第十三話『お風呂』
『おねえちゃ~ん!またわたしのくしだんご食べたでしょ~』
『食べたけど、ちゃんと名前を書いてないのが悪いのよ』
『こんなに書けるわけないでしょ~』
『私は書けるわよ。この虫眼鏡で見てみなさい、ほら』
『ほんとだ!名前書いてある!おねえちゃんすご~い!』
タブレットには擬人化したお饅頭の幼い姉妹が仲良く会話している。
もちろん日本語はアリアは分からないので、下に英語の字幕が出ている。
「串に名前を書くなんて凄いのだ。よほど先が細いペンじゃないと書けないだろうな~」
おまんじゅう姉妹シーズ十五の四話【泣くな妹よ、今は悲しみを乗り越える時だ】をアリアが感心しながら観ている。
すると、きゅ~っと可愛らしい音がアリアのお腹から鳴った。
「これは違うのだ!きっと外で猫が鳴いているのだ!」
アリアは耳を赤くしてお腹を押さえて、恥ずかしそうに言い訳をする。
時刻を見れば18時前だ。水瀬家の晩御飯はキッチリ18時に始まる。
「もうそろそろご飯だろうから下に降りようか」
「う、うん!あまりお腹は空いてないけど行くのだ!」
「そうだね」
部活で居ない妹の凛花には気が引けるが、晩御飯は豪勢にすき焼きだった。
「美味しいのだ~」
「アリアちゃん、美味しい?」
アリアと母の噛み合わない会話を横目に、肉を卵を溶いた取り皿に入れる。
「俺の歓迎会でもあるんだ!いっぱい食わせろ!」
彾嘉が取り皿に肉を入れると、エンジュが手で豪快に食べる。
エンジュが食べている間に、彾嘉が肉を取って食べるを繰り返しているとあっという間にすき焼きを完食した。
「ごちそうさまでした」
晩御飯を食べ終えるとお風呂に入る準備をする。
アリアも一緒に入ろうとしてきたが、母が止めてくれた。
「風呂か?ハンカチで良いから貸してくれよ、体拭くのに使うからよ」
「え?一緒に入るつもりですか?……別々に入りませんか?」
「なんだ?恥ずかしいのか?そんなもん気にすんなよ。そもそも俺とお前では生物として違うんだ。例えるなら人と猫くらい違うんだ
『猫……ですか?でもやっぱり別れて入りましょうよ」
言いたいことは何となく理解はできるが、やはり見た目が少女なエンジュと一緒に入るのは抵抗がある。
「憑依して入ろっかなー」
「うっ……その脅しやめてもらっていいですか!」
「憑依されたくないなら、諦めるんだな」
「はあ……わかりました」
洗面所に入り服を脱いでいく……がパンツ一枚になったところで手が止まる。
「本当に別々に入らなくて良いんですか?」
「良いつってんだろ!しつけえな!……にしてもお前って凄い肌ツルツルだな、男性ホルモンどうなってんだ?」
「一応気にしてるんですけど……!」
彾嘉は体質でヒゲなどのムダ毛が一切生えない。それもあり女の子と間違われる事が多い。
「ほら、さっさと脱げよ。どうせ今後は毎回一緒に入るんだからよ」
何も気にすることもなくエンジュは男らしく堂々とシスター服を脱いでいく。
「ちょっと……!」
エンジュの見えてはいけないところが見えてしまいそうになり目を背ける。
「さっきも言ったが、お前と俺は生物として全然違う生き物なんだぞ」
「そうですね……猫か何かと一緒に入ると思えば」
「誰が猫だよ!そもそもな、お前の股間に付いてる子象なんて見てもなんとも思わねぇよ!」
「子象って……」
エンジュが何か言ってくるが無視して、彾嘉は意を決してパンツを脱ぐ。
「なっ……!お、お前……顔に似合わずスゲェじゃねぇか……」
全裸のエンジュは彾嘉の下半身を畏怖と尊敬の眼差しのような瞳で見つめる。
「敬語で話した方が良いですか?」
「いいですって!」
こうして初めてのエンジュとのお風呂を済ませる。
何度かエンジュの裸を見てしまい、目を逸らしたのは言うまでもない。




