7話 ~小説作成~
小説コンクール。
その締め切りの日が一刻、一刻と近づいていく。
とても不安だ。
今まで誰にも見せたことがない。
見せるはずがない。
恥ずかしいから。
こんなの見せれるわけないんだ。
というか、俺の周りに見せる人なんていない。
そうも分かってたし…。
俺は、このファイルを誰にも見せたことがない。
でも、未来さんは普通に覗いてきた。
「泰助は?」
後ろから大きい声。
「うわぁ、吃驚した。未来さん、急に話かけないでくださいよ!」
そう怒鳴る俺を無視して、未来さんは俺のパソコンをのぞき込んだ。
「あっ、泰助もうだいぶ書いてるじゃん」
未来さんがそう言った。
その声に「えっ?」とみんな反応したのは想像してたとおりだった。
「えっ、泰助もう書いてるのか?」
そう言ってきたのは、やっぱり、雷鬼だった。
「うん…一応」
「早いな」
「うん…高校のときもこういうの考えてたし…」
「ふーん…」
?
なぜだか、「ふーん」と言った雷鬼の声がいつもより低かった気がした。
「どーいうの?」
そう俺と雷鬼の話を割って入ってきたのは亜歌音だった。
「って言っても大したもんじゃないですよ?」
「いいの!どーいうの?」
亜歌音は全く引かずそう言った。
「えっと…。中学生14人が上っ面だけのヒーロー。悪い大人達を相手に戦う話です…」
「へぇ…面白そう」
そう言って亜歌音は自分のパソコンに身体を向け直した。
次の日部室に行くと、みんなもう自分の話に夢中で話なんかなかった。
ちょっと話に行き詰まると隣とは話すけどとにかく俺は話さなかった。
帰るときも、都夢技と話さなかった。
都夢技もなにやらブツブツ言ってた。
どうやら、都夢技も小説の設定を考えてるようだ。
家に帰って俺は都夢技に「バイバイ」だけ言って部屋に入った。
俺の部屋は、205で都夢技の部屋は204。
隣同士。
って言っても、薄っぺらい壁が一枚あるだけ。
隣が起きてるか寝てるかぐらいはすぐに分かる。
俺は、パソコンを起動させ、小説の続きを書く。
ネタはたくさんある。
書きためたネタ帳がある。
書きためた小説がある。
そっから発展させればいい。
そう思い、俺は、押し入れから奥の方に入れた段ボールを引っ張り出した。
都夢技はもう寝てる。
あいつはいびきがうるさいからすぐに分かる。
203の人も迷惑だろうな…。
そう思いながら、段ボールの中をあさる。
懐かしいものをいっぱい掘り出しては読む。
なんか、いいネタがあれば、パソコンに書き写す。
最近は寝れてたな…。
大学に入ってからは、寝れてたな…。
いつでも、寝れなかった。
目を閉じても、眠れなかった。
まぶたを閉じるとうつるのはいつもあの光景だった。
最近は平気だ。
まぶたを閉じるといつも『文研』の人がうつる。
だから、安心だ…。
俺はゆっくり眠りにつける。
そう思って、俺はパソコンをシャットダウンさせ、
ベットに入り、ゆっくりと目を閉じた。