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到着

「ああぁぁぁ……きもぢわるい…」


 白沢さんに連れられて車に乗ったまでは良かった。


 そこから何時間経っただろうか、未だ俺たちは山の中を走り続けている。そろそろ車酔いが限界突破しそうだ……。


「いつになったら着くんですかあああ」


 窓を開けて叫んでみると大自然に絶叫が虚しく響きわたった。


「ははは、もう着きますよ」


 この山道を休みなしで運転し続けているというのに涼しい顔で笑っている。白沢さんは実は超人なのかもしれない。


「見えてきましたよ、あの建物です」


 鬱蒼と茂った木々の隙間からチラッと見えた小さな建物は、木の板を雑に貼り合わせた小屋のような見た目をしていた。どうみてもダンジョン対策部隊が訓練できるような建物ではない。


「……やっぱり詐欺だったんですね?! 怪しいと思ったんですよ、うぷっ」


「まぁ落ち着いて中を見てみてください。……お水もどうぞ」


 クーラーボックスに入れていたのだろうか、キンキンに冷えたペットボトルを顔に当てると少しだけ気分がスッキリした。しばらく車には乗りたくない。


「ふぅ、入ってみるか」


――あれ、思ったよりも新しい?


 ボロボロの小屋とは思えない程に扉はしっかりした造りをしており、力を入れて押すと重い扉が鈍い音を立てて開いていく。


 そして扉の先……小屋の中央の床には重厚感のある鉄の扉が存在していた。


「なんだこれ――」


 ゆっくりと床の扉を持ち上げると、地下に続く階段が現れた。


「まさか、こんな場所に地下施設があるなんて誰も思わないでしょう?」


 後方から得意げな声が聞こえてくる。顔を見なくてもドヤ顔しているのが分かる。これが言いたくてわざと事前に教えなかっただろ……。


「さぁ、中に入りましょう」


 白沢さんに続いてしばらく階段を降りて行くと、地下とは思えないような近未来的な空間が広がっていた。


 白を基調としたホールは研究施設の様な雰囲気で、廊下へ繋がるドアが規則的に配置されている。更に中央にある大きなモニターにはフロアマップが映し出されているのが見える。


「こんなに場所が地下にあったなんて、一体どうやって」


「ふふふ……詳しくは企業秘密ですが、ダンジョンで見つかったドロップアイテムの可能性に投資する人が次から次へと集まりましてね……」


 笑顔が怖すぎる、どれだけ集まったんだよ……。


「部屋数もすごいな、自分の部屋まで辿り着ける気がしない」


 トレーニングルーム、食堂、救護室、研究室、そして帰還者達の部屋……フロアマップを見ているだけで頭がクラクラしてくる。


「すぐ慣れますよ。さぁ、まずトレーニングルームにご案内します。他の帰還者達も既に集まっているはずです」


 ホールを抜けて中央の長い廊下を進む。一歩進む毎に、新しい生活への不安と期待が押し寄せてくる。


――誰よりも強くなりたい

 

 少し前まで、平和にコスプレでもしながら暮らすのが一番だと思ってたのにな……。


 三ヶ月前のダンジョンでの出来事を思い返していると、すぐにトレーニングルームに到着した。


 ついにダンジョン対策部隊での新しい生活が始まる――

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