プロローグ 奇跡は起きないから奇跡なのである
突然だけど、一つ質問をしてもいいだろうか。
「この世界には、奇跡と呼ばれるものがあると思いますか?」
俺は、そんなものはあるとも思わないし、無いとも思っていなかった。ようするに、無関心だった。
ただ、それはあくまで今までの話。今は違う。
何故かって?そんなのは、説明しずらいが……。しいて言うなら、そうだな。今の状況を見れば分かる。
「海斗…君?」
そうやって俺の名前を呼ぶ声は、俺には馴染みがあり、どこかホッとするような声。でも、最近は当分聞いていなかったと言ってもいいほどの声だ。
昔は毎日聞いていたのに…。
遠回しに言ってしまって分かりにくかったと思うが、ようするに『元カノ』だ。
今は学校とか、そんなところにはいない。俺が一人暮らしをしているマンションの一室の前だ。
そんなところに元カノはいた。
俺は、それ以外にももう一つ驚いている理由があった。
それは、俺が友人から聞いていた噂が関係していた。
「朱音が、4月に来た、美人……」
どうやら、そのようだった。
俺はこんな偶然があるのかと思った。
俺がたまたま選んだマンションの、たまたま選んだ部屋の隣が、たまたま俺の元カノだった。
これは奇跡だ。偶然で済ませるにはどこか気持ち悪くて、しっくりこない。
桜が全て散ってしまった4月中旬。春真っ只中のこの季節に、どうやら俺は神様からの悪戯を受けてしまったようだ。
それは、俺に何を知らせているのか、今はまだ検討が付かない。
奇跡的な再開。
驚いて話すことができない二人。
間違いない。これは、どうやら何かの始まりなのだろう。いや、違うか。これは二度目の始まりだ。
それじゃぁ、もううすうす理解しているかもしれないが、最後にこの状況を簡潔にまとめて伝えよう。
「美人で噂のお隣さんが俺の元カノでした」
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