第1話 ある日美少女になってしまった
本話は三人称視点、次回以降は主人公視点です。
とある日の夜のドキュメンタリー番組である
「急性性転換症候群」、通称「ST・シンドローム」
その名の通り「性転換」、つまり突然性別が変わってしまうという、極めて珍しい病気である。だが、病名に症候群と名のつくことからわかる通り、この症状が見られた事例が少なからずあり……
有栖川朔夜、16歳、高校2年生。
陰キャな彼は平穏な生活を望む。面白みのない高校1年の生活を終え、迎えた年度末休暇。
高校生の身でありながら一人暮らしの彼は、決して広くないリビングでソファに座りながらテレビのドキュメンタリー番組を見ていた。
彼が普段、テレビを見ることは滅多にない。今見ているのも、やることがなく暇だったからとかそんな気まぐれでしかない。
テレビを見始めた時はそう思っていた。
しかし、気づけば、彼は「へー」とか「ふーん」とか感嘆の言葉を漏らしながら見ていた。彼自身、そのことに気がつかないほどに没入していた。
例外もあるが、基本的には人間は男性か女性かのどちらかである。そんな当たり前すぎるほどに当たり前のことが、ある日突然当たり前でなくなってしまう。そんな、ちょっとしたふしぎが、彼の渇いた心を潤した。
「本当はどこか期待してたのかもな」
平坦だった高校1年の生活に向けた言葉とともに、彼は少しだけ自嘲的な笑みをこぼした。
そして、「2年生は修学旅行もあるし、少しぐらい話せるやつができたらいいかな」と考えた。友達を作ることくらい、大抵の人間にとっては些細なこ
とだが、彼にとってはそこそこ大きな心境の変化だと思えた。
そんな高揚していた彼の頭も、眠気が勝る。寝室のベッドに潜り込み、そのまま眠りにつく。今日はいい夢が見られそうだった。
翌朝、いつもなら休日でも7時には起きてしまう彼だが、今日は2時間も遅い9時に起きた。「珍しいこともあるな」くらいに思いながら、重い体を無理やり動かし、起き上がる。そして途端に違和感を覚えた。
「軽い…」
快眠によって体が軽いとかそういうことではない。彼が先程起きあがろうとした時は、寝過ぎて体が重いと考えていたはずだ。しかし、今感じるそれは……、重力的に軽い、そういう感覚だった。
とりあえずリビングに移動した彼は、また1つ違和感に気づく。
「この部屋の物ってこんなに大きかったか?」
冷蔵庫や机、椅子といった家具の位置が高く感じる。それも物理的に。これはいよいよ何かおかしいと感じた彼は、 自分の体を触って確かめた。
「ない……」
そう、ないのだ。本来ならあるであろう場所に突起が。そしてその代わりに、胸のあたりに 何やら好ましい感触を覚える。
「これは夢だな。寝る前に、新学期への期待とか考えてたせいでこんな夢を見せられているんだろう」
彼にしては珍しく焦り気味で、若干自分に言い聞かせるように言った。突然、彼の中である事が思い出される。
「はっ、まさかっ!」
彼は風呂場の姿見をめがけて駆け出した。「まさか、いや、まさかな」と心の中で何度も唱えながら。そして、姿見に映る自分の姿を見て、
「ははっ、冗談……だろ」
そこに映っていたのは見たこともない美少女だった。そしてそれが誰なのかは、何を言わずともすぐに分かるだろう。そう、昨日のニュースを見ていた彼なら。
「こんな……こんな変化、俺は望んでないっっ!!」
「続きが気になる!」
「これからどうなる?」
って思っていただけたら応援よろしくお願いします!!




