表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/13

3話 ~入希~

次の日、俺と都夢技は、約束通り、5時に部室前にやってきた。

「みんな遅いね」

確かに遅い。もうとうに5時は過ぎてる。

短針は5を、長針は4を指していた。

「やーゴメンゴメン。遅くなっちゃった」

そう言って来たのは、未来さんだった。

「なにかあったんですか?」

「いや、なにも?」

続けて、結衣さん。リリィ、ユウさん。

「あれ、みんなもう来てる」

「なんで、部室前にいるの?鍵開いてるでしょ?」

「うん…俊太がいるはずだけど…」

そう言って、3人は俺らより早く部室へ入った。

みんなもう来てるって…結衣さんどんだけマイペースなんですか…。

「なんで、みなさん5時って言ったじゃないですか…」

俺がそう言うと5人は見合わせて、ニヤァと笑った。

不気味だ。

「やっぱ、いい子だったでしょ?」

「うん。想像通りの子だね」

「おもしろかった!」

俺らがキョトンとしてると、未来さんが口を開いた。



「これは、まぁ、一種の入部審査みたいなもんだよ」

入部審査…。

「やっぱり、泰助は律儀だね」

未来さんは続けてそう言った。

「なんでですか?」

俺がそう言うと、未来さんはさらに続けた。

「時間を守った」

いや、そんなの当たり前でしょう。

「いや、それだけじゃないよ?私が来たとき、「なにかあったんですか?」って言ったよね?」

「はい…」

「普通、「なんで遅れたんですか?」か「遅いじゃないですか」が打倒じゃない?」

よくよく考えてみれば分かる。

俺はなんでそんな言葉を選んだか分からないけど、それで入部審査は合格だったらしい。

でも…

「あの、もし、私たちが遅れてきてたらどうしてたんですか?」

俺が気になっていたことを、都夢技が聞いた。

「ん?簡単だよ。入部しても仕事を回さない。無視状態だよ」

なっ!

「……そ、そうですか…」

都夢技は顔が青くなっていた。

まぁ、そんなこと言われたら、そうなるよなぁ。


俺たちはそのまま昨日の呼び込みスペースへと向かっていった。

「我が文学研究会は、日頃から文学を学び…」

と未来さんの固い演説から始まり、

「昔々、あるところにおじいさんとおばあさんがすんでおった…」

童話の朗読。

サークルの活動内容などを演説しまくった。




「はぁー。疲れた」

そう言って、机に手をつくのはユウさん。

ずっと、会誌を配ってたらしい。

「もう、死ぬぅー」

そう言って壁にもたれるのはリリィ。

ずっと、『桃太郎』を読んでたからかな…。

「のど乾いたー」

そう言って、ポカリを手に持つのは未来さん。

ずっと演説してたからなぁ。

その死闘の結果、入希は13人というありえないことになった。


「13人って、この部室でどう活動すんの?」

「知らないよ…。会員減らすしかないでしょ?」

「そーだよな…」

3年生の会話。

そうだよな…。13人って…俺たち含めて、15人だろ?

やばいんじゃないのか?

「入部審査、する?」

そう言葉を発したのは亜歌音だった。

「おぉ!」

「いいじゃん」

その亜歌音に対し、乗ってくる3年生。

思いつかなかったんだ…。

「んじゃ、また明日っ!」

亜歌音とリリィはそう荷物をまとめて部室を出て行った。

「あの、いいんですか?」

「あっ、いいよ。帰って。邪魔になるだけだと思うから」

結衣さんの言葉はキツイです。

これで、無自覚なんだよなこの人は…。

恐ろしい人だ。

「じゃ、都夢技、行くよ」


そう言って、俺と都夢技も部室を出た。

「面白い人たちだね」

「本当だよ。あの人達こそ小説の登場人物に出来るね」

そう言って、笑いながら俺たちは、アパートへ戻った。


本当にあの人達は面白い。

もう、きっと大丈夫だ…。


そう安心して、俺は、目を閉じ眠りについた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ