後編
最終話です。ここまで読んでくれた皆様、ありがとうございました。
【××新聞】
『森の中から男性の死体発見』
×月×日水曜日、森の中でキノコ採取をしている四十代男性が、森の地面の中から男性の死体を発見した。
発見直後に、電波の繋がる場所まで行き、通報をしたという。死体は、死亡後数年が経っているという。死体は、高橋 伏見さんのものだと警察は明らかにした。
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『ヨウタ君事件』の犯人は高橋伏見だ。そう思い、急いで車を飛ばしながら佐藤に電話した。佐藤は警察なので、なんとか出来るだろうと思ったのだ。
スルメ:「もしもし。佐藤さん。」
佐藤:『もしもし、どうした?』
「『ヨウタ君事件』の犯人がなんとなくわかったと思うんです。」
『なんだって?』
「犯人は、高橋伏見さんです。」
『……高橋伏見だと?』
「はい。」
そう言って、自分の考察を話した。ヨウタに何かをさせようと紙を渡したこと。だが急用ができてしまったこと。倉庫に近づいてきた住民に向けて反対向きで文字を書いたこと。
『確かに……パニックになってたと言えばそれまでだが、反対向きに書くなんて有り得るか?しかも謎なことが多すぎると思う。』
スルメ自身もそれは分かっていたが、やはりそうなってしまうか。わざわざ何かさせようと紙を渡すなんて有り得ないし、ならば拘束を外すだろう。
そして一番気になったのは、誰かを抱えていたという証言だった。ヨウタの死体は現場に残っていたということなので、誰を抱えていたのだろうか。
『あと、一つ教えとかなきゃ行けないことがあるんだ。メールでネットの記事を送ったから見てくれ。』
佐藤から送られてきた記事を見ると、ある文字が飛び込んできた。
『森の中から男性の死体発見』
まさか。そう思い下まで見てみると、その死体が高橋伏見のものであると書いてあった。それも死んだのは数年前だそうだ。
『埋められてるって事は間違いなく他殺だな。となるとやはり……』
「何者かがヨウタ君を殺した直後に伏見さんも殺して、森に埋めたということですか……?」
『住民が言ってた「誰かを抱えていた」っていうのは伏見の事だったんだな。』
高速道路から一旦降りて、近くのコンビニに止まった。×県⚪︎市店のコンビニ……
「そういえば、伏見さんの家があるのも×県でしたね……」
『え?』
「今、伏見さんの住んでた県にいるのですが、ちょうどいいので、見かけたことのある住民に聞きこみをしてきます。」
『あぁ、確かに。まぁ頑張ってくれ。』
そう言うと佐藤は通話を切った。ネット記事などで伏見の家を調べると、意外と簡単に見つかった。急いで家まで向かった。家の方に目を向けると、追悼の為に、花が添えられていた。花瓶に入った花もあり、家が鮮やかに彩られているようだった。
とりあえず、近隣住民に聞きこみ調査をしてみた。
とは言っても、特に聞くことはなかったので、ヨウタと伏見の二人のいつもの様子を聞いていた。すると、驚きの情報を知ることが出来た。
住民:「あぁ、あの事件があった家でしょ?あそこの二人、いつも仲が悪かったのよ。ていうか、簡単に言うと父親の方がいつも虐待してて……」
父親というのは、恐らく伏見の事だろう。それを聞いた瞬間、点と点が繋がるように突然全ての真実が分かった。
高橋伏見は息子替わりのヨウタに虐待をしていた。だが、ある日二人は突然誘拐されてしまった。
誘拐された先の廃倉庫の中で、伏見は紙を、ヨウタは鉛筆を発見した。そして伏見に、「犯人の特徴を書け」とでも、何とか言われたのだろう。
だが、恨みがあったヨウタは、伏見を犯人にしようとした。そして、記事に書かれていて、世間にも伝わるように、『ふし君』と書こうとした。
だが、そこで今までの怒りが湧いてきてしまった。そして、目隠しをされて見えていないものの、伏見に見せつけてやろうと思った。そして、『ふしくん』と見せつけるように反対向きに書いた。その際に『ふ』は書きにくかったので、カタカナの『フ』にした。
結果、『し』が左右反転してしまい、『フJく』で、『水』と誤解されてしまったのだ。
その後、誘拐犯にヨウタは殺され、その直後殺された伏見は、森に埋められてしまったのだ。
「これが全ての真実…」
真実は意外と呆気ないものだった。虐待に対する怒りが、全てを生んだのだ。
とは言っても、肝心な事が分かっていない。一体犯人は誰なんだ?その時突然ある違和感に気がついた。
警察に追われていて、時間が無かったから、銃の弾を一発外した。だから「二発目」に当てた、と新聞に書いてあった。なら何故その後伏見を抱えて移動する時間があった?それに、人ひとり抱えられるなら、紙くらい処理出来るはずだ。
もし、犯人に余裕があったとすれば?二発目に当てたのは、標的が逃げたからではないか。その後余裕がある犯人は伏見を抱えて逃げていった。
確かに納得はできるかもしれない。だが大きすぎる違和感が残った。
紙を何故処理しなかった?紙は机の上に置いてあったそうだ。なら気づかないはずはない。時間がなかった訳でもないのに、なぜ置きっぱなしにしたのだろう。
そしてもう一つ。ヨウタは机近くの椅子で座って死んでいた。ならば全く標的は逃げていない。
では何を狙っていたのだろう。そうなれば狙ったものは一つしかない。
犯人は高橋伏見を狙って発砲した。ところが伏見が逃げて、一発は地面に当たった。二発目は、流れ弾が、ヨウタに当たってしまった。
その後警察に気がついた犯人は、伏見を担いで逃げていった。
これが事件の真相。なら、何故紙を片付けなかったのか。またその謎に直面した。
もしやと思っている考えが一つだけあった。全ての辻褄があってしまう。だが、そんなこと有り得るのかと言いたくなってしまう。
ヨウタと犯人は裏で繋がっていて、いわゆる自作自演をしていた。伏見を殺してやりたいという憎しみがどんどん膨らんでいった。
だが、甘い殺し方をすれば、絶対にバレる事は承知の上だった。だからこそ自分も誘拐させ、伏見だけを殺そうとしたのだ。そして、伏見に濡れ衣を着せようとして、世間に伝わるように、『ふし君』と書いた。それが『水』に勘違いされてしまった。
だがそこで事件は起きた。伏見を狙った犯人の発砲が、ヨウタに当たってしまったのだ。焦った犯人は、伏見を連れてすぐに逃げた。そして、どうにか逃げ切って、森の中まで運び、伏見を殺害したのだ。
では犯人は誰なのか。それと同時にある違和感に気がついて、スルメは車を急いでUターンさせた。
なぜ気づかなかったのか。伏見の家に添えられた花。あれは手入れされていた。だから家が彩られているように見えたのだ。では誰が住んでいるのか。直感的にわかった。そこに住んでいる人間が犯人だ。
伏見の家に到着すると、真っ先に窓を確認した。インターホンを鳴らした後に居留守を使われても困る。
すると、やはり中には誰かが住んでいた。なのでインターホンを鳴らしてみると、案外、中の住民は簡単にでてきた。
スルメ:「伏見さんとはどう言った関係でしょうか。」
男は少しピクリと眉を上げてから、低い声で「入ってください」と一言だけ言った。
部屋は意外と片付いており、綺麗なリビングだった。
男:「そこに座っていてください。」
リビングの机に向かい合って置いてある椅子に座った。すると、男は背後のキッチンで何かをし始めた。
「私はね……世間的には死んだと報道されていたんですよ……でも実際には生きていた。交通事故何てものは偽装だったんだ…!そして私は高橋伏見の兄でね……あなたも知っているでしょう、『ヨウタ事件』の犯人は……私なんですよ…まぁ、今から死ぬ貴方が知っても意味は無いですがね!!!」
そう言うと伏見の兄は包丁を突き立てようと、スルメに向かってきた。腕にかすってしまったが、殆どかすり傷だ。スルメは弟の足をかけて転ばせて、包丁を蹴り飛ばした。
転んだ兄の頭を押付けて、腕を掴んだ。
「余計な動きはしないでください。会話は全て録音しました。」
そう言ってポケットから録音機器を放り出した。すると、スルメは振り向いて玄関の扉に向かって叫んだ。
「佐藤さん!!」
佐藤:「ここまで来るまでどれだけ飛ばしたと思ってんだよ!」
スルメが叫ぶと、扉から佐藤が突入してきた。伏見の兄の手首に手錠をつけて、伏見の兄を立たせた。
「午前十時二十四分、高橋宅で、『殺人未遂』で高橋ユウタを現行犯逮捕する!」
「ぅああぁぁああ……ああああぁぁ!!!」
逮捕された高橋ユウタは叫び声を上げて仰向けになった。
こうして殺人未遂で逮捕された高橋ユウタだったが、やはりと言うべきか、調査の結果『ヨウタ君事件』の犯人も高橋ユウタだと報道された。それに加え、スルメが調査した事件の全貌も報道された。そして、高橋ユウタ自身も、罪を認めているという。
だが最後に一つの違和感があった。何故、紙に『ふし君』と書いた後に伏見を殺す必要があったのだろうか。殺すだけで足りたのではないか。
そう思い事件の記事を調べると高橋ユウタのある発言が見つかった。
『私は、同情して弟(高橋 伏見)を殺した。ヨウタの作戦では、私がヨウタを殺して、罪を伏見に擦り付けて生き地獄を味わわせようとしていた。だが、そんな事になるならと思い、私が弟を自分の手で殺した。本物の怪物は、高橋ヨウタだった。』
ご愛読ありがとうございました!締め方も内容も雑な作品でしたが、自分的には結構頑張った方です。三話だけでしたが、ありがとうございました!