格好いい彼は、凄い俳優さん
どんと、私は追い詰められていた。
背中には公園の大きな樹。それに私は壁ドンというか、木ドンされている。
「僕から逃げられると思っている?」
涼やかな、蒼い瞳。ノンフレームの眼鏡。艶やかな黒髪。そして。
整い過ぎている格好いい、その顔!!
「駄目だよ。君はもう、僕のものなんだからね」
そういって、格好いい彼は、私の顎を持ち上げて、楽しげに微笑むとその唇を…………。
「……という夢を見ちゃうなんて、ヤバすぎ……」
街を歩いていれば、すぐに目に入る場所に、その彼のポスターがいっぱい貼られている。
今、人気上昇中の俳優さん。
『また、映画主演が決まったそうですね! 次はどのような役をするんでしょうか?』
街頭で流れる大きなテレビジョンいっぱいに彼の顔が映る。
『それはまだ、発表前なので秘密です。でも、決まりましたら、ぜひまた見てくださいね』
『人気俳優の、浅樹羅那さんでした!!』
――浅樹羅那。それが、彼の名前。
もう、全国区で彼を知らない人はいない。
美形で完璧な王子様風、人気俳優。それが、羅那くんだった。
何というか、雲の上のような人。
それに…………。
「サナーー!! お待たせ。原稿は終わったの?」
親友の美咲が声をかけてくる。
「うん、なんとかギリギリ。最高の漫画が書けたから、楽しみにしててね!」
「楽しみにしてるよ。サナの……ううん、未来さあや先生の作品は、なんだか、綺麗でドキドキしちゃうんだよね!!」
「そう言ってもらえると嬉しいな」
「けどさ、なんか……お相手の彼氏って、最近人気の俳優さん、羅那くんだっけ? その人に似ているのは気のせい?」
「そ、それは……気のせい!!!」
それに、私は見ているだけだ。ちょっと似せてるのは秘密だけど……。
そう、私は人気……同人漫画家である。
けれど、この二つの道が重なるわけはない。
ただ……こうして遠くから見るのが良い。
だ、だって……羅那くんは私の理想を現実にしたような人だから!!
推しは遠くから、見るのが鉄則!!
「それは分かる」
「だよね!!」
「そういうことなら、指摘はせずにしておくよ。あ、新しい小説できたから、カットよろしく!」
「美咲ちゃんもガッツリだね!!」
こうして、私達は近くのファミレスで打ち合わせを始めたのだった。




