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攻撃命中、254のダメージ、そして死亡

 サキュバス族はファンタジー世界では、「淫魔」とか呼ばれている。


 見た目麗しい女性の姿と眼差しで男性を夢の世界へ誘うと、エッチな夢を見せて『生命吸引(エナジードレイン)』をしたりするらしい。


 俺だって「ハーフヴァンパイア」なのだから、今更この世界で淫魔(サキュバス)に出会っても何ら驚かない。むしろ11歳の可愛い美少女サキュバスと知り合えたことは、嬉しい誤算と言っていい。


「リールマインちゃんのスキルに、何かだ凄そうなのが有るけれど……?」


「『破廉恥夢(はれんちドリーム)』に『愛情抱枕(だいしゅきぃホールド)』な! 一体どんなスキルなんだ?」


「これは……その、眠っている相手に夢を見せたり、抱きまくらになってあげられるスキルなんです」


 小悪魔風衣装のツインテールの美少女は、恥ずかしそうに曖昧な笑みを浮かべた。


「眠らせて……じゃなくて、眠っている相手、ってのがミソね」

「うーん。戦闘向き以前の問題だね」


 もしかして、『破廉恥夢(はれんちドリーム)』というスキルで相手に淫靡な夢を見せて、エナジードレイン的に攻撃できるのかと期待したけれど、違うようだ。


「ジュージさま。ごめんなさい。私には……あの闇騎士に対抗できる力は無いのです」


 しゅんとして頭を下げるリールマインちゃん。


「いや! 気にしないで。リールマインちゃんは寧ろ戦わなくていいんだから!」

「そうよ。ジュージは戦力外だけど私がなんとかがんばるから!」


「さらっと戦力外通告するんじゃねぇよ!?」

「はぁ? 事実でしょダメージ1はせめて弾除けぐらいにはなりなさいよね」

「ぐぬぬ! みのりのニンニク臭気ビームに期待するよ……!」

「うるさいわね、臭気じゃないわよ! 可憐なフレグランスよ」

「あはは!? 俺までダメージくらうわ」

「ぬわんですってぇ!?」

 思わず取っ組み合いの喧嘩になりそうな俺と美乃里(みのり)の間に、リールマインちゃんが「やめてくださいよー」と必死に割って入る。


 美乃里(みのり)のニンニク臭気は確かにアイツへの唯一の対抗手段だ。一回に130のダメージを与えられるとしても、単純計算でもあと2ターン、攻撃を堪えないと勝ち目はない。


★------ステータス------★

 闇騎士・マハートクラゥ

 種族

  アンデッド・ナイツ

 階級

 ・レベル28

 属性

 ・闇


 状態

 ・『常闇の結界』、消失(ロスト)

 ・防御力倍増補正、消失(ロスト)

 ・攻撃命中時、ダメージ倍増


 HP 207/342

★----------------------★


 ――ここは俺が「盾」になってでも、美乃里(みのり)を守るしか……!


 だが、既にリールマインちゃんが「パス」したことで、『六角陣(ヘックス)』の戦闘は、相手のターンへと移行したようだ。

 対峙する闇騎士・マハートクラゥはダメージを受けてはいるけれど、凄まじい戦闘力を秘めているはずだ。全身から赤黒いオーラを揺らめかせて、力をみなぎらせている。

 

 ビリビリと空気が震え、殺気が押し寄せてくる。


「――さぁ! 墓に刻む言葉はお決まりですかぁあああ!? 私めの攻撃(ターン)!」


 ニィ……! と耳まで裂けるかと思うほどに口を歪め、嗤う。


「くるぞっ! できるだけ下がれっ!」

 俺は叫んだ。だが、次の瞬間。


 ドウッ! と闇騎士・マハートクラゥが立っていた場所が爆発した。

 (いな)――地面を蹴った衝撃で地表が吹き飛んだのだと理解した時には、俺の視界を遮るように、漆黒の巨体が目の前に迫っていた。


「は、速ッ――!?」

「喰らうがいい! 『百裂剛拳(ハンドレッド・ゴイン)』! はぁああああああああっはぁあああッ!」


 ――なっ、なにぃいいい!?

 意外にもそれは単純で真正面からの攻撃だった。キュドドド……! と、超速度の拳が連続して叩き込まれる。巨漢の闇騎士というイメージから、邪悪な魔力混じりの攻撃を想像していた俺だったが、まるで違う。パワー。御託(ごたく)を抜きにした完全なる物理攻撃(・・・・)の嵐だ。


「ぐっはぁあ……あああああッ!?」

 全身を襲う衝撃は、一発や二発命中しただけでも意識が吹っ飛びそうになるほどの威力があった。まるでボーリングの球を真正面から叩きつけられているような重さと衝撃で、二発目以降はもう、痛みさえも感じない。


★------------------------★

 攻撃命中:254のダメージ

★------------------------★


 ……あれ?


 俺のHPは50も無かったはず。


 ……計算がおかしくないか?


 頭がもう働かない。圧倒的なパワーの前に身体が吹き飛んだ事だけは理解できた。トラックにでも跳ねられれば、こうなるだろうか? 浮遊感で目が回る。このままだと異世界転生しちゃうかもしれない……って、今したばかりだっけか。


「――ジュージッ!」

「いやぁああッ!? ジュージさまっ!」


 何故か、頭上(・・)から叫び声が聞こえた。


 それもそのはずだ。俺は空中高く舞い上がっていたのだ。天地が逆転し、空が真下に見える。まるで、ボロ雑巾のように――――落下。


「……か、はっ!?」


 ズシャァ! という落下の衝撃と肺から出た空気が悲鳴の代わりとなった。視界が真っ赤に染まり、ピ――――という、心音停止を思わせる警告が鳴る。


★------ステータス------★

 ジュージ・ヴァレンタイン

 種族

  ハーフ・ヴァンパイア 16歳♂

 階級

 ・レベル1

 属性

 ・菜食生活(ベジタライフ)

 ・普通生活(ノーマルライフ)

 特技

 ・急速回復(クイックエイド)


 HP  0/58


 状態  死亡


★------ステータス------★


「一撃で死亡とは……なんとも脆い前衛ですねぇ……?」


 それが薄れえゆく意識の隅で聞こえた最後の声だった。


 --みのり……逃げ……


<つづく>


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