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1.冒険者の朝と依頼の受注

処女作になりますm(_ _)m

誤字脱字やアドバイス等ございましたらお願いします。



それではエルトの冒険をお楽しみください。

 早朝、日の出前の薄暗い明かりが西の空に見える頃に目覚めた。冒険者の朝は早いのだ。俺だけかもしれないが、まあ皆そんなものだろう。


 重い目蓋に耐えながら体を起こし、ベッドの横に吊るされた蝋燭の灯りを眺める。一晩中小さな火を灯し続けた蝋燭の背は低くなっているが健気に絶えず燃えていた。



「くぁぁ……。起きるかぁ。」



 あくびを噛み締めて床へ降りる。寝起きの気だるさをそのままに部屋を出て階段を踏み外さぬよう慎重に下りてゆく。


 一階の厨房では既に釜戸に火が起こされ、この宿の主人が朝の支度を始めていた。



「おはよう主人。裏の井戸を使わせてもらうよ。」


「おう、おはよう。お前さんなんて顔してんだ。使っていいから早く顔を洗ってきな。」



 そんなに俺の寝起きの顔は酷いのだろうか。ぼんやりとした頭で宿の主人に挨拶をし、建物の裏へと出る。そこには水を汲む主人の奥さんがいた。


 奥さんにも軽く挨拶をして井戸を借りる。ひどい顔だね、朝は苦手かい?と、奥さんは少し笑って汲んだ水を抱えて宿へと戻っていった。やはり俺の寝起きの顔は酷いのかもしれない、ちょっとへこむ。



「ふぅ、さっぱりした。今日も清々しい朝を迎えたということは、冒険者日和だな。」



 くぁ~っと、顔を洗って空へと伸びをする。


 さっきまで薄暗かった空はもう澄んだ青色をしていた。頬を撫でる涼しい風が心地よくちょっと嬉しくなる。早起きは三文の徳と言うが、これがそのうちの1つかもしれない。


 俺は軽く身体を動かしほぐしていく。この宿のベッドは柔かめだったから気持ち身体が軽い気がする。ギルドの受付でオススメされた宿だったので素直に泊まってみてよかった。まぁ、その分ちょっと値段はしたけど…。



「主人、朝食を1つ頼むよ。」


「戻ってきたか。もうすぐスープも出来上がるから座って待ってな。」



 宿へ戻り注文を入れるとカウンターの端の席に座った。パンの焼ける匂いが鼻腔をくすぐる。この匂いを嫌いな人はいないだろう。出来立ての朝食を食えるのが俺の早起きの理由と言っても過言ではない。


 これは黄麦を使ったパンの匂いだなあ。香ばしくてポカポカした気分になっちゃうね。


 コトコトと主人がスープを煮詰める音に耳を傾けながら、今日の予定をぼんやりと考える。朝食を食べたらとりあえずギルドに行こうか、というよりギルドに行かなければ仕事ももらえないので結局やることは一緒である。


 コトン、と目の前に朝食が置かれた。



「ほらよ、できたぞ。温かい内に食べな。」


「ありがとう。早速いただくとする。」



 熱々のパンの千切ってスープに浸して食べる。うん、おいしい。スープには野菜の、主にオニオネの旨味がよく出ていて美味しい。


 どうだ、うまいか?と聞かれてうまいと返事すると、主人は満足そうに笑う。



「今日はギルドに行くのか?もしそうならパンを持っていくといい。安くしとくぞ。」


「今日は、と言うか今日も、だけどね。ありがたく貰っとくよ。ご馳走さん。」



 お昼用のパンを良い値で買える話にもちろん頷く。


 美味しい朝食をあっという間に食べあげて銅貨5枚を主人に渡す。朝食は銅貨3枚だったが美味しかったしパンも貰えるので多めに出しといた。


 主人は少し目を見開いてから渡された銅貨を見てこっちに視線をもどす。



「足りるか?」


「十分だよ。出る時は声かけてくれ、用意しとくからよ!」



 そう言われて2階の部家にある自分の荷物をとり、仕事用の服に着替える。動きやすいように皮の素材で作った胸当てや肘当てなどを着ける。


 これでよしっと。


 部家に置き忘れがないかを確認し、準備を終えると主人からパンを受け取り宿を出た。向かうのはもちろん冒険者ギルドだ。



 この街の道はかなり舗装されてて綺麗だな。それに建物も年季のはいっていないものの方が多い。


 大通りに出て道なりを歩く。ギルドの場所は宿からそう離れておらず、しばらく歩けば他の建物より大きな赤い屋根の目立つ冒険者ギルドへ着いた。


 自分の背の二倍近くあるであろう木のドアには狼の頭と弓の絵が彫られている。これが冒険者ギルドの目印だ。少し重い扉をして中に入った。



 うーん。


「今日は何をしようかな……。野宿の準備はしてきてないから日帰りでできる仕事があればいいけど。」



 ギルドの中へと入った俺は依頼の貼られてある掲示板の前に立った。冒険者は基本ここから仕事を選び、受ける依頼の紙を受付まで持っていくのだ。依頼には勿論、受注可能ランクが設定または指定されている。


 ちなみに俺のランクはシルバーだったりする。ランクは下から、(アイアン)(カッパー)(シルバー)(ゴールド)白金(プラチナ)と上がっていく。だから俺は冒険者で言うところの中堅あたりだろう。銀までになれば大抵の依頼を受注可能になる。


 つまり銀になれば一人前と言うことだ。俺も最近上がったばかりだけど。



 ふむふむ。


「側溝の掃除、側溝の掃除、側溝の掃除。いや多すぎだろ。あー、これにするか。」



 結構な数が貼ってある側溝掃除の依頼の横にあった1枚の依頼書を手に取り受付に向かう。ギルドにはまだ朝早くだからか、そんなに人はいない。ちらほら見えるのは夜営帰りの冒険者かギルドの職員くらいだった。


 酔いつぶれてる奴もいるな。そういうとこはどこのギルドも同じか。


 普段、混み始める昼頃には受付に依頼を受注する冒険者の列が長々とできているのだが、俺はその長蛇の列に並ぶのが嫌だから朝早くにギルドへ来ることにしようと思ったのは冒険者になってからすぐに決めたことである。


 今日の受付に立っていたのは二十歳くらいに見える若い女性だった。


「おはようございます。朝から早いですね。」


「ええまぁ、おはようございます。そちらこそ早くからお仕事ご苦労様です。これお願いします。」


 軽く受付嬢と挨拶を交わしてさっき取った依頼書を渡す。はい、依頼の受注ですね少々お待ちくださいと、受付嬢は笑顔を見せる。


 中々に可愛らしい素敵な笑顔だ。このあたりでは珍しくない茶髪の髪の毛を肩くらいまで伸ばして、せっせと作業をする彼女の胸の辺りには「ライラ」と彫られたネームプレートが着けてあった。


 ライラちゃんか…。覚えとこう。


 俺が受けることにしたのはレッドボアの討伐。この街の近くの村で畑が荒らされる被害が増えてきているとのことで出されていた依頼だ。レッドボアはその名の通り、赤みがかった茶黒の体毛で二本の牙をもつ猪のことで、大きいやつだと二メートルくらいになる。


 にしてもレッドボアか…。お肉、久しぶりにたべたいなぁ。


「冒険者プレートを見せていただけますか?…はい、ありがとうございます。では受付完了です。エルトさんお気をつけて!」


「ありがとう、気を付けるよ。」



 可愛い受付嬢の声援をもらい、受注を完了した俺は依頼書をカバンにしまってギルドを後にする。ここからは北の門が近いが、依頼元の村はこの街の東に位置しているので東門の方から出るとしよう。そっちの方が楽チンだ。当たり前だね。


 トボトボゆっくりと東門に向けて歩く。


 俺が昨日から入ったこの街は『カロン』という名前でここら辺を治めているファルム男爵の領地である。

貴族のことはよく知らないけど、ファルム男爵はその祖父か曾祖父が元々冒険者だったはずだ。


 なんでも初代ファルム男爵は白金(プラチナ)の冒険者で、翼竜(ワイバーン)を倒したその功績を認められて男爵の地位を国王から与えられたと言われている。


 だからか貴族になりたい冒険者は翼竜退治を目指して頑張ってる奴らが多い。まあ、そうそう翼竜が姿を見せることもないのだが。


 着いた。やっぱりこの時間から出る人はそんなにいないな。



「リンダ村に行く。依頼だ、プレートはこれ。」


「……。確認した。門は夜の8時を過ぎると閉まるが基本それ以降は開かないので気を付けるように。」


「わかった。気を付ける。」



 しっかりと鎧を着た関所の衛兵に許可をもらう。ご苦労様だ、お互い頑張ろう。


 そう心の中で言って東の関所から街を出た俺は依頼元のリンダ村に向かって歩きはじめる。街から街への定期馬車などは出ているが、村への馬車が出ることは滅多にないので徒歩だ。


 個人的には冒険者足るもの自然を感じて生きるべしと勝手に思っている。ただ単に俺がのんびり歩くのが好きなだけだが。今日みたいな天気の良い日は特に。

それに馬車はお金がかかる、もったいない。


 なんだか今日は身体が軽いな。準備運動がてらに少し走っていこうかな。


 なんとなく朝から気分のいい俺は得意な風の魔法を使う。初歩の初歩、そよ風を吹かすだけの魔法だ。



「風よ。」



 そう呟くと、ヒューっと背中を押すように優しい風が吹きはじめた。魔法はしっかり発動した様である。



「サッと行って、パッと終わらして、のんびり帰ろう。…あとお肉も。」



 口がお肉の気分に染まってる俺は魔法を追い風にリンダ村へと軽やかに走り出した。

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