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黒塗りエデン  作者: アオピーナ
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第一章 第一話「ブラック・イヴの悲劇」

初めまして、アオピーナです。この「黒塗りエデン」が私の初投稿となります

ーーーというありきたりな挨拶しか出来ませんがどこかしらに至らぬ点があれば、是非指摘して頂けたら嬉しいです。そして、どこかしらに面白い点があれば是非褒めて頂けると嬉しいです。


ーーー貴方は林檎、禁断の果実。


破壊も再生も貴方次第ーーー



パズルのように、朧気な情景が散りばめられている。見覚えは無いのにどこか懐かしいような・・・・・・・そんな気がした。


やがて、その空間は硝子のように音を立てて崩れていく。崩壊の中で目にしたのは自分と似たような面影を持つ人間だった。顔は見えない。


「まだお前は×××じゃないよ・・・」


だけどと人間は言葉を繋ぎーーー


「もうすぐだね」


そう言って、消えた。



☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆



謎な夢が事切れると同時に、ゆっくりと黒髪の少年ーーー新咲誠(しんざきまこと)は目を覚ました。

チャームポイントのくせ毛を撫でて今いる場所がどこか考える。


「あら?起きたの?」


声のした方に目を向けると、沢山の何かしらの書類や薬が乱雑に置いてある机とにらめっこしている美人教師がいた。どうやらここは保健室の様だ。

現在地を確認すると直後に頭を何かで殴られる瞬間がフラッシュバックする。


「ーーーッ!俺まさか撲殺されかけた?!」


朧気な記憶から自分なりに思い至った結論を顔面蒼白にして叫ぶと、美人教師は呆れた表情でため息をしてゆっくりと振り返る。


「だとしたら今頃この学園内は厳重警戒レベルになって警備員や教師達が躍起になって犯人探しするだろーね」


「それはそれで俺なんかのためにあざますッ!って感じに半ば喜びますね」


「それはそれは癪にさわりますこと」


「八千代先生ですら心配してくれるんだから光栄な話ですよ」


新咲の揶揄い文句に面倒臭いと言った様子で美人教師ーーー八千代は再びため息をする。その動作すら妖艶さを漂わせるのだが。


「貴方はHBEDの適性は無いよりはあるんだから・・・・その、戦闘センスもある方だと思うのだけれど」


手元にある資料を見つつ、新咲の頭に巻いてある包帯に目をやる。


「えいちびーいーでぃーって、なんか人を強化できるとかっていうアレですか?…まあ周りの奴らも普通にすげえのがいっぱいいるんでやられるのも無理ないかと」


八千代の言いたい事を察知したのか、自らを卑下して怪我の原因にも納得したという様子を見せる。いっそ清々しいくらいなのだが。


「このご時世、いつ戦いが起こるか分からないんだからちゃんと鍛えておくのよ?」


「まあその時は俺の尋常ならざる適応能力が発動される予定なんで!避けるか逃げるか極めますね!」


「いや戦えよ」


背伸びをし、ベッドから降りながらボケとツッコミの押し問答をしつつ保健室を出ようとする。一応看病をしてくれいていた事へのお礼を言い、出ようとすると八千代が思い出したように声をかける。


「そういえば、もうじきHBEDの適性検査があるから忘れんようにな」


そう言って、机の上に置いてある注射器を掲げる。


「わっかりました。あ、先生」


「なんだ?」


「今日クリスマスイヴなんだからたまには男でも誘ってーーー」


楽しんできて下さい、と言おうとした瞬間にスリッパが顔面に飛んできたことでこの会話は終結した。



☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆



訓練場へ戻ると何故か一つの土俵に皆が群がり、ヒューヒュー負けんじゃねぇ(笑)とかぶち殺せぇぇッッという具合に歓声が聞こえる。暴言吐くやつは恨みでもあるのだろうか。


「勝つのは私、死ぬのはあんた確定でOK?」


そう言って木刀を斜めに振り下ろし、不敵に笑って挑発するのは時東愛梨(ときとうあいり)。黒く長いツインテールを靡かせて悠然と立っている。武道の名家の時東家の出でルックスは勿論、スタイル抜群で人望も厚い。本人曰く、力こそ結局至上とのことであるから成績は謎だ。


「OKじゃないし死なねぇなっ?!・・・・まあそれは流してやろう!この決闘での勝利を記念して・・・そうだな、今宵は祝勝会!!気が向いたら招待してやらないこともなくなくなくはないぞ?」


「うるせぇッ!とっとと殺られろぉッ!」


「なんか上から目線に強そうなフリしてるけどお前そこまでだろぉッ!」


「早く揺れる巨乳を見させろぉッ!」


外野からブーイング受けてる可愛そうな男は叶本創(かなもとはじめ)。こちらも一応、名家の出で何故か時東に対抗心を燃やしている。ちゃんと相手にされているかどうかは定かでは無いが。


「外野は黙ってろッ!あと、最後の奴は自重しろッ!そして俺はお前に絶対勝ァつ!!」


日本人離れしたその彫りの深い顔に似合わず敵意を剥き出しにし、こちらは金色のロン毛を靡かせて斬り掛かる。


「あいつらまたやってんの?」


「時東家と叶本家は犬猿の仲だからね。噂で聞くに、原因は両家の当主の世代がトランプで不正し合って喧嘩になったことらしい」


「子供か!!あとお互いやってたのかよ!」


「不正ぐらいは僕もたまにするよ?」


「いや、その自慢は間違ってるぞ」


そう言って少しズレた性格をして温和に話すのは新咲と親友である常松昭彦(つねまつあきひこ)。眼鏡で中世的な顔立ちの彼はどことなくミステリアスな雰囲気を漂わせている。まあ、ある意味面白いもの好きの新咲とは良い相性なのだが。


「まぁこの学園は少し、いや大分特殊だから変わった奴らが多いんだよ。対戦闘訓練なんかを普通、高校生がやるのかっていう話だ」


「しょうがない、状況が状況だろ。ここもそうだけど上のお偉いさん方もなにやら内緒の研究してるらしいし」


「全く・・・・・そういうSFチックな話はフィクションだけにして欲しいよ」


そう言って常松は少し長めの髪を払う。


「うわクッセッ!」


「何がだッ!!」


その常松のキザな仕草に新咲が鼻を摘み身体をよじる。


「おいマコっちぃ〜頭の具合はどうだ?ワリィなぁ〜折角俺の肉体美に見蕩れてくれたのに加減効かなくてよォ」


その二人のやり取りに、突如大柄な筋肉質の男が乱入してくる。


「やめろォッ!そのテンプレな登場の仕方!しかもお前のキャラ自体テンプレだから痛いんだよ!」


「テンプレテンプレうるせぇッ!そしたらお前はそんな俺に負けたんだぞ!!」


声を荒らげて新咲の頭に巻かれてる包帯を指さす。


「これか・・・・これはだな」


「なんだ・・・・?」


「ゴクリ」


新先が急に真面目なトーンで話し出し、筋肉男もそれに釣られ真面目な顔になり、常松はわざと効果音を出す。


「お前の髪型ってオールバックだろ?だからおでこ出てるじゃん」


「それがどうした」


「だからさ・・・・」


そう言葉を切ったあとに右手で左目を覆い隠し、そしてチョキ型にして目を見えるようにしもう片方の手を右肘に添えて厨二病ポーズをとる。


「目がーーーー眩むんだよォ」


「尾花、僕は全身が無性に痛くなったんだがどうすればいい?」


「知らねぇよ!!それはコイツのせいだろ!てか俺のおでこそんなに光ってねぇな?!」


新咲の厨二病ポーズに、筋肉男もとい尾花立葉(おばなたつは)は声を荒らげ常松の謎ツッコミに鋭いツッコミで返す。


「タッパお黙らっしゃぁぁい!!」


そしてまた急に新しい声が入ってくると同時に尾花が飛ぶ。


「ゴフッッ!?」


尾花弾丸に巻き添いをくらい新咲も吹き飛び壁に叩きつけられる。


「ゴリラの声が五月蝿くて破壊衝動が抑えられなくてよ?ミーニャ?今の蹴りどうだった?!」


「ミーニャ的に今はあのゴリラにぶら下がってるおぞましいナニかを破壊した方が、残り99回も生き返らなくていいと思われる希ガス」


「それもありだわ!または、人喰い花にでも食われてしまいなさい!」


「いや、マ〇オじゃねぇなッ?!」


恐ろしい早さで復活した尾花が今しがた並外れた蹴りをお見舞いしてきた、桃色のショートヘアーが特徴的のギャルに〇菜並のツッコミを返す。


「やべッ!俺の木刀が!!」


と、そこへ何故か叶本の木刀が飛んでもう片方のお人形のように可愛らしい少女へ突撃しそうになる。


「このコースは我を捉えている。澄桃(すもも)、スイッチ!」


「澄桃じゃなくて・・・・・ピーチとーーー」


ミーニャと呼ばれていた少女がなにやら専門用語を発し、瞬時に澄桃が入れ替わり飛んできた木刀を掴み取りーーー


「呼べぇぇぇぇッ」


槍投げの要領で投げ返す。


「流石ピーチ、JKならざる力を見て我草生えたぜチョベリバ」


「なんか色々混じってるけどサンキュー!そして草生えるなんて言わないで?!」


「お姫様言葉忘れてるよ?」


「おっと!んんっ・・・・これが私の力でいてよ?」


「いてよ?じゃねぇよッ!水仙寺!!投げ返した木刀、壁に突き刺さってんぞ!!」


澄桃もといピーチを、その姿からは想像出来ない言葉で褒めて同じくギャルのような姿からは想像出来ないお嬢様言葉でピーチが受け答える。半ば、ピーチはキャラ作りのような気もするが。

そして、突き刺さっている木刀を見て震えながらピーチに言い返す叶本に対し、少しの間蚊帳の外になっていた時東が哀れみの視線を送る。


「叶本。もういいんだよ・・・そんなに頑張らなくて・・・そこまで腰が引けてる状態で勝って醜態を晒させてお前のアンチ共に叩かせ放題にしようとする程私も鬼じゃない」


「いや、鬼だよね?!考えが十分鬼以上だよね?!この悪魔!!」


「愛理を悪魔呼ばわりするなパツ菌野郎ォォッ!」


「金色うぜぇんだよ!!目が眩むんだよ!!」


「ツインテ巨乳は正義だ!!異論は認めんッ!」


「新しいバイ菌開発しないでもらえる?!あと最後の奴ただの変態だよな?!さっきも居たけど!!」


相変わらず叶本に対してのブーイングは強く、この場所に居るクラスメイトの殆どが男女問わず時東愛梨という少女に見蕩れている。流石、クラス、いや学年一の秀才だ。


「早くどけよこのゴリラ野郎」


「うるせぇ・・・さっきの一撃で腰が言う事聞かなくなっちまったんだよォ」


「ジジィか!!」


一方、新咲はピーチに蹴り飛ばされた尾花と壁にサンドウィッチ状態にされ、動けずにいた。常松がチラチラ新咲の方を見ながらミーニャと謎トークを繰り広げているのはある種の嫌がらせだろう。


「大丈夫?」


途端、まるで完璧に調和された旋律を鳴らしたような綺麗な声と共に新咲の目前に手が伸ばされた。


「美園・・・・?」


「起こしてあげようか?」


青みがかったロングストレートの髪が、美園と呼ばれた少女が屈むことでカーテンのようにその美しい顔を少し覆っていく。

その華奢の身体のどこにそんな力があるのか、尾花の巨体をものともせずにどかす。その反動で、青黒く染まったカーテンが翻される。露になったその顔には笑みがーーー


「いや、あの傷つくんでその顔やめてもらってもいい?」


必死に笑いを堪えている美園蓮花(みそのれんか)の顔がそこにあった。


「ごめんごめん!でも、状況がカオス過ぎて・・・・ふふっ」


「今笑っただろ!なんかお嬢様みたいな上品な笑みで誤魔化してたけど本当は馬鹿みてぇに笑い倒したいんだろ?!」


「いや、もう飽きたよ」


「早い!!それもそれで傷つく!」


役者もビックリなその変貌ぶりに新咲は更にダメージを受ける。そんなことはお構い無しに美園は彼に手を差し伸べる。


「はい、ちゃんとお立ちなさいな」


「いや、俺立てるんだけど。まあいっか」


そう言って差し伸べられた手を掴もうとして自らの手を伸ばす。












その瞬間ーーーーーー









『ジングルベ〜ル♪ジングルベ〜ル♪すっずが〜なる〜♪きょ〜うはったのっしいクリスマッス♪Hey!ジングルベ〜ル♪ジングルベ〜ーーー』




突如、大音量でクリスマスの歌が流れ出す。純粋無垢な子供が、一年に一度訪れるイベントを楽しむような声で。


「いきなり歌?・・・っていうか音量でかすぎだろ。チャイムよりでかいぞ」


「街の拡張器使って流してるんじゃない?ほら、重要なお知らせとか避難警報で使ってるじゃない」


新咲の言葉に美園が反応する。クリスマスイヴだから、雰囲気を盛り上げようと拡張器を使って流したのかもしれない。


『すっずが〜なる〜♪きょ〜うはたのっしいクリスマッス♪ーーー』


「あれ?声低くなってきてないか?」


今度は常松の言葉に周りが反応する。


「何かおかしい気がするわね。段々と不快に聞こえてきてよ?」


「耳障りなノイズが気になるぜ」


徐々にトーンが低くなっていくクリスマスソングに皆が怪訝な表情を見せるようになっていく。

外から騒音も聞こえるようになり、新咲は無意識に訓練場の窓へと向かい、窓を開ける。振り続けていた雪は止んでおり、代わりに空に見えるのは無数に飛んでいるおびただしい量の黒い航空機。

新咲に釣られ、やがて皆も窓へ近づいて空を見始める。


白い雪とは正反対の色をした黒い鉄の塊が無数に飛行しているという、決定的な違和感に気付くにはさほど時間は必要無かった。


「なんだよ・・・・あれ」


「ちょっと・・・なに?多くない?」


「軍のショーだっつっても量が多すぎるというかーーーー」


各々が異変に気付き、疑問を仰ぐ。


刹那ーーーーーー





『めりぃぃぃくりすまぁぁす』


突然、初老の男が無邪気にはしゃぐような声が聞こえた。


『私はサンタクロース。時間は少し早いけど君たちにプレゼントをあげちゃいまぁす』


「プレゼントだぁ?」


「おっさんが何いってんだ」


「なんかのイタズラ?」


それぞれ異なるも抱く疑問は共通している。


ーーーこの不快さはなんなのだろうか。


聞いたことも無いのに、聞いた瞬間にはっきり全身の毛が逆立つ程の生理的嫌悪を醸し出している。


『おめでたき日本国民の皆様方。今よりわたくしめがとっても、はっぴぃ⤴︎ ⤴︎であめぃ⤴︎ ⤴︎じんぐなプレゼントを差し上げちゃいます』


その光景に理解が及ぶのには、航空機で作り出された雲を雲だと認識することよりも何倍もの時間が必要となるだろう。








雪が降り注いだ。


真っ黒い雪だ。


この世で雪といえば白いイメージしかなくて。


黒色の雪は初めて見ると関心に浸っていた。


地面に落ちたら砕けて溶ける筈の雪が、何故地面に落ちた途端に爆発したのだろうと疑問を抱いていた。


呆然と立ち尽くして外を見ていた。


一秒のながれすら緩やかに感じて、日常が壊されていく瞬間を。


ただ見ていた。














人が化け物に変わっていく瞬間をただ見ていた。






















ギャグセンスがーーー欲しい。

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