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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

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廃棄ロボットを拾った整備少女

作者: にしはじめ
掲載日:2026/03/06


 うーん、これもはずれ。これも……はずれ。

 

 あたしは、今お宝が眠っているだろう廃棄所に来ていた。ここには、企業が捨てたジャンク品が転がっている。

 あたしは、それを修理して、売るなり使うなりして生計を立てていた。


 でも、なかなか当たりが見つからないんだよね。

 今日は、だめかなぁ。次の廃棄日って、いつだったっけ。


 そう考えながら、それでも手を休めずに品定めしていると、不意に声をかけられた。


「すまない」


 一瞬にして、そこから離脱し、銃を構える。

 が、視界には誰もいない。


 ……あれ?


 空を見上げたけど、知らない鳥が一羽飛んでいるだけだった。

 構えた銃を下ろして、一息つく。

 空耳?

 でも、はっきりと男の声で聞こえたよね。


「すまないが、俺を拾ってくれないか?」


 再び銃を構えたが、やはり姿は見えない。

 透明化?

 しかしセンサーには反応していない。

 もしかして、新型?


「ああ、俺はここだ」


 銃を構えたまま、おそるおそる声の元へと近づくと、そこには一つの生首が置かれていた。

 それが、ぎょろりと目を開いてあたしを見てきたのだ。


「ひっ!?!?!?」


 思わず口から飛び出しかけた悲鳴を、無理やり飲み込んだ。

 こんなところで、大声なんて出せば衛兵たちに見つかってしまう。

 平常心だ。落ち着けあたし。

 そして生首を観察すると、首から下にコードが何本も垂れさがっており、それがどこかに繋がっていた。


 ……なんだ、ロボットか。


 生首を拾い上げ、コードを辿っていくと、本体を見つけた。

 ただし、上半身の一部のみ。これで、よく会話できるものだ。

 どこからバッテリーをつなげてるんだろ。


「すまない。俺のパーツは、あちこちに分割されてる。全部回収できるか?」

「うーん、全部は分からないけど……拾えるものは拾うよ」


 まだ稼働しているロボットなら、色々と使い道がある。

 ここに捨てられている以上、企業のロボットだろうから、たぶん戦闘タイプだよね。

 それなら直して売ってもいいし、護衛としても使える。


 そしてかなり回収したはいいけど……重くて動けなかった。


「重い……」

「そうか、あんた非力だったっけ」


 戦闘用ロボットなら、数百キロはあるだろう。

 これでもアーム補助のパーツを付けているから、多少は持てるんだけど、さすがに数百キロは無理だ。

 人間のあたしが持てるわけがない。


「仕方ないなぁ……台車でも持ってくるか」


 とりあえず、バッテリーと頭だけ持っていこう。


 何往復かして、どうにかパーツを全て拾って持ち帰った。


====


「うっわ、今時火薬武器かー」


 ばらばらになったパーツを一つ一つ確認していくと、やけに旧型のものが目についた。

 特に火薬を使った武器を多く搭載していた。

 現在主流の武器は、全て電気式で作られている。

 基本はレールガンやコイルガンで、他にもレーザーやマイクロ波があり、それらを無効化させるEMPも搭載されている。

 まあEMPと武器はイタチごっこだけどね。

 また、レーザーをふせぐシールドなども装備しているタイプが多い。


 一応電気類の武器もあるのだが、それも十年以上昔のタイプだ。

 なるほど、古くなったから廃棄されたのかな。

 それでも、ところどころ試作品みたいなものも取りつけられている。


 テスト用の個体かな?


「直るのか?」

「直すよ。これは楽しくなってきたね」


 こういった旧型の物は、あまり触れたことがない。

 だから、内心わくわくしている。


 でも、色々とパーツが足りなさそうだ。

 手持ちは二世代くらい前のものしか持ってないからね。

 新型のものなんて、廃棄所に捨てられているわけがないから、二世代前あたりがちょうど良いのだ。

 それでも、この個体って二世代どころか五世代くらい前だよね。

 うーん、骨董品のおやじのところに、あるかなぁ。


「色々とパーツが足りないから、ちょっと買ってくるわ。さすがに火薬武器は、手持ちにないからね」


 火薬は手に入りにくい。

 火薬類を大量生産している企業は、国や他企業に卸しているから、一般市民のところへは回ってこないのだ。

 あたしも、材料さえあれば作れるんだけど、その材料の入手が難しいんだよね。

 そもそも作れるような場所もないし。


「うむ、迷惑をかける」

「あたしも、古いパーツなんて殆ど扱ったことないし、いい経験になるからさ」


 そうして、骨董品のおやじから、色々パーツを買ったり交換したり譲って貰ったりして、何とか集めた。


====


「おお、動くぞ」

「ふー、時間かかったなぁ」


 一か月かけて、ようやく動くレベルまで修理した。

 やはり古いためか、パーツのないものが多く、そこは新しいものを改造してつけたり。

 あとは、火薬だ。

 一応揃えはしたものの、在庫が少なく、そうそう使えない。

 これは、のちのち電気類の武器に交換かなぁ。


「いや、火薬武器も多少は欲しい」

「なんで?」

「電気武器は、乗っ取られる。だが、火薬武器なら関係ないからな」


 ああ、そういう意味か。

 電気武器は、電子制御されている関係上、外部からの乗っ取りやEMPで無効化されたりする。

 しかし火薬は原始的だから、関係なく使えるからね。

 火力については、電気武器のほうが高いけど、ちょっとした弱い敵ならオーバーキルだからね。火薬武器でも十分倒せる。

 ねずみを倒すのに、でかいハンマーを使うようなものだ。そんなものを使わなくても、踏みつぶすこともできるからね。


「ああ、まだそんなに激しく動かないで。耐久性のチェック終わってないから」

「ふーむ、違和感はないが」

「パーツの関係上、無理やりつけたところもあるからね。そこがどうかわかんない」

「しかし、君は若いのに、なかなか良い腕をもっている。企業にも十分勤められるぞ?」


 あたしの母が、元企業のメンテナンス員だったから、色々と教わったんだよね。

 だからか、企業のメンテナンス方法は知っているし、内情も色々と聞いた。情報は古いけどね。

 ただ母はもう死んじゃったから、教わることは、もうない。

 こんな世の中だから仕方ないとはいえ、やっぱり悲しいや。


 ……あ、ねじが一個落ちた。


「ちょっとまって! ねじ! ねじ!」

「お? あ?」


 慌ててロボットを止めて、落ちたねじを観察する。

 どこのやつだ、これ?



 それから一週間かけて、歩行、武装、センサーのチェックを一通り終わらせた。

 本当なら、もうちょっと耐久性をチェックしたいんだけどね。

 こっちも稼がなきゃ生きていけないし、そんなに長い間、時間をかけられない。

 まあ仕事しながらでもチェックはできるから、いいか。


====


「うーん、これも違う……これは外れ」


 チェッカーをつなげて、回路が生きているかどうかチェックするも、なかなか当たりが見つからない。


 ピピッ。


 八個目につなげてチェックすると、ようやく電子音がなった。

 えっと、これは……ああ、網膜認証用の基盤だ。

 でもこれって、職員の死体をもっていけば通るし、そもそも扉をぶっ壊すやつが多いから、人気がないんだよね。

 セキュリティというよりも、簡易的な鍵代わりくらいの値段にしかならない。

 他に何かあるかなぁ……。


 そんな感じで探していると、腕に付けたアラームが鳴った。

 敵か。

 さっとレーダーを見ると、ちょっと離れたところに犬……ではなく、野良の軍用犬ロボットがいた。


 野良ってのは、作ったはいいけど、廃棄したものや制御から抜けてしまったものを、そう呼んでいる。

 ペットを買ったならちゃんと最後まで責任持とうよ……。


 しかしそういった野良は、ほぼメンテナンスを受けてないので、割と対処がしやすい。

 日本製は寿命が長いと言われているが、毎日酷使しているなら一年くらいで、どこかにガタがくる。

 また日進月歩の世界なので、最新型武器などの対策が施されていない。

 メンテナンスって大切だね。


 さて、EMPを周囲に……。


 しかし、あたしの展開したEMPが全く効果なく、こっちへ向かって走り寄ってくる。

 やばっ。もしかして、野良になったばかりのやつ?


 慌ててそこから離れた瞬間、軍用犬ロボがすぐさま反応して、噛みついてくる。

 まずい。

 そう思った瞬間、真横から蹴りが飛んできて、犬を吹き飛ばした。


「任せろ」

「あっはい」


 そういえば、今日からロボットを連れてきてたんだ。

 すっかり忘れてた。一つに熱中すると、他のことを忘れてしまう悪い癖だ。

 ロボットは弾がもったいないのか、体術だけで犬を圧倒していた。

 あっという間に、制圧したロボットは、犬を鷲づかみしたまま持ってくる。


「バッテリーを壊した。それ以外は、おそらく無事だろう」 

「ほんと!? それはありがたい」


 うひひひ、軍用ロボ犬のパーツ、げっとだぜ!

 犬型は警備に向いているので、需要が高くパーツもよく売れるのだ。

 しかもEMPが効かなかったということは、かなり最新型のはず。

 これはボーナスだね。


「それにしても、あんた強いね」

「まあこれくらいは……な」


 設定を見る限り、企業が作った試作用の戦闘タイプだと思うんだけど、古い武器しか搭載されていなかった。

 それでも最新型の犬を、武器も使わず圧倒したんだから、そうとうなハイスペックだ。

 搭載されているAIも、従来のものと随分違う。試作型だからかなぁ。


 AIって戦闘を最適化させ攻撃するので、どうしてもある程度パターン化された動きになってしまう。

 だから、熟練の兵士相手だと勝てない。

 例えば右斜め前から攻撃を受けると、必ず一体が防ぎ、それ以外が相手を囲むように回り込む。

 事前にそういう動きをしてくると予想できれば、熟練者にとってはやり易い相手だろう。


「それ、もって帰れる?」


 犬型とはいえ、かなりの重量だ。あたし一人では、台車を使わないと持てない。

 でもこのロボットは、軽々と持ち上げてみせた。


 これ、売るより護衛や荷物運びとして、手元に残しておいたほうがいいんじゃないかな。

 便利すぎる。


====


「決めた。あんたはあたしの護衛兼荷運びとする」


 俺を拾って修理した若い女が、そう言い放った。

 俺は元大企業の試作戦闘フルボーグだ。脳みそ以外、全て機械で出来ている。

 彼女は俺をAIだと思っているが、それは違う。

 AIはサポート用に使っているが、戦闘技術は俺という人間が培ってきたのだ。


 元々は、企業の専属傭兵だったのだが、ある日メンテナンス員の女と恋仲になり、子を作った。

 だがその女は、その子を連れて逃亡したのだ。

 そのため、手引きをしたと疑われて、試作の戦闘フルボーグへと改造されてしまった。

 まあ実際に手引きしたんだがな。


 それから十五年、企業の最新型戦闘AIと模擬戦や他企業との抗争で戦ってきたものの、さすがにガタがきてしまい、廃棄処分となったのだ。

 脳はまだまだ十分戦えるが、十五年も前の技術をベースに改造していたため、どうしても最新型と比べると劣ってしまう。

 それに、もう一度改造するより、新しい人間を改造したほうが手っ取り早く、費用もかからない。


 こんなわけで、廃棄所へ捨てられたのだ。

 まあ、こんな最後になると予想していたから、ショックはなかったがな。


 本当なら、この若い女に声をかけるつもりはなかった。

 しかし彼女を見た途端、昔愛した女の面影を思い出してしまい、つい声をかけてしまったのだ。


「じゃあ、まず自己紹介だ。あたしの名は梨花。大ノ橋梨花だ」


 大ノ橋?

 非常に珍しい苗字だ。そしてその苗字には、一人だけ心当たりがあった。


「大ノ橋梨花だな。俺は……そうだな、弦蔵げんぞうとでも呼べ」

「弦蔵? これまた古臭い名前だね」

「梨花は何歳だ? 随分若く見えるが」

「十五だよ。二年くらい前に母が亡くなって、そこから独り立ちした。ちゃんと、母からメンテナンス技術を叩きこまれたから、安心して」


 …………。


 俺が考え込んでいると、梨花が慌てて言い訳をしてきた。

 おそらく俺が、若いから梨花の腕が悪いと判断した、そう思ったようだ。


「おっと、亡くなった母は元企業のメンテナンス員だ。だから、腕は人並以上にあるよ」


 それを聞いた瞬間、心の中で笑った。

 十五歳で大ノ橋。

 俺が愛した女の苗字であり、彼女に似た面影を持っている。そして、俺の子が生まれたのも十五年前。


 皮肉な運命だな。まさか実の娘に拾われるとは。

 俺が父親だと伝えるべきか?


 ――いや。


 すでにこの子は、父親がいなくとも生活している。

 ここで俺が名乗るより、彼女を裏から守ってやるのが父親ってもんだろう。


 廃棄処分を受け、俺の人生はそこで終わったと思っていた。

 しかし、こうして偶然娘と再会できたのは、神ってものがいるかも知れないな。

 娘が一人前になるまで手助けをするのも、父親の仕事だろう。


「ならば全幅の信頼を寄せよう」

「それは言い過ぎだよ。じゃあ明日も廃棄所で色々と漁るから、護衛と荷物運びよろしくね」

「ああ、任せろ」


 娘を守るのは父親の仕事だからな。





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>どこのやつだ、これ? あるあるw 脳の維持はどうしてるんだろうね?
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