第四話 許婚⁉
「っう、」
急に頭痛に襲われる。頭がずきずきする。
「無理しないでください。無理に昔の記憶を思い出そうとすると頭が痛くなるんですから」
「大丈夫だ。すぐ直るよ。少し座っているよ」
そう言い少しの間その場に座り込み目を閉じ休憩していると茶室の中から
「颯詩君、入ってっらっしゃい」
と夏帆のおじいさまの声がする。
まだ頭痛はするが大丈夫だろう
茶室のドアを開け中に入る。
「な......」
そこには両親と俺のじいちゃんもいた。
ひとまず「お久しぶりです」と軽く挨拶し、指示された夏帆の隣に座る。
「今日は両家の今後に関わる大事な話でな、ここにいるものはわしら以外は今日、今初めて聞く話じゃろうな」
両家に関わる話か。会社の存続問題か?それとも両親に何かあったのか?
「実はな」と俺のじいちゃんが話を始める。
「颯詩、お前さんと夏帆さんを結婚させようと思うてな。」
「「「え?」」」
あまりの衝撃でこの場にいる全員が声を上げた。
「結婚? 俺と夏帆が?」
「そうじゃ、正確にはまだ結婚できない年だから今は許婚ということになるな」
じいちゃんさらっとえげつないことを言いやがる。当事者の意見もなしで許婚にするとは、いや許婚とはそういうものなのか? と、とにかく無茶言いやがるな......
不意に夏帆のリアクションが気になり顔を見てみると、顔を赤らめて下を向いていた。
「わ、私は別に構いませんけど、」
「え? いいの? 普通よく考えたりしない? なのに即答⁉」
あまりにもあっさりな夏帆に少しおどろいた。
驚いたのは俺だけじゃなかったようで
「か、夏帆あなた本気なの?」
「夏帆、もう一度よく考えるんだ」
と両親もだいぶ驚いていた。
それにしても今の言い方じゃあ、まるで結婚してほしそうじゃない反応だな。
実際そうだろう
「で、颯詩君はどうなんじゃ?」
と突然夏帆のお爺さんに聞かれる。
俺は……ここで断るとじいちゃんたちに申し訳ないし、かといって承諾しても両親の反感を買うだろう。
正直俺は、夏帆が好きではないむしろ嫌いだ。だけどそれは、夏帆自身に問題があるわけじゃない、俺が弱いだけの話だ。
両親がどれだけ冷たくても夏帆はいつでも優しかった。でもそれは俺からしたら苦しいことだった。逃げ出し、臆病な俺をいつも励ましてくれる。俺はそれに、夏帆の優しさと同時に夏帆との劣等感を感じていて、いつも馬鹿にされているだけなんじゃないかとおびえている。
そう、俺が弱いだけなのだ。
取り合えずこの場を切り抜ける方法は......ないのか?