放課後、非常階段にて
ふと、校舎を振り返るといつもの場所に、ゆらゆらとゆれる煙とあの人の姿を見つけた。
気怠そうに手すりにもたれている姿は教室で凛と立って授業をしている時とはかけ離れている。
「え、まだ残ってくの?」
隣で歩いている彼女がきょとんとした顔でこちらを見ていた。
彼女は少し前に告白してきて、まぁ可愛いからいいやと軽い気持ちで了承した僕の彼女だ。
「あー、プリント出し忘れてたから」
「私、待ってるよ?」
「いや、大丈夫。先帰ってて」
彼女にバレないように、僕は笑顔で手を振り、今来た道を引き返す。
はやる気持ちを抑えながら、あの人のもとへ急ぐ。
3階の非常階段。
走って来たことをバレたくなくて、直前で息を整える。
「せんせ、下から丸見えですよ」
「うわっ!…なんだ田口か」
ビクッと震える背中に思わずニヤけながら先生を覗き込む。
先生は僕をジロリと睨みつけると、下から見えないよう、校舎の壁にもたれかかって座り込んだ。
タバコを吸うのをやめる気はないみたいだ。
「学校終わったんだから、早く帰りなさい」
「つれないなぁ」
「学生は学生らしく、放課後はデートとかして青春を謳歌しなさいよ」
「え?先生デートしてくれるの?」
「阿呆か」
先生は笑いながら、吸っていたタバコの火を消すと立ち上がった。
「じゃあ、また明日」
そう言って笑う先生の笑顔に見惚れていたら、先生は僕の頭を撫でて、職員室へと帰って行った。
先生がいなくなった後も残るタバコの匂いが僕にまとわりついて離れない。
それが先生に抱きしめられているみたいで、なんだかたまらない気持ちになった。
この気持ちがなんなのか、答えはまだない。




