前編
なんか企画やっていたので参加してみました。ただ変な絵を読んで憧れてるだけのクソガキの小説です。でも面白さは保証します。……多分。
まずこの画像を見てください。
画像を見て何を思いましたか?
これは小学五年生の少年、「高橋 ヨウタ」君が殺傷された際に、部屋から発見されたものです。
水の横にぐしゃぐしゃと何かが書いてあります。恐らく、少年は喉の乾きから『水』が欲しいと訴えかけるように書いたのでしょう。ですが、それは叶うことなく、二発目の発砲で殺されてしまいました。
その時のあまりの痛みに紙の隅で鉛筆をぐしゃぐしゃと走らせてしまったのでしょう。
こちらはPDF化したものなので、その荒々しさは伝わりませんが、実物からは相当な苦しみを感じられました。
この事件はまだ未解決のものです。是非ともいち早く解決して、少年の無念を晴らしたいものです。
これが、『××新聞社』が警察にインタビューをしてネットに載せた記事の内容だ。他の新聞社からも、様々な情報が発信された。
喉の乾きと発砲の苦しみ、この残酷な事件に、市民は様々な意見を上げた。
『ヨウタ君のご冥福をお祈りします。早く事件が解決しますように。』
『××警察はよ仕事しろや』
『仕事したけど解決できてないんやろ。限度考えろや』
『こういう事件多いけど、どうにかならんものなの?今回は容疑者も出てないけど』
と、色々な意見が寄せられた。だが、やはり数か月もすれば、皆の頭からは消え去ってしまっていた。
数年後の✕月△日。世間では、ある一人の男が一躍話題になっていた。
名前は『鯣』。どこにでもいる青年だ。どんなに有名になっても顔はバレていない。
話題になっていた理由は、ネットで探偵をする、通称『ネット探偵』なのだ。それも、あまりの頭の回転の早さで、単純な事件なら数分で解いてしまうというのだ。
市民からは、『ネット版コナン』や、『スルメ先生』、『真の黒幕』などと言われていた。
スルメはある日、頭が鈍らないように、ネットで未解決の事件を調べていた。
すると、少年が死亡した事件、通称『ヨウタ君事件』が取り上げられているサイトがあった。『××新聞社』の情報で大抵の事は分かったが、他のサイトを見続けると細かい情報についても知ることが出来た。
まず、ヨウタは母親は病気、父親は交通事故で死んでおり、父親の弟(叔父)である、「高橋 伏見」に育ててもらっていた。だが、事件と共に突然行方不明になってしまったという。
そして、事件現場についてだ。事件現場は『××倉庫』という、港近くの廃倉庫だ。人ひとり監禁するには丁度いいが、ヨウタの家からは県一つ離れた遠い土地だ。
また、蓮太郎とヨウタは、過去に一度たまたま取材を受けていて、新聞に小さく載っていた。
×県 伏見さん「私は、兄とその奥さんが死んでしまったことで、その息子のヨウタを引き取ったんです。時には叱ることもありますが、『ふし君』といつも仲良く呼んでくれています。」
至って違和感の無い取材だ。兄とその妻の死で悲しいはずなのにめげずに前を向く姿は尊敬の念も湧いた。
だが、問題は別に一つあった。
『××警察』による調査の中断だ。相当詳しく調べると、『××警察』が調査を中断していることがわかった。理由としては、容疑者に『××警察』トップの息子の名が上がってしまったかららしい。普通はありえない事だが、『××警察』は少し隠蔽なども多い警察であると有名だった。
とにかく、スルメが初めに目をつけたのは、やはり警察による画像であった。この情報を発信しているのは、『××警察』ではなく、全く関係のない別の警察署のものなので、正確さは良いだろう。
それにしても違和感がある。何故犯人はこの紙を処理しなかったのか?ただ、『水』と書いているだけでも、十分不都合な事になりうるはずだ。だがそれは恐らくシンプルな理由だろう。通報を受けた警察が追いかけている最中に、犯人はヨウタを殺したのだ。そのため、紙に気がつく前にその場を離れてしまった。だからこそ、「二発目」なのだろう。
『××新聞社』の記事によると、犯人は二発目でヨウタを殺した。時間があるなら一撃で脳天を打てばいいはずだ。
だが、それだけでは違和感は解けなかった。犯人が追われている最中なら、ヨウタは『水』なんて書くだろうか?
となると、ヨウタは別の文字を書いたことになる。一体何を書いたのだろうか。少し考えても、あまり思いつかなかった。やはり頭が鈍っている。スルメは知り合いに電話することにした。ちなみに、その知り合いは学生時代の友で、現在は遠い県の警察署で働いている。
『プルルルル……プルルル…ガチャッ』
スルメ:「もしもし、佐藤さん。私です。」
佐藤:『あぁ、駿河……あ、スルメって呼んだ方がいいか?』
「どちらでも。それはそうと、今事件を解いている最中なのですが、何かヒントをくれないでしょうか。」
『ヒントっつったってなぁ……まぁ教えてくれ。』
スルメは佐藤に事件のほとんどを教えた。ヨウタが別の字を書いたのかもしれない、ということも言った。電話越しで煙草の煙を吐く音が聞こえた。
『んまぁ……分からんが、そういうのってなんか角度を変えて見てみるといいんじゃねぇか?視野を広げるって言うか。』
視野を広げる。まぁ、確かにそれもそうだ。あまりずっと同じことを考えていると、頭が凝ってくる。少し柔軟に考えよう。
「ありがとうございます。……一つお願いがあるのですが…」
『?』
数時間後……
佐藤:「この県まで新幹線で来るなんてノリ軽すぎだろ。」
スルメ:「すいません。それで、あの『例の物』は?」
「全く……頼むの大変だったんだぞ?」
そう言うと、佐藤は右手を差し出してきた。そこには、丁寧に袋に包まれた、例の、『水』と書いてある実物の紙があった。
佐藤が左手に持っているビニール手袋をつけて、紙を出した。
紙の隅には乾いた血が付着していた。打たれて飛び散った血が付着したのだろう。
あまりにも荒々しい字だった。鉛筆の芯を折ろうとしているかのような力で書かれてあった。それは、紙の隅のぐしゃぐしゃというものだけ……では無かった。
「水もこんな字だったんですか?」
「相当な。発見時は何があったんだと、警察署じゃ不思議でしか無かったよ。」
水という字も、紙が破けるほど荒い字で書かれていたのだ。確かに何があったのか気になるが、やはり先程の考えに戻った。
「やはり書かれているのは……」
「水じゃないな。」
そして佐藤はポケットから、折りたたんだ資料を出てきた。資料には長文で様々な情報が載っていた。「鉛筆にはヨウタの指紋が付着していた。」
「それよりもここを見てくれ。」
そう言って佐藤が指さした文には、こう書かれていた。
『高橋ヨウタの遺体は、目隠し、猿ぐつわ、手や足を縄で縛られ、完全に拘束状態だった。』
一瞬思考が止まった。だが気がついた。拘束状態ならば、文字を書くなんてほぼ不可能なはず。それに、鉛筆と紙を発見するなんてどうやって……
「紙は誰が見つけたんですか?」
ヨウタの指紋が付着していたのは鉛筆にだけ。紙は誰が発見したのか。
「それがな、ここを見てくれ。」
『部屋中からは伏見の指紋が発見された。また、紙からもヨウタよりも伏見の指紋が発見された。』
となると……
「犯人は伏見だ。」
二、三話ぐらい続いちゃうかもです。ちょっと楽しくなってしまった。