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7.鹿やイノシシやダチョウよりも希少なご近所さん

タイトル通り鹿やイノシシやダチョウよりも希少なご近所さんが降臨。

 

~翌日~


 庭の方から小鳥の鳴き声がする。多分、昨日の騒動の行方でも確認をしに来たのだろう。

……迷惑だったよね。ごめんね。

「……」

大きく伸びをして、今すぐに閉じたがっている瞼を強引に開けてベットから出る。時計を確認するともうすぐ縦に一直線になろうとしていた。

 隣の部屋で寝ているだろう神奈を起こさないようにそっと部屋を出て縁側に出る。


 しかし、その気遣いは徒労に終わる。

「試煉、おっはよー!」

朝からエネルギーマックスな焔の大きな声が……庭の木の上から聞こえた。

「何やってんの?」

「小鳥の巣みたいなのがあったから観察してる」

小鳥が騒いでた犯人は貴様か。

「おはよう。朝食は出来てるから温めて食べな」

反対側から師匠が歩いてくる。私が返事しようとするのと同時に

「トウ!」

焔が木の上から飛び降りてそのまま何事もなかったかのように走って来る。


おっかしいなぁ。あの子今、10メートルくらいの高さからじゃんぷして飛び降りなかったか?


……気のせいだよ気のせい。気にしないで朝食にしよう。なんか後ろで「空中で一回転してから着地したほうがかっこいいかな?」とか言ってるけど気にしない気にしない。まだ寝ぼけてるだけ。


~~~~~~~~~~


「今日は町の方に行くのか?」

朝食を終えて食器を片付けていると後ろから師匠に尋ねられた。

「そのつもりですが?」

「おん?それじゃあ、車に乗っていくか?」

「……若も行くのか」

人差し指でカギを回しながらキッチン入ってきたイケオジ(アラサー)は私にそのカギを見せつけ白い歯をにかっと見せる。

「たまには社長が足を運ばねえとな、店長が怒るんだよ『働け』ってよぉ」

そう言って頭を掻きながら笑う若社長。いやいや、店長に怒られる社長って……

「……まっ、そんなわけで乗ってくなら三分間待ってやる」

「皿は俺が洗っといてやる。行ってこい」


~~~~~~~~~~


 ただいま自然に飲み込まれかけている国道(?)を若社長が運転している軽トラの荷台に乗って移動中。うちの周りは放置された農地や小屋ばかりの秘境みたいな場所のため少し身を乗り出して心地よい風を浴びていると……

「おん? ありゃ、人か?」

若社長が何かに気づいたようで私もそのまま目を凝らすと遠くの方に人影が見えた。こんな辺境に普通の人がいるはずない。……ってことはおそらく

「朱乱!」

「……試煉さん」


ここらじゃ鹿やイノシシよりも余裕で希少な近隣住民は後ろからゆっくり近づいてくる私に気づくと少し驚いた表情をする。

「どこか行くの?」

「町まで仕事」

背負っているリュックをポンポンと叩く。

「私らもちょうど町の方に行くんだけど……乗ってく?」


私が提案するよ同時に若社長はドアウィンドを下げながら、あいかわらずの渋めな声で

「ここであったのも何かの縁だ。減るもんなんてないし乗ってきな」

と笑いながら言った。


若社長の言葉が決定打になったのか朱乱はしばらく悩んだ後「ありがとうございます」とお辞儀して、そのまま軽く跳躍するようにしてトラックの荷台に乗り込んだ。


「仕事は何しに行くの?」

「納品。時間が余れば何か買い物でもしようかなってところかな」

そこで会話が止まってしまう。私は口下手じゃない自信はある。けれども、同年代の異性とこうやって話すことにどうも少し抵抗を感じていた。……おそらく、こんな世界になったせいでそういった関りがめっきり無くなってしまったのと

(……)

朱乱の方を一瞥すると彼は携帯している刀の刀身をまじまじと見ていた。

 朱乱は結構かっこいいよりの人間であった。外面も内面も。学校に何人かはいるなんて言えばいいのだろう……誰にも不快感を与えない男子って感じである。

(どうでもいいかもしれないがこの世界に銃刀法なんて形骸化している。崩壊寸前の世界に正義も悪もほとんどあってないようなものだから)


「……試煉さんももちろん町に?」

「特に用事があるわけじゃ無いんだけど……まあ、のんびりするためにね」

きっと今頃家では……まあ、ろくなことが起きてないだろう。

私がため息交じりに話すと、朱乱は何かを思いだしたようであった。

「……そういえば、昨日の晩にひと悶着あったみたいだけど大丈夫なのか?」


……


アーダイジョウブデス。エエハイ。イヤホント、シンパイカケテスミマセン。


 一応、私には説明する義務があるような気がしたからありのままのことを話すと「何言ってんだこいつ」と言いたそうな顔をしながら苦笑された。その世界に何気に結構いる自分も理解できないことを全く知らない人が当然理解できるはずもなく

「君の家は修羅の国かなにかか?」

と至極まっとうな感想だけ言われた。


どうせなら夢の国がよかった。



 

 そんなことを時折しゃべりながら使用される機会がすっかり減ったからか不安定な道をトラックは不規則に揺れながら順調に町へと進んでいった。




……ただしあいつが来るまでは




……ギョッギョッギョッギョッ


 残りの距離が半分に差し掛かったころ、突如、ドンドンと響く足音と共に何かが後方から近づいてきた。

「うげぇ……面倒なのが来た」

「ギョギョ!」

私達に接近してきているもの――それは……


ダギョウ……体長は四メートル近くある三つ目の巨大なダチョウのモンスター


「あのモンスター俺たちについてきてませんか!?」

普通は遭遇することのないモンスターに朱乱は僅かに動揺していた。柄を握りダギョウに目線を向けていた。

一方の私は特に驚かなかった。めでたいのか残念なのか慣れてしまったのである。

「うん、あのモンスター本家のダチョウみたいに脳が小さいからなのか重度のあほで多分車を仲間と勘違いしてる」

「ええっ……」

「ギョギョギョー!」

私達との距離が30メートル程度になった途端、ダギョウはその細い首を激しく横に振る。

「ほら、あの動きは代表的な求愛行動」

「ええっ…………」

大変残念なところを見せつけられ、さっきまでの緊迫感はどこに行ってしまったのやら、何とも言えない微妙な顔になっていた。


「……まあ、それじゃあ無視でいいんですか?」

「そうだしそうしたいけど。……豚に真珠、ダギョウに恋愛。あいつはアホだから一生ついてくる。さすがにあいつを連れて街に入れないからさ」

この大きさになるとさすがに「ペットです」なんて言えないからね……


「それなら討伐しますか?僕も手伝いますよ」

「それだけはない。あいつを殺したら強烈な異臭を放って仲間を呼んでくるんだよ……あの時はやばかったなぁ……」

多分50体くらいその後に襲ってきたとおもう。それはまだいいけど(よくないけど)、その後2~3日匂いが落ちなかった。最悪。


「なら、諦めるまで回り道しますか?」

「残念だが坊や。先にこっちの電池が切れちまう。あれには驚かされたぜ」

こいつもこいつでスキルポイントを身体に全振りした筋肉信者(マッスルイズゴット)、その体力は一日中走り続けられるんじゃないかと思わされた。



(朱乱目線)

「それじゃあどうするんですか?」

他の方法はないと思うのですが……

「気合で撒く。……おっと、そういや坊やは初めてか……」

若さんはそれだけ言うと、手慣れた様子で運転席を前に移動させ、ふちが金色のグラサンをかけてつけていた帽子を外した。きれいに染まっている茶色の毛が風になびく。

 そして最後に常備しているのだろう煙草……かと思ったらシガレットを(くわ)えた。

 するとびっくり、さっきまでの愛想のよさそうな兄ちゃんから、ワイルドな兄ちゃんに早変わり!

「うーん……なんだか微妙に嫌な予感がするんですが、大丈夫ですよね?」



 朱乱は私にやや心配そうな目線を向けたが私はウインクだけして黙秘を貫き通すことにした。

何も言わなければ嘘もホントも関係ない!

「乗り掛かった舟だ。もう引き返せないぜ!」

若社長が一人高笑いするのに対して朱乱は

「のんびり歩いていけばよかった……」

と文句を呟いたが、それだけで、思ってた以上にすんなりと受け入れた。

「おじさんの運転技術舐めんなよ!しっかりつかまっていやがれ!」

朱乱の様子など全く気にしてない様子のバックミラーに映る若社長は不敵な笑みを浮かべていた。


神奈「若い子はエネルギーが有り余ってていいわね」

師匠「貴様は何歳だ」

神奈「女子にその質問はタブーですよ!」


次回、ファンタジーVS現代文明


(補足)もちろんこの世界に動くトラックなんてほとんどございません。


追記

半年近く失踪してしまい申し訳ございません。

無事一山超すことができたのでこれほどの期間失踪することはもうないと思いますが、相変わらずリアルの都合で不安定な更新が続くと思います。どうか気長に……そして忘れずに待ってもらえるとありがたいです。

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