人気俳優は……実はヲタクでした
初めは楽しかった。
演じるということが、こんなに楽しいなんて思わなかった。
だけど……最初に演じた『王子様』がガッツリハマってしまい……。
「浅樹君。何しているの?」
共演中の可愛い真由美ちゃんだ。
「うん、ちょっと気分転換に、小説をちょっと」
「何を読んでいるの? きっと羅那くんなら……星の王子様とか!!!」
僕は人気俳優という名の仮面をかぶって、王子様風笑顔を見せた。僕から言えば、営業スマイルってやつだ。
「ないしょ」
そういって、口元に指先を当てて、ウインクすれば……うん、なんとか躱せた。
……言えるわけない。
だって、僕の読んでいるのは、星の王子様とか銀河鉄道の夜とか、そういうもんじゃない。
――ただの漫画挿絵がガッツリ入っている『ラノベ』だから!!
誰だよ、俺にこんな王子様イメージ付けたの!!
親父か、あの親父の差し金か!? ありそうだけど……いや、最初に僕に王子役を当てたあの監督か!?
そのイメージが外れなくて、こんなに苦労している。
そう、崩せない。
こんな休憩時間でも……崩せないんだよ、くっそーーー。
せめて、ゲームしたい。
ホントは山積みになってる、あのゲームの山を崩したい。
いや、プラモ作ってもいい。
はあ、もう何年も触ってない。作ってジオラマで遊びたい。
ああ、フィギュア眺めるのもいい。
けどけど、それはイメージじゃないって言われてるし!! マネージャーにも厳命されてるしっ!!
けど、これくらいなら許されるよな? ちょっと騒がれてたけど、まあいいよな?
ゲームに出てきた格好いいマークが入ったアクリルキーホルダーを、鞄に付けるくらい!!!
あああ、このアクキーのロボゲーやりたい。
もう、次のオフは、絶対、籠る!! 籠ってアニメとゲームを摂取する。
そうしなきゃ、俺はもう……ムリっ!!!!!!
「最近さ、羅那……煮詰まってないか」
「あー、わかりますか、監督……なんかこう、辛くて」
そう憂いを帯びた表情を見せると、監督は同情してくれた。
「お前もたまってるんだな。ソープ行ったらどうだ?」
…………違う、そうじゃない。
むしろ、そっちはいらない。
僕には心に決めた人以外は、動かない。せめて今は二次元を摂取したい。
残念そうな笑顔を見せちゃったけど、うん、まあいっか。
「なら、仮面とか付けて、ストレス発散とかどうだ?」
「仮面……?」
いや、今、そんなことしたら、ヤバいことになるだろうが……!!
仮面をつけたって、普段の格好で出て行ったら……いろんな人に囲まれて動けなくなる未来しか見えない!!!
まあ、例のヲタク恰好でいけば……ギリ行けるけどさ……それでバレたらマジで洒落にならないし……。
ああああ、せめて、せめて……こう、ヲタク談義できるところとかあれば……。
と、マネージャーが動画を見ている。ああ、最近、人気のVチューバーか。
Vチューバー?
…………あっ。
ぴんと来た。
そうだ、なら、顔出さずに声と動きだけで出ればいいんじゃね?
おおおおおおおおお、俺、ナイスアイディア!!!
「お、何か閃いたか、羅那?」
「あ、ええ、ストレス発散にいいのを思いつきました」
「なら、その調子で……この撮影も終わらせような!!」
監督に良い顔されたが、まあ、今回の撮影も何とかなりそうだ。
そうと決まったら、ガワを頼まないと!!
費用ならいくらでも……って、あまり多額に出したら、委縮させてしまう。
ここは、慎重に神絵師に頼んでいこう。ふふふふ。なんだか、楽しくなってきた。
たしか、Vチューバーって、ゲーム配信とかもやってたよな。うん、仕事仕事。仕事ってことで……。
「ふふふふ、ふふふ……」
「おい、羅那……大丈夫か?」
おっといけない。うっかり顔に出てたか。そうと決まったら、始めよう。
僕のVチューバー生活を!!!




