粉雪
僕と君の切ない冬物語。
前が見えなくなるほど降りしきる粉雪の中で、僕は君に何と言えばよかったのだろう。
君の薄く開いた口唇にそっとかすめるように口づけたのは、一杯に見開いた君の瞳に透明の涙の膜が張るのがわかったから。
君、何も言えなくてごめん。
もっとずっといっしょに居ればよかった。
君のことが好きだったんだ。
なのに、いつも拗ねた態度を取ってごめん。
この真白な粉雪の中で、僕の言葉にならない言葉は、静かに埋もれていく。
もうなんの言葉も要らない。
ただただ君を抱き締めて。
僕と君は一体となって、しんしんと降り積もる雪の中に結晶となって封じ込められていった。
長らく休筆していましたが、降りしきる粉雪の映像を見た途端、ふっと浮かんだ作品です。
美しい雪景色と切ない恋心を感じていただけると嬉しく思います。
ご一読ありがとうございました。
石田 幸