夏 秋 編
夏編
ねぇ、秋ってなんでそんなに優しいの?
それはね、貴女が心配だからよ
そっか~
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……くだらない事を思い出してしまった
はぁ…
疲れたな
まあ なんとか終わったから
あとは……
交代するだけ
交代するだけだっ!
───独り言は抑え時なさいと言ったはずだけど?
げっ!
「どうも久しぶりね夏さん。元気だった?」
オレンジの髪に黒い瞳のロングヘアーの女性
それが秋だった。ただ
「僕はいつでも元気だよ。ち~と台風の野郎に付きまとわれたけど」
「あ~台風か~あの子はね~ ん……悪い子じゃ無いとは言えないなぁ」
かなりのお人好しな女性なんだった
「そのうちそっちにも来ると思う。ま、貴女なら大丈夫でしょうね」
「あら?割と過大評価してくれるのね。嬉しいわ。そんな風に成長してくれて」
語尾に柔らかいハートが付きそうな言い方をして、秋はにこやかにこっちを見た
「……好きで成長した訳じゃない。てか春は相変わらず子供だな。離れたくないって顔赤くしててかわいかった」
「かわいかったは余計じゃない?そういう所変わってないのね」
図星だった。確かになんでかわいかったとか言ってしまったんだろう……それに会ってからそんなに経ってもいないのにいきなり他の女の子について話すとは……
「まだそんな所が変わってないのは安心した。やっぱりかわいいわね」
と、秋は腕を後ろに組んだ。
「変わらないさ。僕は僕だもん」
「ポジティブね。いやあそれにしても」
「それにしても?」
この時、次に何を言われるかは予測出来た。
だが、あえてそれは分からないとする。
「その女の子なのに僕って使うとこ嫌いじゃないよ。いや、むしろ好きかも」
その一言に普通ならため息を吐くだろう。何度も言われた事だからな。だが、僕はあえて笑う。
「呆れた……春も前に同じ事言ってたよ
。いつだったか忘れたけど」
「やっぱり似るのね。そういえば春
は何か言ってた?あの子もしかして寂しいんじゃないかと思って心配だわ」
秋は頬に手を付けた。昔からの癖だ。何か心配だとこうして助けを求める様にポーズを取る。
「心配しすぎるなと言ってた。貴女、ちょっと心配しすぎなんだよ」
秋はムッと口角を微妙に上げた
「姉が妹の心配をするのは当然でしょ?だってあの子まだまだ子供みたいな所あるしね……貴女だって心配何じゃない?馬鹿みたいな割にしっかりとしてるからね」
言われてみれば確かにだった。春は友達としていや、それ以上の何かとして
てか馬鹿みたい?はぁ?
「そりゃ心配な所もあるけどね、心配しすぎて世話かけてたら成長しないでしょうが。だから春は言ったんじゃない
心配しすぎだって。あの子だってもう子供じゃないんだからさ、ちょっと目を離しても大丈夫何じゃない?」
顔は見せないようにした。しかし、秋には分かってしまったようである。
すこしだけ声のトーンが下がったので分かった。
「それもそうかもしれない……でも何か心配しちゃうのよね。そういえばいつの間にか自然に敬語使っちゃてた?」
振り向いて
「いいや、使ってないよ」
と言った。
「良かった~なんか親みたいでね~ あ、ちょっと」
「何?」
不意に秋が一歩前まで歩み寄って来たので、つい赤面してしまった。
「襟が……」
秋は僕の襟をさっと直した。らしい……瞬時にそう感じたのだった。
「細かいなぁ。てかこれ冬に渡しといて。」
鍵を胸から取り出して、目の前にいる秋に投げた。
「ちょっと!いくら小さな物でも投げたら危ないって事ぐらい分かるでしょ!投げて渡さない!もうっ」
一つだけ僕は軽く頭を叩かれた。久しぶりでなんだか気持ちが溶けてく気分。
「分かった分かったって。あ、その鍵は冬に渡し……あれ?そういえば僕、冬に会った事ないな。冬ってどんな子?」
秋の顔が変わる
「子じゃなくて女性って呼びなさいよ。
冬は私より遥かに大人だけど、笑わないのよね。でも、前にふざけて後ろから押した時に泣いちゃった事があったな。いつだったかに。そういえば私と仲が悪いのもそれが原因なのかな?」
「いわゆるツンデレってか。かわいいね。会ってみたいな」
小さな声で秋は「バカッ……」と言った
「やめときなさいよ。冬は暑いと倒れちゃうからね」
「そうか。んじゃそろそろ交代するか。
そういえば秋って右利きなの?左利きなの?」
「左利き。あ、ちょっと待って」
「何だよ~」
秋は手をそっと触れた
「やっぱり手の形綺麗なのね。すべすべしてる………」
「春にも同じこと言われた。やっぱ似てんだな。姉妹って」
「はい、交代完了。指も綺麗ね」
「恥ずかしいから褒めんでくれ……」
「じゃあね。それとまた春に会ったら伝えといてね。泣きたい時は泣いていいんだよって」
「あ、じゃあ」
「……」
「あれより大人ってどんな性格してんだ?」
「ま、いいか。褒められたし」