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1. 誰が何と言おうと普通の生活

新連載しました!


一話は少し短めです

ここは異世界なんかじゃない。


空を見上げれば得体のしれない生物が飛んでいるのを見かけるが、ここは地球。


道端で魔法使いが子供たちにオリジナルの魔法を披露しているが、ここは日本。


私の隣で狐のお面をつけ、腰に刀を携えている者がいるが、いつものことである。


私の頭には二本の角があるが、それを蔑視(べっし)する人間はもういない。


この世界もこれが普通になった。この程度のことは日常となった。


世界が変われば価値観は変わる。


剣と魔法とドラゴンのいない。


そんな過去のほうが私達にとっては異世界に思えるようになった。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



 この世界はファンタジーの世界になった。理由は分からない。ある日を境に突然、世界中にダンジョンやらモンスターやら魔法やらが現れた。


 当時のことは今でも鮮明に思い出せる。突如現れた得体のしれない生物を前に世界は大混乱していた。誰が言い出したのかは分からないが『神の裁き』やら、『世界滅亡の時』なんて言って騒いでいた。


 ……なんで他人事みたいに話すのか? だってそれどころじゃなかったのだから。

 世界が滅亡するかもしれない? その前に自分が死んでしまうならどうでもいいじゃない。


 考えてみてよ。極普通の少女の頭になんの前触れもなく角が生えたんだぜぇ?


おめでとー!これで物理的に不思議ちゃん名乗れる……


 なーんて訳もなく。鏡でその角を見たらまあ禍々しいこと。赤黒く光ったその二本の角は10センチくらいの長さである。その先は鋭く凶器になり得そうであった。これって、銃砲刀剣類所持取締法とかに引っかからない?


 とりあえずラグビーとかはできないな。これでタックルしたら殺しちゃう。……まあ、そもそもラグビーなんかとは無縁なか弱い乙女()()()けど。


 とりあえずその日は学校休んだ。……というか後に知ったんだけど普通に外出禁止令が出てたらしくそもそも休校だったそうだ。そりゃそうか。だって、世界滅亡の危機だったもんね。


 そんな世界の危機を前に私は何をしてたかって? 家族と最後の晩餐をしてた?


 いいえ。ふて寝してました。『これは夢だ!間違いだ!』と何度も反芻(はんすう)しました。


 しかし、現実はもっと残酷です。昼頃になってもう一回鏡を見ると髪の色が抜けて半透明の白色になってました!


 あの時はただただ膝から崩れ落ちた。一人で泣いた。未知の病気にでもなったと思った。自分の身にそんなことが起きてしまったらきっとこれが正しい反応だと思う。



 そして今に至るわけです。


えっ?『世界はどうなったか?』


A.もうじきわかるよ


 ただ、私が現実を受け止めれていない間に社会は意外と現実を受け止め……開き直ってた。


……抗えぬ暴には人はほとんど無力だった。


「なに一人暗い顔しているんだ?」

突如、声を掛けられ我に返る。隣を歩く師匠(水無月)は目線は前に向けたまま不思議そうに尋ねる。

「……悩み事でもあったか?」

「顔に出てました?」

「……ちょっと声かけるのを躊躇してしまうくらいには」

やばっ、恥ずかしい……

思わず両手で顔を隠してしまう。その様子を後ろから見ていた神奈はクスリと笑う。

「かわいいよ。恥ずかしがってる試煉(しれん)ちゃんも」

神奈! 普段はそんなこと言わねえくせにここぞとばかりに弄るんじゃねえ!


「試煉、神奈。ついたぞ」

顔を上げるとそこにあるのは……公園?

「ここが今日の現場ですか?」

「そうらしい」

師匠は依頼書らしきものを指でなぞりながら呟く。

「思ってた以上に……」

「ああ、小さいな」

場所は間違っていなかったのだろう、依頼書を再び袖にしまうと師匠は改めてあたりを注意深く見渡す。

 私も同じようにして辺りを見渡す。街の中心部にくりぬかれたように公園はあり、さらにその中心部には半径20メートルくらいの池。


「……あの池の中ですかね」

「間違いないね。あいつは昼間はこういった汚い池の中に隠れる」

神奈は池を凝視しながら『間違いない』と言った具合に一人頷く。

 街の中心部にあるこの池はお世辞にもきれいとは言えない。底は見えず濁っている。もう何年もまともに手入れされていないのが一目でわかる。


この中に間違いなく()()()はいる。


Q.私達が何をしてるか? 


 私は師匠に判断を仰ぐべく、振り向こうとしたその時、

「……あっ、目が合っちゃったかも」

「武器を構えろ!」

師匠の号令に合わせて三人は瞬時に戦闘態勢をとる。それと同時に、私達を敵と認識したのかあいつは池の中からゆっくりと顔を出した。


A.モンスターを狩りに来てます


 現れたのは巨大な蛙――フォースロッグ。その体長は大きいもので四メートルを超える。まだ顔しか出してないがそこから推測するに

「結構大型ね」

「来るぞ!」

フォースロッグは頬を僅かに膨らますと液体を私たちを目掛けて飛ばす。


胃液だ


私達はそれを避けると着弾したところから何かが溶ける音がした。


 フォースロッグの攻撃は主に二つ。酸攻撃と舌攻撃である。

 特に厄介なのがこの酸攻撃でまともに当たればほぼ即死。鉄装備も普通に溶かしてくる。おまけに臭い。ほんとにうざい。

 逆に舌攻撃はそれほど脅威じゃない。捕まえようとするならむしろ舌を切ってしまえばいい。

 相手もそれを分かっているのか舌攻撃は滅多に使わない。それこそ胃液で弱らせた相手を食う時くらいである。


 フォースロッグは休む暇なく胃液を飛ばしてくる。しかし、弾速はそれほど早くないためよほどのことがなければこの距離なら余裕をもって避けれる。特別個体……というわけでもなさそうだ。


 さて、じゃあいつものようにやりますか。

 私は師匠の方を見るとすでに彼は動き出しており間もなく池を挟んで背後に回ろうとしていた。カエルは突然動き始めた師匠の方を警戒したのか私たちに背を向ける。それが狙いとも知らないで。

「こちら神奈。試煉、準備OK?」

「こちら試煉。ああ、いつでもOKだ」

簡易メタル〇アごっこを終えて改めて討伐対象を確認する。


フォースロッグ。貴様はそこが安全圏だと思っているのだろうが……


すぐにそこから引きずり出してやる。

次回予告

吊り橋効果って知ってる?

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始めまして!yu-kiと言います。 本作品の1話を読ませていただきました。 素人ながら、感想を書かせていただきます。 後半に、読んでいて感じた文章の違和感と、それに対する個人的な所感を記載していますの…
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