02
「よやちゃん、たすけて!!」
「へ?おかあさん?どうしたの?」
携帯電話から聞こえたのはお母さんの声。
助けて、って言われても、何が何だかわからない。
電話はぷちっと切れてしまった。
今日は、お母さんと一緒にデパートに来ていた。
ついさっきまで一緒に歩いていたのだけど、人込みではぐれてしまっていたようだ。
何があったのだろう。
そういえば、と思い出したのは今日の朝食の時に見たテレビ。
このあたりで、誘拐事件が起こり、犯人はいまだに逃走中だという。被害者は21歳の女性でまだ発見されていない。
お母さんは37歳だが、子どもっぽく、若く見られることが多い。
まさか、誘拐されたのか。
冷や汗が流れる。
私一人では誘拐犯から助け出すなんてことは無理だ。
こういう時はどうすればいい?
まずは警察?それともデパートの窓口?
人込みをかき分けて、デパートの案内所に向かう。
そこから警察に連絡してもらった方が確実だろうと思ったからだ。
ピンポンパンポン
『迷子のお知らせをします――――――』
聞こえてくる放送が左から右に抜けてく。
早く、早くしないと。
そうだ、お父さんに連絡しよう。
会社にいるから、何かできるわけでもないだろうが、知らせた方がいいだろう。
ポケットに入っている携帯を取り出そうとして、手が空ぶった。
携帯の重みはいつの間にか消えていた。
携帯までいなくなった……。
連絡がとれなくなってしまった。
人込みを流れに逆らって戻るのは不可能に等しい。
というか、今やるべきじゃない。
案内所につく前に確か落とし物センターがあったはず。
ついでによって、探しておいてもらおう。
もう少しで人ごみのフロアを抜けられる、そう思った時、
「ねえ、君、ちょっといいかな。」
知らない人に声をかけられた。
こうやっていろんな人に声をかけて誘拐しているのかもしれないと思ってしまい、思わず前にいた人をかき分けてはしりだす。
このデパート、警備体制が甘いよ……。
そんなことを考えながらとにかく前に進む。
ゆっくりとした人の流れの中をかき分けかき分け進んでいる私は、周りから見ると目立っているのだろう。
さっきから人の視線を多く感じていたが、それらを無視してしばらく行くと、落とし物センターにたどり着いた。
ようやくここまでこれた。
さっさと携帯電話の特徴を告げて案内所に行かなくては。
落とし物センターは、人がいなかった。
どうやら、機会に落とし物の特徴を入力するシステムのようだ。
届けられていればその管理番号が教えられ、届けられていなければ、データが管理室におくられる。
タッチパネルに触れ、落とし物のカテゴリー選択をする。
驚いたことに、そのカテゴリーには『人間』というものまであった。
どういうシチュエーションなのか……。
時間がないというのに、私は思わずタッチした。
条件が入れられる枠と、現在預かっているものの画像表示のボタンがあったので、画像表示の方を選択。
”検索結果、1件”
本当にあるらしい。
なになに、管理番号K00902、女性、20代?。
……これ、お母さんだよ!?
どうしたの、お母さん。
誘拐じゃないのはよかった。
でも、なぜ迷子ではなく落とし物なのか……。
とにかくお母さんの回収をしなくてはいけない。
管理番号を控えて案内所に向かう。
ピンポンパンポン
『迷子のお知らせをします――――――――』
さっきの迷子放送が、また流れた。
いつまでたっても見当たらないらしい。
まるで私のお母さんとおなじだ。
『繰り返します。迷子の、田中夜耶さん、田中夜耶さん。1階案内所にて、お母様がお待ちです。グレーのパーカーにジーンズ、黒い眼鏡をかけているそうです。発見された方はお連れください。』
あれ、とその時気づいた。
さっきから何分おきかに流れる迷子放送が、自分のことではないか、と。
たくさんの視線は私が迷子のこどもとおんなじ特徴をしていたからなのか……。
まったく、こっちが捜していた、っていうのに、お母さん、落とし物になって放送かけるなんて勝手すぎるよ!
意味の分からない不満を心の中で吐き出しつつ、歩く。
そして、案内所について目にしたのは、涙目のお母さんを受付のお姉さんが慰めているという娘としては何とも言えない光景だった。
どうやら、人込みではぐれて流されていってしまい、私に『助けて』と連絡したのに、携帯を落としてしまい、落とし物センターに行ったら、センサーに反応?して落とし物と認識されてしまった、ということらしい。
落とし物と認識されるってどういうことなのだろうか……。
即席アイデアメーカー - タロットプロット https://tarot-plot.com/theme/idea
今回のお題は、”迷子の母が、落とし物センターにいる”でした。