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二話

私は話を切り上げると二人に「香菜さんの部屋に行って様子を見てきます」と言って二階にある香菜さんの部屋に向かった。ちなみに、私の部屋は香菜さんの隣です。


「香菜さん? 来ましたよ? 大丈夫ですか?」


香菜さんの部屋のドアをコンコンとたたきながら香菜さんを呼びましたが返事がありません。仕方なくドアノブをひねってみると鍵が開いているのが分かりました。


「鍵が開いているので勝手に入りますよ?」


私は部屋の中にいるであろう香菜さんにそう言うと、部屋の中に入った。


部屋に入って私の目に入ってきたものは、かわいらしいクマさんのぬいぐるみやピンク色のかわいい色でコーディネートされた香菜さんの部屋といつも香菜さんが寝ているであろうベットとその上で布団にくるまっている香菜さんだった。


私はベットの前に行き、布団をゆすった。


「香菜さん 大丈夫ですか? もしかして体調が悪いのですか?」


私がそう言いながら布団をゆすると香菜さんがひょこっと顔を出した。


「あ、ようやく出てきました。 お母さんたちが心配してましたよ?」

「うん、ごめんなさい……」

「別に悪いことをしたわけではないのだから誤る必要はないですよ」


私は香菜さんにそう言って頭をなでてあげた。香菜さんは昔から頭をなでてもらうのが好きみたいで今みたいに目を細めてうれしそうにするからとてもかわいいと思う。


「それで香菜さん、どうしたんですか? 急に機嫌が悪くなったみたいですが…… もしかして、私、香菜さんに嫌なこと言っちゃいましたか?」

 

私は香菜さんにそう言いながら心の中で香菜さんに嫌なことを言ってないか何度も確かめた。私がそんなことをしていると、香菜さんがぽつりとつぶやいた。


「ねぇ、お姉ちゃん? お姉ちゃんは本当に覚えてないの?」

「え? 特に忘れていることなんてないと思いますが…… ほ、ほら、きちんと香菜さんの着せ替え人形になることも覚えてますよ……」

 

自分で言っていてなんだか寒気がしてきました。ってそうじゃなくて集中して聞かないとまた香菜さんの機嫌が悪くなってしまいます。 ほら、香菜さんが今にも泣きそうです。


「って香菜さん! どうしたのですか? 泣くほどのことなんて…… ごめんなさい…… 香菜さん、私は多分、香菜さんの言っていることを覚えていません。 私と香菜さんのことでなにかあったのですか?」

 

私は泣いている香菜さんを見て、なんだか心が締め付けられる思いでした。そして、そんな思いをどうにかするために香菜さんに本当のことを言いました。 香菜さんは多分、昔の記憶のことを言っているのだと、

なんとなくわかりました。


しかし、私にはある時から幼い時の記憶が全くないのです。私が持っている記憶は中学二年生から今の記憶まで、それよりも前のことは何も覚えてないのです。


「やっぱりお姉ちゃんは覚えてないんだね…… ごめんね? 変なこと聞いちゃって」

 

そういう香菜さんはなんだかとても悲しそうでした。そして、このまま放っておいたらどこかに消えてしまいでした。


「香菜さん!」


私はそんな香菜さんをギュッと布団ごと抱きしめた


「え?」

 

香菜さんの不思議そうな声が布団の中から聞こえてくる。


「香菜さん、私には確かに記憶がすっぽりと抜けて過去にあった出来事なんかまったくわかりません。それでも私は香菜さんのお姉ちゃんです。その事実だけは変わりません。それでも香菜さんは昔の私のほうがいいですか?今の私では不満ですか?」


私は気が付いたら香菜さんに向かってそんなことを口走ってしまいました。どうしましょう……今更撤回しても遅いですよね。

 

私は香菜さんを抱きながらとてもあたふたしていました。

 

すると突然、布団がバサッと音を鳴らし、中から香菜さん出てきました。そして、流れるような動作で私は香菜さんに押し倒されてしまいました……


「あ、あの? 香菜さん? な、なんで私はお、押し倒されているのでしょうか?」

「ふふ、なんでかな? 気が付いたら押し倒しちゃってたよ。」

 

香菜さんでもわからないとは…… まさか無意識にやったということですか! もし本当にそうだとしたら香菜さんは恐ろしい子かもしれません……


「そ、そうなんですか…… ま、まあ、そういう時もあるかもしれませんね。じゃ、じゃあはやくのけてもらってもいいですか?」

 

今の体制は本当にまずいです。全く身動きがとれません。それに今の雰囲気もまずい気がします……それに、香菜さんの目が大好物のえさを見つけた捕食者のようでとても怖いのです。


「か、かなさん? 雰囲気がこ、こわくなってますよ?」

 

まずい、体が震えてしまってしまう。どうにか震える体を止めようとしてみるが止まる気配が全くない。


「ふふ、お姉ちゃん、かわいいね。 それにこんなに震えちゃって、小動物みたいだよ?」


本当にピンチです。私はこんなところで逝くわけにはいけないのです。あらゆる手段をつかって逃げ出さないと……


「本当にかわいくてかっこいいお姉ちゃん。私の物っていう印でもつけようかな?」

 

香菜さんの物?印をつける? 香菜さんが言っていることがわからなくなってきました。そんなことよりも早く逃げ出さないと。私は頭の中で逃げ出す手順を考えた。がなにも思い浮かばなかった。


「動きが止まったってことは逃げることをあきらめたのかな?」

 

どうやら、私はここまでのようです。私がそんなことを考えているとだんだんと香菜さんと私の距離が近くなっていき二人の影が重なり合った。私は体を駆け巡る感覚に押し流されてしまい、甘美なにおいが頭の中をすり抜ける中私の意識は途絶えるのだった……

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