者と匹敵するくらいの強さらしい。」
いつの間にか復活した栄介がメモ帳を読み上げる。どこからそのメモ帳だしたんだ?
「まぁせいぜいがんばれよ。骨は拾ってやるからな。」
「「なんで死ぬみたいな感じで言うんだ!」」
ここは二人して合わせてくる。さすが一卵性双生児。教室へ向かう。
自分の席に座り、教科書等を中に入れようとしてあることに気づく。
「手紙???」
あまりにも男の使うような者には見えない。・・・だってシールがハートの形。どうしてこんなのが入っているんだ?
手紙の表面を見る。しっかりと「市ヶ谷くんへ」って書いてあることから、俺宛なことはわかる。これはいわゆるラブレターですか?
あいつらにそれを見せてみる。
「ラブレターじゃないの?」
「ラブレターだろ?」
言葉は違うとも意味は全く同じだ。結局それしか結論が出せないな・・・。
「よかったなぁ!空。」
これは栄介。よかったっていわれても・・・。俺、今彼女らしき人いるんだけど・・・。
「それは誰からだ?」
「え〜と。書いてないよ。」
その言葉を聴いた瞬間、健介は眉をしかめる。
そして、健介にしては珍しく爆弾投下して、席へ戻っていった。
「俺も、ついていく。」
回りが固まる。冗談ではなく本当に。10秒の沈黙。そしてチャイムが鳴った。
なんでついていくなんて言い出したんだ?
私は、憂鬱だった。その気持ちを表すかのような天気だ。実際はそんなはずないのだが。
「雨かぁ・・・。」
そしてため息をつく。私はどうすればいい?今は、光が見えない道をただ歩いているような、そんな感じだ。
「さつき!ため息つくと幸せ逃げちゃうよ!」
「わかってるわよ・・・。そういえばリョウ。手紙がきたんだけど・・・。」
「ラブレターじゃないの?」
私が取り出したものを見てそう告げる。中身はまだ読んでいない。
封を切り、中身を見る。内容は簡潔だった。
今日の放課後、体育館裏に来てください。
「呼び出しねぇ・・・。とりあえず行ってきな。」
元からそのつもりだから何もいわない。この話題はもう終わった。
そういえばリョウに聞きたいことがあったんだ。そう告げて私は話す。
「ねぇ。なんで空君は一人暮らしなの?」
「はぁ!?一人暮らし?」
結構驚いている。そりゃそうだろう。そしてリョウは「にやっ」と笑いかける。
「そうか〜。ため息ついていたのはこれが理由かぁー。」
「ちょ、違うって!」
私にポーカーフェイスは無理なんですか?神様・・・。
「まぁ調べてみるわ。」
「よろしく〜。」
その会話が終わったとき、チャイムが鳴り響いた。
放課後。俺は体育館裏に向かっていた。無論手紙のことだ。健介もついてきている。
そしてそこでのんびりと待つ。そうしているとなぜか男子生徒が現れた。
「あれ・・・、なんだと思う?」
「知らん。でも敵ではないな。む
敵ってなに・・・?なんか変なことを考えているのは気のせいか?
そして女の子がやってくる。その続きに霧月先輩。・・・霧月先輩???
昨日のことが脳裏をよぎる。
少し・・・、気まずい。二人とも無言が続く。意を決して声をかけてみようとする。
「「あの・・・。」」
なんで、こんなところではもるんだろう?先輩は同情しているの?そのことばかり気になった。だけどそんなことを気にしていられない。今はただの先輩後輩を演じなければいけないのだから。
「霧月先輩?なにやってるんですか?」
「そ・・・、じゃなくて市ヶ谷くん。呼び出しだけど?君は?」
「俺もですけど・・・。」
まったく同じ用事だったようだ。それ以外に話したくはないから、俺は自分で考える。俺は誰に呼び出されたんだ?
「私よ!こっちへきなさい!」
俺考えてたこと声に出したっけ?とりあえずついていってみた。ついでに健介はもう部活へ行った。「もう大丈夫か。」っていいながら。なにがだ?
先輩たちと少しはなれて、話し出す。
「つきあってあげても良いわよ。」
「却下。」
即答する。俺はそんな風にいうやつは好きじゃない。というより好きにはなれない。こんな女王様的態度は。
「な・・・、なぜです!」
「一つ、君はそれが物を頼む態度だとわかっていない。二つ、その告白は本気なのかわからない。三つ、これが一番だけど、俺には好きな人がいるから。かな?」
最後のを告げるのはためらった。だけど、どれが誠心誠意の対応だと思うから。案の定こめかみをぴくぴくさせているけど、気にしないでおこう。
そして名前を聞いた。
「名前はなに?」
「私は・・・、泉みさきよ!ふったことを今にも後悔させてやるわ!」
「そっか。これからよろしく。」
なんか鳩が豆鉄砲食らったような顔をしている。友達としてのつもりだったんだけど、顔を真っ赤にしてここから走り去った。結構顔赤かったな・・・。
そして隅のほうへ目を向ける。その瞬間すっと隠れた感じがした。なんでだか誰だかわかる・・・。
「ばれてるからやめておいたほうがいいですよ?」
俺はそういって背を向けた。そして先輩と合流する。
霧月先輩もちょうど終わったようだ。なんか今のイベントで心がなえたらしく、やる気が出ないから一緒に帰ることになった。それってサボりだよな・・・。
私は放課後、体育館裏に向かった。
リョウがなんかいろいろと画策していたけど気にしない。
歩いていく間に、まったく同じ方向へ向かっていく女の子を見た。なんかいやな予感がする。
歩いていくと空君と、よく知らない男子生徒と、健介くんがいた。なんで?
「「あの・・・。」」
私はあのことを謝ろうと思った。だけど声を出す前に、空君が話し始めた。
「霧月先輩?なにやってるんですか?」
「そ・・・、じゃなくて市ヶ谷くん。呼び出しだけど?君は?」
「俺もですけど・・・。」
まったく同じイベントだったみたい。同じ・・・?それってすごくだめなんだけど!そう考えても解決はしない。そう考えて私は、がんばって大人の笑みを浮かべようと努力した。失敗しちゃったけど。
「で、あなたが私を呼び出したの?」
「は、はい!」
「で何かいいたいことは?」
不機嫌だから高圧的に・・・。なんかやだねぇ・・・。
「つきあってください!」
簡潔明瞭に告げられる。なんでよりによって、このイベントが起こるんだろう・・・。
「いやよ!私にだって好きな人がいるんだから!」
そういって私は彼をここから追い出した。ちょうど空君がこちらへかけてくる。見られていないかと心配になり、こっちへきたことへほっとする。
・・・自分の感情がよくわからない。いろいろ理由をつけて、私は一緒に帰ることに成功した。
結局なにもなく――あったけど終わった。泉さんはなにがしたかったんだろう?よく、わからない・・・。
先輩も同じ用件だけど、断ったって聞いて安心した。それにしても眠い・・・。最近いろいろがんばりすぎたかな。
見ると先輩も考え事をしている。なにに悩んでるんだろ?でも聞く気にはなれなかった。
そして電車に乗って、俺はそこで別れた。今日もバイトがんばるぞ!そう自分を叱咤して。
私が一緒に帰った本当のわけは、空君のことをもっと知りたかったから。そして謝ろうと思ったから。なんで一人暮らしなの?とかもっと聞きたいことがある。
でも聞いたらいなくなっちゃいそうな感じがして・・・。だから聞けなかった。でも知りたい。どうすればこの矛盾を解決できるの?
謝ろうと思ったときに、空君はバイトに行ってしまった。私はどうすればいい?悩んだ私はリョウにメールを打つことにした。
空君のこと、うわさも含めて全て教えて。と・・・。
それがどんなことになるかも考えずに。
すみません・・・。
投稿これから少し遅くなります。
塾の宿題がものすごく出ているので・・・。