【氷菓】「第一話 伝統ある古典部の再生」
【登場人物】
折木 奉太郎
千反田 える
福部 里志
【あらすじ】
省エネの生き方をする主人公折木の元に姉から一通の手紙が届いた。それに従わざる得ない奉太郎は古典部に入ることとなった。部室に鍵を開けて入るとそこに千反田えるが立っていた。なぜ鍵が閉まっていたのかを後にやって来た福部里志と三人で解決することによって彼らの連帯感と親交は深まった。
後半では七不思議の一つ目のピアノの話から避けるために、折木がオリジナルの話である女郎蜘蛛をでっちあげて解決まで自演した。その出来事に対する里志の評価に意味深に反応した奉太郎をもって第一話は終わった。
【感想」
まぁ直球で言うと、情報量が多いなと感じた。普段日常系を観ているせいか、あまり自分がこう言う作品に慣れていなかったと思った。
「やらなくてもいいことはやらない。やらなければいけないことなら手短に。」という奉太郎の信条は確かに里志の言うとおり言い訳じみているし、話の展開で好奇心を知り、終盤でその信条が瓦解して新たな考え方になるのだろうという予想が安易に成立する。そういったゴールのあり方についてはこの作品はかなり予想しやすいと思った。それが正しいのかは分からないが。
古典部という部活名に名前負けしないくらいに密度は高かった。基本的に、人物をいかに直球ではなく説明するかがポイントになってくるが、氷菓はそこにおいては満点だと思う。
千反田さんがお嬢様であることを里志が説明するが、それによって里志の性格も伝えることができている。さらにその説明に突っ込めることから折木の地頭の良さも伝わる。
一石二鳥ならぬ一石三鳥とすら思うほどである。
また最初、千反田さんと折木が出会った時に、千反田さんの記憶力の良さについて折木が驚いたのが印象的であるが、その後なぜ彼女が自分の名前を覚えていたのかについてすぐに推理と結論を導き出した折木に対しても我々は能力が高いことを気付かされる。一つに出来事で複数の人物の説明を可能にしているところは重要で、コツは対話を話の内容だけでなく行動として捉えている所であると思う。
また、私は話のレベルが高いと素直に感じた。それはこの第一話では言及されていないことが多く、さらに過程を一段飛ばしで常時進んでいるような気がしたからだ。
だからこそ私は有名作品ではあるが、正しく内容を理解できている人はそこまで多くないのではないかと思った。
演出面での良いところは、折木が自分は灰色の青春をしていて、周りの活力のある人々は薔薇色の青春をしているという考えを利用して、千反田さんに「私、気になります!」と言われて手を握られた折木に伸びた美しい初雪草を大きく魅せていたところ。
初雪草は好奇心を意味するが花言葉だけで終わらず、辺り一面に色が充満し色鮮やかに、さらに二人の特異な関係性を暗に示してもいたため、これこそ第一話を象徴するシーンであると考える。
正直、とっつきやすくするためには、視聴者側のレベルの人物を入れるべきである。もう一人メインキャラが登場するはずなので、私の予想としてはその子はドジっ子もしくはムードメーカーなのであろうと考えている。そうでないと秀才四人が謎解きをしていて視聴者側は置いてけぼりにされるであろうから。
【考察」
千反田えるは確実に何かを求めている。能動的な感情があるだろう。「私、気になります!」という言葉と彼女がお嬢様だという特徴を抽出してみると、箱入りの秀才だったからこそ様々な現実世界での不思議を知りたかったという背景があるような気もする。ただしこれではテンプレすぎて厚みがないと思われる。
だからさらにもう一歩踏み込んで考えてみるのであればやはり、なぜ彼女が古典部に居たのかについて掘り下げるべきだろう。第一話では「一身上の理由です。」としか言及されていなかった。その後すぐに「なぜ鍵が閉まっていたのか」という問題に移行させて、「なぜ千反田えるはその部屋に来たのか」をぼかした気がする。これは最終編で回収される謎のように思う。
そこを今から掘り下げようと思う。
鍵となるのはそもそもの古典部の部室の位置であるが、それは部室等の四階の端なので生徒が誤って入ってしまうことはまずないだろう。そして彼女が折木に出会うまでの間見ていたのはグラウンドにある古い社のような建物であった。ずば抜けて古い建物らしい。
また、千反田えるは詩人だという説明もあった気がする。
そこから察するに、彼女は和の教育を受けていて折木の姉と繋がっていたのかもしれない。「一身上の理由」というのが折木の姉による手招きだったのかもしれない。謀ったということだろうか。
折木は好奇心を持たないかわりに推理ができる。千反田さんは好奇心を持つが推理が特異なわけではない。関係性を深めることで双方にメリットがあるからこそ、折木の姉が双方をもし詳しく知っていたのであれば彼女達を古典部に誘導した可能性は十分にある。
女郎蜘蛛の件において里志は「痛い目を見るかもしれないね。」と言っていたがどう言うことだろう。
集合場所なども書いていたので、おそらく実際に女郎蜘蛛の会に突入してみようと言う話になるということではないだろうか。
また後半における奉太郎の行動には不可解な点が多かった。理由として、第一話後編のテーマであった「不慣れなやつほど奇を衒う」を用いて説明するのであれば、千反田さんがいるという不慣れな状況であったからこそ折木は遠回りなことをしてしまった、という説明になるのであろうか。
なぜピアノ教室に行きたくなかったのかについては想像の余地があるが、主に考えやすい内容としては折木が昔ピアノをやっていて挫折してしまった過去があるからなどであろうか。本当にただ遠い場所だったから嫌だったとは思えない。音楽室に苦手な生徒がいたというのも考えられそうだ。
正直言うと不慣れなのは折木だけでなく千反田さんもであり、別れの時など、かなりぎこちない様子を感じた。だからこそ千反田さんは謎について気になるし彼らに付き合ってもらうけれど、ある線以上を彼らに求めるのはまだ早いという感情も持っていそうだ。引き際が後編では前編より早かったように思う。女郎蜘蛛の会だって、なぜそんなものがあるのか、など聞きたいことは山ほどあるだろうにという話だ。
【総評」
面白かったが、謎を自分が考える時間はそこまでなく、またその謎が難しいため消化不良で進み、それに加えて関係性の変化や考え方の変化が裏で起きているためしっかり試聴しなければ多くの箇所を見落としてしまう危険があるように感じた。
この作品に対して私はすいぶん前から興味を持っていて、さらに高校卒業までにこういった学生のアニメは観ようと考えていたので、その思いを無事果たせたのであるが、少し主人公の省エネの生き方には賛同できないなと思ってしまった。私は思考することが大好きであるため。
【雑談】
木造校舎を見て、思わず私はハローワールドを思い出した。この作品の主人公達は図書委員だったし似ているところがありそうだ。掘り起こすと「負けヒロインが多すぎる!」も木造校舎だったと思う。
やはり何かしら文系の文学的要素を持つ作品のに共通して、木造建築で落ち着いた雰囲気という一種の演出についての共通した考えでもあるのだろうか。
今度の展開でどう転ぶか楽しみである。
文学的要素を深めるのも良し、関係性に注目するのも良し、謎解きに注力するのも良しである。




