6.人の家の庭で何やっとんじゃゴラァ
『ミンチじゃなくてメンチを切る』の巻
そして圧倒的な出オチ回
ドゴォォーン!!!
私たちが部屋を出て『ドゴォォォーン!』外に出ると、何か『いいね、いいねぇ!』が爆発する『バスタァーボル……トォ!!』音が聞こえた。
……大丈夫、これくらいは日常だから。
その後に『そんな魔法で龍が死ぬわけないでしょうが!』落雷が発生したり地響き『ファイナル……ブラスター!』が起こってるけど、今日は『君の本気を見せてよ!』自然が本気を出してるだけ。そんな日もあるよ。きっと……『アーク……スレイ!』
うっさいなぁ!!
「その程度か!」
「何を言っている?俺はまだ第一形態だ」
庭に出るとそこにいたのはやはり決闘中の少年と少女であった。そして周りには小さなクレーターの数々。
……人の家の庭で何やっとんじゃゴラァ。
人の家の庭で許可なく模擬戦(死人が出る可能性大)をやっている馬鹿二人は大蛇と悪役もどきであり、私や神奈よりはるかに強い人たちで前に紹介した龍の子と狂戦士です。
正直関わりたくないけどとりあえず命がもったいないのでしぶしぶ(模擬)戦を止めに行こうとする。しかし、
「崩壊粒子!」
悪役もどきの放った光弾を大蛇は避ける。
その直線状には私達。
「「「「「あっ」」」」」
避けれん。死ぬ。走馬灯が……てかそもそもなんで家がある方をバックに戦ってるん?
「あの馬鹿どもめ!」
私に当たる直前にどこからとなく現れた師匠は愛刀の木刀を横に振ると、光弾を上空へ向かって打ち上げる。
光弾は夜の闇を一瞬白色に染めた後、大爆発を起こす。
幸いここはど田舎なので近所迷惑にはならない……はず。
……さすがにこれは日常茶飯事では済ませられない。こんなの街中でやっちゃダメ、絶対。
「た~まや~」
打ち上げられた花火に焔は目を輝かせる。そんな呑気に楽しんじゃダメ。それで私ら死にかけたんだよ? 分かってる?
「なんだ?水無月もいたのか」
危険人物は服についた砂埃を払いながら淡々と呟いた。
……居たっていうかここ彼の家だからね? 何勝手に住居侵入しといて挙句の果てに器物損害、殺人未遂してんの?
てか、まずは「ごめんなさい」でしょうが。なに、何事もなかったかのような顔をしてるんですか?
「元気そうで何よりです!」
師匠の表情は相変わらず分からないけど、声が明らかにやばい。木刀を持つ手が小刻みに震えている。うん、絶対に怒ってる。そして表情が見えないから余計怖い。
「三人ともすまんかった。後ろに水無月がいるのは分かっていたが三人もいるとは思わなかった」
まだ謝ってくれる(言葉が若干引っかかるけど)まともな少女が大蛇である。そしてもう一人は
「グレーテルさん!」(焔)
「ちがう!」
「クレイドルさんですよ」(神奈)
「違う!」
「……クレーテルですよ」(私)
「TIGAU!何度言わせれば分かる!俺はクレーテルだ!」
「あってるでしょうが……」
毎回間違うから名前が覚えられないんだよ。分かる?
ボブみたいな髪型で一人ぶつぶつ何かを呟いているやばそうな人がクレーテルもとい悪役もどきである(クレーテル公認らしい。なんで?)
「……で、何しに来たんですか?」
師匠が心底迷惑そうに質問する。ここまで感情を露にする師匠は非常に珍しい。
少女は少しの間天を仰いだ後、ただただ
「暇」
だそうです。
暇になったら人の家の庭で決闘を始めるっていったいどんな人生歩んできたらそうなるんですか?
……いや、家にはデートでダンジョン行こうとする人間もいたな。
なら、問題……しかないな。
よくよく考えてみればなんで私はこんな人らと関わってんだろ?
「……ならBBQするから手伝ってくれ」
師匠は彼らの周り地面がチーズのように穴だらけになっている状況に気づいたのかため息。
師匠、お疲れ様です。
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少々ハプニングが起きたが無事に夕食開始。
そして今更だが、あれに巻き込まれても案外動じない私達ももう末期だなと思った。あの人たちと大して変わらんのか……
「おいしい!」
ひとり悲しむ私をよそに無邪気な少年は目を輝かせながら焼けた肉をバクバク食べていく。こらこら野菜もちゃんと食べなさい。
そんな姉ばかな感想は置いておいて、私も焼けたコカトリスの肉を食べる。たしか部位はももだが、鶏のそれよりもあっさりしている。あの階層にいるモンスターはみんな揃って筋肉信者だから赤身が多いのは仕方がないのだろう。
「どんどん取れよ」
「うむ。うまい」
「悪くはない」
当然のようにいるただ飯喰らい二人。別にいいけどさ。どう考えても私らだけで消費しきれる量じゃなかったからさ。
BBQも終盤に差し掛かったころ……
「試煉~!」
神奈が間違いなくなにか悪いことを考えてる笑みを浮かべながら走って来る。
危機察知!
私はくるりと背を向けて平穏をぶち壊してきそうな人ランキング第二位から逃亡する。
「ちょ、なんで逃げんのよ!」
神奈は追いつくのをあきらめたのか立ち止まる。私もそれに合わせて逃げるのをやめる。
「試煉ちゃんにお礼したかったのに……」
神奈が悲しそうに背を向けて皆がいるほうにとぼとぼ戻ろうとする。
「……本当?」
「ホントホント!」
「……信じる……」
信じた私がばかだった。
「はい、あーん」
神奈が私を餌付けようとする。
「お礼って……これ?」
神奈は私が最も恐れていた――笑顔で「もちろん」と答える。
私が微妙な反応をすると神奈はまたも頬を膨らます。
「過去に彼氏いたんだから一回くらいやってるでしょ?その男とはやったのに私とはやってくれないの?」
……なにその理論。
私がとりあえず師匠に助けを求めようと視線を向けるが師匠はこちらを見ながら固まって動かない。アカンあれは完全に困ってる師匠や。期待できない。
「ほら、いつか私が彼氏できたときの練習だと思ってよ!」
神奈がお箸でもっている肉を私に押し付ける。
……もういいや。分かった分かった。
なんとかな~れ!
私は神奈が差し出す肉を食べる。多分オークのロースあたりだと思う。
「おいしい?」
「……うん、まあ」
「コメント薄!試煉ちゃん本当にやったことあるの?」
「怒るよ?」
神奈の頭をがしっと掴んで笑って見せた。
「すいませんなんでもないです」
私達がみんなの場所に戻ると家の方から肉の匂いに釣られた者が一匹
「ガウ!」
「ウルウル!?」
全身真っ白で瑠璃色の目のほぼ狼のウルウルが尻尾を振って催促している姿は闇夜でもよく見える。
「そっか。ウルウルも食べたいよね」
私はコカトリスのもも肉が入った袋を投げる。
ウルウルは空中でそれを上手にキャッチすると袋に顔を突っ込んで生肉を食べる。
そしてその間にこっそりモフモフを堪能する。
ああ~癒される~。
そんなこんなでまあまあカオスなBBQは終わった。疲れた……
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その日の夜。
月が真上に昇ると同時にはるか遠くでフクロウが鳴いた。
「……全く、夜中に少女一人を歩かせるってどんな神経してるのじゃ」
川のそばの道から大蛇は呆れたようにため息をつきながら近づく。
「人の庭を破壊するような人に言われる筋合いはないと思いますが……」
水無月は振り返らずに答える。
そこはある小川のほとりであった。辺境の小さな川のそばにもちろん彼ら以外の人などいるはずもない。
「あれは私はやってない」
「あなたも楽しんでいたじゃないですか。同罪ですよ」
「……それで、要件は?」
大蛇は露骨に話を逸らす。
「……少し気になることがあって、あの方にも伝えておいてほしい」
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「……へえ~、確かにそれは調べてみる価値はありそうじゃな」
少女の口角が微かに上がる。
「まあ、別の可能性もあるし、なんなら気のせいかもしれないから無理にリソースは割かなくていいと伝えといてくれ」
「向こうもまだ調査中だから期待しないことじゃ。……伝えたいのはそれだけか?」
「ああ」
「OK、それじゃあ私は帰る」
「オイ待て、責任もってあの不良債権を持って帰れ」
「だが断る!」
水無月が振り返ると同時に大蛇はバッサリ断ると魔法のような何かを詠唱(?)すると一瞬にして闇夜に消えていった。
「……段ボールに入れて道端に置いたら誰か拾ってくれるか? いや、ないな。まだ目の届く範囲内にいたほうがましか」
とんだ疫病神もどきを押し付けやがってと一人またもため息をついた。
試煉「バーベキューってもっと平和なはず……」
神奈「何言ってんの? バーベキューは(肉の)戦場だよ?」
試煉「本当にリアルファイトする人間はいないのよ」
次回、鹿より希少なご近所さん