憧れの結たん……
15分後、俺はスーツ姿で部屋の中央に仁王立ちしていた。
いや、だってあれじゃん?
憧れの二次元に行くんだからこれくらいの格好してたいじゃん?
四年ぶりくらいに着たスーツは、何故か息苦しさを感じた。
「なんでスーツなんか着てるんですか……似合ってないですよ?」
声がして前を向いてみると、俺の好きなアニメのお気に入りのキャラクターが前に立っていた。
「え……あ、あ……」
動揺のあまり、声が言葉にならない。
自分の心臓の音が耳に届く。
驚いて驚いて驚いて驚いて驚き過ぎて………
涙が出た。
それも、大量に。
そして俺は、彼女に抱きついてこう言った。
「やっと会えたね、結ちゃん……!!!」
「真君、私も会いたかった……!……なんてなるかあああああああああああああ!!!!!」
物凄い力のこもった右ストレートが、俺の左頬にクリーンヒットした。
歯が折れた。
「いってええええええええええええ!!!!!」
「黙れブサイク!近寄るな!!!」
何だこのキャラ崩壊……
あ、ブサメン引きニートの扱いってこんなものなのかな……
外出てないから分からん。
「結たん……アニメと違って毒舌なのね……」
「黙れ黙れ黙れ!!!何が結たんだ引きニートの童貞ブサイクが気持ち悪い事言ってんじゃねーよ!!!」
「毒舌って言うかただ口悪いだけじゃねーか……詐欺かよ!!!」
アニメの結ちゃんはもっと清楚でこんなビッチみたいな感じじゃなかったのに……!
「誰がビッチだこの童貞が!!!私は処女だ!処女!!!」
「俺ビッチなんか言ってねえぞ!!!何言ってんだビッチ!!!」
考えてはいたけど……
「考えてたでしょ!ビッチだって!」
「え、結たん、心が読めるの?」
え、マジ?このビッチたん心読めるの?
「誰がビッチたんだ!!!」
またもや右ストレートが左頬にクリーンヒットする。
歯が折れた。
「やっぱ読めるんだ!」
「まあね。私だけじゃなくて、二次元の住民は全員、三次元の住民の心が読めるわ。」
「へ~……ってええええええええええええええええええええええええええ!!!!!」
思わず俺は近所に響き渡るような大声で叫んでしまった。
完全にキチガイだと思われたな……。
あ、キチガイだったわ。
「マジかよおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!じゃ、じゃあ、俺が結たんで抜いてたのも……」
「知ってたわよ……このクソ豚!!!」
うわああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!
俺の知られてはいけない事ランキング第5位が知られてしまうとは………
迂闊だった………