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Ep2:善と悪は惹かれ合うもの。


詠唱を始めるとトカゲの身体が紅く輝く光に包まれていく。

その光が、少しずつ身体に染み込むように弱くなっていくと同時に、トカゲの身体が膨張する様に膨らんでいく。

トカゲは少し苦しそうに悶えるも、暴れたりはしなかった。

光が収まっていくと、膨張していた身体が少しずつ収縮していき、ある一定の大きさで安定する。


全ての変動が収まった頃には、トカゲの身体は大きく変わっていた。

乾いた土色だった鱗は、少し黒っぽくなり、身体も一回りほど大きくなって35cmほどになっている。元が小さいから…。クリッとした目は、その存在感を強め、鋭く尖った爪と牙はその力強さを体現していた。


「よし、一応上手くいったな。あとは、名付けだが……」


鑑定スキルで名前を見てみると、リトルアースドラゴンとなっていた。

アースドラゴンとは、地を這うドラゴンの種で最強とされる種族。リトルではあるが、その種族と関連した種族になったようだ。


「名前は……うーん、単純にリアドラなんてどうだろうか?」


リトルアースドラゴンでリアドラ。シンプルでいいと思うんだけどなー。よし、決定でいっか!


「じゃあ、お前の名前は今日からリアドラだ!」


「ガァウ!」


どうやら気に入ったらしい。進化する前はあんなに怯えていたのに、進化した後は結構フレンドリーなのなリアドラさん……。


「よし!じゃあ、まずはリアドラの戦闘訓練だな!」


「ガァウア!」


「おぉ!やる気だな!」


と、その前にステータス偽造スキルで天職を書き換えておく。書き換える職業は前にも言っていた魔物使いだ。お、魔法を結構使ったから魔力値が少し上昇した様だ。


「んで、戦闘訓練だけどやっぱり戦うなら魔物だよな!」


魔物には例外なく魔石もしくは魔核がある。魔石と魔核の明確な違いはあまりないが、認識としては魔素濃度の薄いゴツゴツした石見たいなのが魔石で、魔素濃度が濃く丸い宝玉の様なモノが魔核だ。魔石は大抵が黒く、透明度によって魔素濃度が決まる。ある一定以上の魔素濃度を持つ魔石は、自然に魔核へと変化するのだ。ちなみに、魔核の色はその魔物が持つ魔力の種類によって変わる。種類と言っても血液型の違いの様なモノでどれがいいとかはないのだが。


その魔石や魔核を持つ魔物は例外なく魔力を帯びている。なので魔力探知のスキルでその位置を正確に把握できるのだ。

魔力探知を発動するとすぐに三体ほど反応が見つかる。魔力の濃度からしてそこまで強い魔物ではないだろう。


「よし!行くぞリアドラ!」


「ガァウ!」


リアドラは元気に返事をすると俺の肩によじ登って来る。

あ、俺が歩くのね。自分で歩けよ。

まあ、筋トレにもなるからいいんだけどさ。


すぐに魔力を身体全体に馴染ませるように広げ、細胞の一つ一つを活性化させるイメージで巡らせる。

これは身体強化の術であり、魔法やスキルではない。ただ、魔力で身体を纏って強化しているだけなのだ。

化学で例えるなら、魔法は魔素を化学変化させて使っているイメージで、身体強化の様なスキルは魔素を変換せずに使うのだ。


身体強化の準備が整い、筋力などが強制的に底上げされた身体を軽く動かしてみる。デコピンで木に穴が開いたな…。今回は初めてだったので時間がかかったが、理想は目に入るゴミに対して咄嗟に瞼が閉じるように、使おうと思ったら一瞬で発動できるレベルにはなっておきたい。


「じゃあ、リアドラ。しっかり掴まっとけよ!」


思いっきり地を踏み付け、前への推進力へとする。

100mがほんの2、3秒で過ぎて行く。酔いそうだ……。

と、視界数十メートル先にクモ型の魔物が見えてきた。


「よし、あれだな!」


鑑定によると、名前はクラウドスパイダーと言うらしい。全長40cmほどで、リアドラよりもデカい。ステータスはリアドラの方が上だが、体格差や数では劣っている。まあ、勝てないことは無いだろうが、勝ててもギリギリだろうな。


「よし、リアドラ。戦ってみてくれ。」


「ガァウウ!」


リアドラは返事をする様に短く唸り、肩から地面へと滑り降りる。

脚が地面に着くと、リアドラの身体が淡く輝き出す。何かスキルを使っている様だな。

輝きはすぐに収まり、リアドラの身体が少し大きくなる。先ほどまで35cm前後だった身体は、1m程にまで膨れ上がり、牙や爪も長く伸びている。確か鑑定のスキル欄に、"体格操作"ってのがあったな。スキル名的にもそれだろう。体格を操作するって言うならもっと大きくも小さくもなれるんだろう。便利だ。


「ガァァアアア!」


体格での不利を覆したリアドラは、今度はその体格の大きさを利用してのしかかる様にクラウドスパイダーを襲う。

高い位置から振り下ろされる爪は一匹のクラウドスパイダーを一撃で縦に両断し、風を切る速さで振るわれる硬い尻尾は、もう一体のクラウドスパイダーの頑丈な外骨格をいとも容易く叩き割る。

最後の締めとばかりに吐くブレスは、最後の一体だけではなく、すでに死んでいるクラウドスパイダーの死骸をも炭へと変えてしまった。


うん、素材は残しておいて欲しかったんだけどな…。


リアドラは思っていたよりも強かったらしい。その後も数匹の魔物を倒したのだが、どれも数秒の戦闘で終わってしまっていた。


「お、リアドラのレベルも少し上がったっぽいな。」


鑑定で調べてみた結果、魔物化した当初はレベル3だったものが、二つ上げってレベル5になっていた。


「ガァウガウ!」


うんうん、リアドラも嬉しそうだ。

勉強と剣術の鍛錬、リアドラの戦闘訓練は毎日の日課にすべきだな!







それから4日ほど経った。

勉強は順調で、昨日でようやく本を一冊読み終わったのだ。

ハリー・◯ッターの原本で考えてみて欲しい。ある程度知っている言語だとしても計4日で読んだのだ!凄い成果だ!てか、なんで魔王なのに字が読めないんだよ前世の俺!いや、魔族語なら読めるとかそう言う問題じゃなくてさ。覚えるの面倒くさいんだよ!面倒くさいんだよぉお!


と、こんな感じだ。


剣術では父さんの剣撃を連続で十五撃まで受けられる様になった。当分の目標は何撃受けても木刀を落とさない事。最終目的は、父さんの赤い短髪を血で更に赤く染める事だな。精進しよう。


リアドラは、最近一人で訓練をしている様だ。この前見てみたら更にレベルが上がっていた。とりあえず、人の気配を感知したら小さくなって身を潜める事と、人型の魔物は襲わない事、格上の敵に挑まない事を約束させて自由にさせている。食事も自分で調達している様だし問題はないだろう。

訓練は大抵、朝から昼、夕方に掛けて行っているようで、夜中には気付けばベッドに潜り込んで一緒に寝ていたりする。ちょっと可愛い。


そんなこんなで充実した日々を送っていると、ある噂を耳にした。

母さんがご近所さんのマーリアおばさんと話している時に耳にしたのだが、どうやら最近、森の方で激しい戦闘の痕や、食い荒らされた魔物の死骸などが多数発見されたらしい。

村では何かの魔物の強力な個体がいるのでは無いかと噂されており、今度、村の狩人が総出で調査に向かうそうだ。


「だから、森は危ないの。絶対に!絶っ対に!森には行っちゃダメよ、ヒロト!」


と、母さんに注意された。

村に害をなす魔物がいるのなら退治してしまうべきだろう。そう思って策を考えてはみたが、よく考えるとその正体はリアドラである確率が一番高いんだよな……。

とりあえず、一度森を探索してみてから考えるか。顔がバレないように、仮面とか作っといた方が良さそうだな。


今は父さんとの朝の鍛錬も終わり、さっきまで父さんの書斎で勉強をしていたらお昼前になっていた。


「ママ〜!お昼ごはん……」


リビングにに来てみると誰もいない。キッチンにも母さんの姿はなかった。


「あれ?どこいったんだ?」


そう思い、家の中をうろうろしていると慌ただしくマーリアおばさんが入ってきた。


「マーリアおばさんこんに……」


「あぁ!ヒロトちゃん!ちょうど良かったわ!ママが大変なの!」


「どうしたの…?」


「生まれるのよ!赤ちゃんが!今私の家で準備に取り掛かっているの!ヒロトちゃんもいらっしゃい!」


マーリアおばさんに腕を強く引っ張られ、家の外へと連れ出された。

ちょ、マーリアおばさん!靴履いてない。俺靴履いてないよ!







ほんの十数メートル先のマーリアおばさんの家には1分とかからず着いた。

中に入ってみると陣痛で苦しむ母を、数人の近所の大人たちが励まし、助産の準備していた。

うちの村には医者は居らず、分娩には村の大人たちで取り掛からなくてはならないのだ。

分娩中は常に回復魔法をかけ続けるから安全だとはいっても、設備が心許ないと感じるのも前世の知識があるが故だろう。


暫くしてから、他の村の人に呼ばれて父さんが部屋に入ってくる。


「生まれるのか!?ルーシエ!男の子か、女の子か!?」


落ち着けよ父さん。まだ生まれてないのに分かる訳ないだろ……。

俺に続いて二度目だと言うのに慣れないものなのだろうか。父さんは慌ただしく母の側へと駆け付け、その手を握っている。



その後、赤ん坊は無事に生まれた。

性別は女の子。大きな産声を聞いた時は男の子かと思ったけど妹でした。

うん、顔シワシワだけど可愛い。

早く目開けないかなー。確か生まれてから二週間前後だっけ?待ち遠しい。お兄ちゃんの顔早く覚えてくれると良いんだけど。


「ほんと可愛いな……。リノア〜、ヒロトお兄ちゃんだよー!」


出産から一晩経っているとはいえ、まだ生まれたばかりの赤ん坊にそんな事喋りかけても伝わらないのは知っている。けど、なんか喋りかけたくなるじゃん!分かる?分かるよね!

まだ始まったばかりの妹の人生を考えてみると期待に胸が膨らんじゃうよ!将来は絶世の美女なんだろうな!少しだけ生えた髪は父に似て紅い。赤髪は気の強そうなイメージがあるけど、リノアはきっと優しくて正義感の溢れるいい子に育ってくれるだろう!そう信じてるよ!お兄ちゃんは!


あ、そう言えばまだ鑑定してなかったな。リノアの天職ってなんなんだろ?気になる。

そう思い、すぐに鑑定スキルを発動する。


名前はリノア・ウィルベルク。性別は女の子。ステータスはまだ低いな。天職は……


「!!?」




天職:勇者



誤字脱字があれば教えていただけると嬉しいです!


あと、なんでもいいんで感想などでアドバイスも募集しています!

ボケにはツッコまず、ボケを上乗せしていくスタイルです。

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