10話 ~入院~
ん…。
俺どうしたんだっけ…。
「た、泰助!」
みんななんでそんなに驚いてるんだ…?
あぁ、そうか…俺はあのとき倒れたのか…。
「大丈夫?」
みんなの横にいる白い服の男の人…。
あっ…医者か…。
「多分、大丈夫です」
俺が先輩に向けてそう言うと…
「大丈夫なものか!なぜ、病院に来なかったんだ君は!」
と医者が俺に怒鳴った。
「眠れないのは高校の時からですし、大丈夫かなって」
先輩達は聞いてる。
このこと聞いてる。
話していいのかな…。
都夢技もなんだか微妙な顔してる。
「高校生から…」
亜歌音の声。
心配してくれてるんだ…。
ありがとう。
「もういい。とにかく君は寝るしかない。一週間はココで寝てもらうよ」
一週間…
「い、一週間?」
「なんだ…」
「もっと早くできませんか!」
「何を言うか、この年だしやることがいっぱいあると思って最短にしたんだこれ以上は
無理だ」
医者はそう言った。
一週間は無理だと。
一週間はここから出られない。
みんなより、スタートが遅れる。
夢から少し遠ざかる。
みんなは夢に少し近づく時間俺は生きるために寝てるのか?
「泰助…」
未来さんは俺の気持ちを理解したのか背中をさすってくれた。
「ま、泰助の分も頑張ってくるよ!」
「はい」
俺はそう返事して布団に潜った。
何故か涙が出そうでその顔をみんなに見せたくはなかった。
「んじゃ、泰助バイバイ」
「じゃーな」
みんなそのまま帰って行った。
病院だって関係ない。
俺は眠れない。
布団に潜ったからって、何も起こらない。
「お前さん」
そう口にしたのは、さっきの医者だ。
「泰助です」
「そうか。泰助。君はなぜ寝れなくなったか、私に話してはくれんか?」
俺が寝られなくなった理由…。
誰にも話したことがないこの話…。
この人に話しても大丈夫なのか?
医者すらも、俺のことを見放すんじゃないだろうか…。
「実は------------」
俺は、あの医者に全て話した。
全て。
「…そうか…、泰助、君も大変だったね。君は頑張ったな」
そう言って、その医者は、病室から出て行った。
もしかしたら、あの医者は、この病室にもう来ないかも知れない。
もう、誰も来ないかも知れない。そんな不安が俺に押し寄せてきた。
だから、また俺は布団に潜り込んだ。
そして、しばらく時間がたった。
「新垣さん、腕出してくれる?」
腕?
女の人の声だった。
布団をめくると、ナースだった。
いや、看護師と言えばいいのかな?
「あの…どうするんですか?」
「不眠症の患者が入院したからって眠れるわけがないじゃろ」
そう喋るのはさっきの医者だ。
もう一度、俺の病室にこの医者は来たんだ。
見放したわけじゃない…。
「じゃあ…」
「睡眠導入剤だ」
睡眠導入剤…。
睡眠薬か…。
眠れるのか?俺は薬で眠れるのか?
高校の思い出を思い出さずに眠ることが出来るのか?
そんなこと思ってるうちに看護師は俺に点滴の針を入れる。
眠たくなってきた…
おやすみ…
そのあと、俺が目覚めたのは、一週間後だった。