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冬から春へとバトンタッチ

「遅い……既に時間は来ているのに春というのはどうしてこうのんびりなのか」


私は冷静さを欠いていた。だって来ないんですもの



「……と、言いつつのんびりした私に憧れるのであった。だって中身はかわいいもんね!ふ~ゆ。」


隠れていた春が出てきた。私は驚くあまり目の前に腕をばたばたとさせて転んでしまったのだった


「ちょっと!卑怯じゃない?そうやって隠れてるなんて」


「へっへんだー!気づかないのが悪いんだからねー」


春は舌を出して笑った。その無垢な笑顔に呆れて怒る気もうせてしまう。情けない……


「とりあえず早く交代バトンタッチしてくれる?あんまり遅くなると影響がさぁ」


この影響と言うのはすなわち人々や動物達に及ぶ影響の事だ。遅くなると他の季節達にまで影響が出てしまう


「分かった分かった。あ、その前にあれ渡してくれる?」


「あれって鍵ね。はい」


ポケットから鍵を出し、春に渡した。ありがとうと言いたそうな顔だ。恥ずかしいくもかわいいと思ってしまう


「ありがと。ん~」


春は私の顔を神妙な目付きで見た。


「何?まじまじと見つめちゃって」


「相変わらず笑わないな~と」


それは私のアイデンティティであり、欠点でもあった

私は感情を出すのが苦手で、他の季節が羨ましかった。だけど、気にしてない振りをずっと続けて今に至る。と言う訳なのだ


「感情を出すのが苦手なんだから仕方ないでしょ?貴女だって笑ってばっかいるけど不安なんじゃない?」


嫌味ったらしく言ってみた。抑えていた気持ちが爆発した様な気分だった。悪い娘だ,私は


「そりゃ不安だけどね、やるしかないじゃん?頑張るしかないんだよ」


春は次第に泣き顔になってきた。どうやら不安でいっぱいいっぱいだったみたいだ。


「……頑張るって何を?」


泣くな。と確信していた


「ま、色々だよ。……というか…そんな悪い事言っちゃう子には」


「こうしちゃうんだか……ら…」


「ちょ……いきなり抱きつかないでよ……もう……あ」


泣いていた。恥ずかしくて恥ずかしくて顔は見せたくないんだろう、必死に私の服に顔を押し当てている。

でも、零れ落ちる涙が私の足を冷たくするのだった。


「そうか。そうだよね……やっぱり色々言われるのは怖いよね。ごめん、気づいてあげられなくて。」


私は優しく春の頭を撫でた。声をなるべく立てずに泣いてるつもりなのだろうか。震えている


「よしよし……」



それから暫く泣いた。春は泣いたのだったが、突然顔を上げて


「……ん!」



と言って笑顔で私の周りをくるくると回った。目の下にアザが出来ていて、よく泣いたな……と笑ってしまうのだった


「もう大丈夫?」


春は止まって笑顔で


「うん!すっっごく大丈夫みたい!じゃあハイタッチしよ!」


「そうね」


「そりゃ~」


「……」


久しぶりに手の温もりに触れた。暖かくて気持ちがいい。ずっと触れていたい


「もうっ!手握りすぎ!そんなに心配しなくても大丈夫だからっ!じゃあ頑張ってくるね!あ、何か言いたそうな顔だ!」


「その髪飾り、かわいくて好きよ。桜ってのになるんだっけ?綺麗に咲かせてね」


くすりと私は笑った。出来る限り笑ったつもり


「うん!とっても綺麗に咲かせるからね!じゃあバイバイ!」


手を出来るだけ振って、去っていく。勝てないな……と私は確信するのだった


「行ったか……」



「さて……私を唯一泣かせた相手でもゆっくり待ちますかね。秋……絶対に許すもんですか」


私は握りこぶしを作って眉間にシワを寄せるのだった


……眠いです

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