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第十六話『昼食』

 水瀬くんだ。水瀬くんと同じクラスだなんて……。何度見てもどっちか分かんないなあ。今日こそお前話しかけてみろよ。いや、無理だって。今晩は水瀬に決まりだな……などなど。

 周りがヒソヒソと話している。どうせ自分の悪口か何かを言われているに違いない。昔から陰でコソコソ言われるのは慣れている。


「お前めっちゃ色々言われてんな」

「……」

「無視かよ!」


 返事をしたいがエンジュは周りには見えない。話しかけると独り言で喋っている危ない人に見られるので黙っておく。


「独り言みたいで寂しいのと、無視されてるみてえで辛いぜ!……っておい、来たぞ!あいつだ!」


 エンジュが指差す方を見れば、天導美羽が教室に入って来た。


「あいつの手首の内側を見てみろ」

「え?」


 言われて見ると、美羽の袖から黒い羽根のタトゥーが見えた。


「欠片を持っているやつには左手首に羽根のタトゥーがある。欠片を探すときには手首を見ろ」


 なるほどと思い頷く。っと同時に、あんなのがあっては誰かに言われるのでは?


「それと、あれは天使か天使と契約した人間しか見えないから本人や周りは気が付かない」

「ねえ、なんか用なわけ?人のことジロジロ見て」


 美羽は席にカバンを置くと、不機嫌そうに彾嘉を睨む。

 エンジュとの話に夢中で見過ぎてしまっていたようだ。


「え、その……」

「いけー!かましてやれー!」


 戸惑っていると、エンジュの無慈悲な野次が飛ぶ。


「ほれ!話しかけろ!欠片を回収するチャンスだぞ!」

「……ぅ」


 そんなことを言われても、ほぼ初対面の女子と話す勇気がない。


「あれ?……なんで?なんで見えないの?」

「え?なにがですか?」


 美羽は目を擦り、不思議そうに彾嘉の顔を見つめる。


「にゃはは!こいつ、俺と契約したからお前の心が見えないのを不思議がってるぜ」


 昨日まで見えていた物が見えなくなったので、美羽は混乱していたのか。


「あの、ジッと見ててすみません……二度と見ないようにするので許してください」

「っ……そこまで怒ってないからいいわ」


 美羽はそのまま不機嫌そうに席に着いた。


「おい!二度と見ない様にしたら欠片が回収できないだろ!適当なこと言うんじゃねえよ!」


 エンジュが机の上で怒っていると、ホームルームのチャイムが鳴る。


 教室に担任の岡崎京佳が入ってくる。

 そこからホームルームを済ませ1限……2限と授業を終えていくが。


「ヒマだ~。つまんね~」


 3限目の数学の授業中、エンジュは広げているノートの上で大の字になって寝そべる。


「……」


 ノートに写すのに邪魔なのでシャーペンの消しゴムの部分で押しながら横にずらしていく


「あ~~」


 このエンジュの姿に、どこか既視感があった。

 ああ、そうだ。猫の動画でこういうのあったなと彾嘉はふと思い出す。


「ヒマだ!学校でも探検してくる!」


 エンジュは起き上がると、どこかに飛んで行ってしまった。

 時間はあっという間に過ぎていき、エンジュが帰ってこないまま昼休みになる。


「メシだ、メシだ~!」


 エンジュは何事もないように戻ってくると彾嘉の机の上に着地した。

 彾嘉はエンジュの姿を確認すると弁当を持って移動する。


「おい、どこ行くんだ?もしかして便所でメシ食うのか?!友達がいないからって便所で食うなよ!嫌だからな!便所でメシ食うなんて俺ヤだからな!」

「っ……」


 抗議するエンジュを無視して向かった先は、誰も居ない体育館の裏にある階段だった。


「なるほど。人のいないとろに移動していたわけか、気が利くじゃねえか。ここなら俺と話しながらメシを食えるってわけだ」

「はい。それじゃあ食べましょうか」


 彾嘉は弁当の蓋におかずやご飯を乗せ、横にチョコンと座っているエンジュの前に置く。


「いっただきまーす!」

「いただきます」


 高校に入学してからずっと一人で食べていたが、誰かと食べるのも悪くないと思った。


「放課後は俺に付き合え」

「ふぇ?」


 唐揚げを口に入れると同時にエンジュが言う。


「学校を探検していたら良い場所を見つけた。放課後はそこに行くぞ」

「良い場所ってなんですか?」


 エンジュの言っている意味が分からず、ブロッコリーを飲み込むとエンジュに質問する。


「それは言ってからのお楽しみだ。まあ俺たちの作戦会議する秘密基地みたいなもんだな。そこで学校で見つけた欠片を持った少女の対策やら何やらするわけだ」


 言い終わるとエンジュは自分の頭と同じ大きさの唐揚げを豪快に齧り付く。


「そんな都合の良い場所この学校にあったかな……?」

「おい、お前の唐揚げもう一個よこせ」

「天使さんの分はあげたじゃないですか。あげませんからね」

「一個くらい良いだろ!なんてけつの穴の小さいやつだ!」

「そんなこと言う人は知りません!」


 最後の唐揚げを口に放り込むと、エンジュがそれを目で追う。


「あ~!なんてやつだ!天使である俺にそんなことするなんて!」

「仕舞うので蓋返してくださいね」

「唐揚げ……」


 弁当を片付けながらエンジュの言った秘密基地について考える。

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