全て寝言が悪いんだぁぁぁー
妻と娘だけで無く妹にも最近寝言が多いと言われる。
寝言だけで無く、寝言と共に腕や足を振り回す事もあるのだと言う。
ストレスが溜まっているのかも知れないな。
「ヨーロッパから睡眠専門の医師を呼び寄せましょうか?」と、妹に聞かれたから大丈夫だと返事を返す、
「娘と遊びタップリと睡眠を取ればストレスも消え寝言も無くなるだろう。
だから医者を呼ぶ必要は無いよ」
でも今思えば呼んでもらって診察してもらえば良かった。
重要な会議の途中、疲れからかうたた寝してしまいそこで寝言を言ったらしい。
らしいって言うのは覚えていないからだ。
会議場で演説していた筈なのに、気がついたら首都の地下数百メートルのところに造られた核シェルターの執務室にいた。
デスクに突っ伏していた顔を上げて回りを見渡す。
顔を上げた僕を見て、デスクの正面で直立不動の姿勢を保っていた腹心の部下が声を掛けて来た。
「最高指導者様の御指示通りに、南の奴等や東の島国それに海の向こうの大国に核ミサイルを無警告で発射しました。
今頃南の奴等と東の島国の2つは地上から消滅している筈です。
ただ、海の向こうの大国から報復の核ミサイルが発射されたので、現在、最高指導者様に絶対的忠誠を誓う者たちの避難を急がせています」
腹心の部下はそこまで言った後、デスクの回りのいる他の部下たちと共に叫ぶ。
「「「「「万歳! 万歳! 祖国の勝利を祝おう! 万歳! 万歳! 万歳!」」」」」
な、なんて事だ……。
ぼ、僕は、そんなにストレスを抱えていたのか……。
『だ、だから、核戦争の責任は僕には無い! 全て寝言が悪いんだぁぁぁー』
ある国の最高指導者はそう心の中で叫ぶのであった。