序章 ~始まり~
なんとも不思議なこと。
この俺の名がこんなに有名になるなんて…
って、言っても、俺が望んだことではあるんだけど…。
あの出逢いが俺を変えた。
あの出逢いが、俺をこの道へと導いた。
あの日々が俺の中で今も輝いてる。
今はもう会えない君は、いま、どうしているんだろう。
今はもう昔の話。
あの日から、何年が経ったのだろう…。
全ては、あの日から…
□■大学入学式■□
本当に面倒だ。
大学なんて、行きたくなかった。
本当に面倒くさい。人付き合いなんて好きじゃない。
勉強も好きじゃない。俺は、ただ1人でひっそりと暮らしていたいだけなのに…。
どうして、こうも俺を振り回すのだろうか…。
「泰ちゃーん」
幼馴染みの坂上都夢技がこっちを向いて手を振っている。
「はぁ…。お前は…恥ずかしくないのか?大学生にもなって…」
「えっ?」
俺は、恥ずかしい。
大学生にもなって泰ちゃんなんて呼ばれたくないし、こんなことで目立つのも嫌だ。
「せめて、泰助にしろって言ったろ」
「だって、泰ちゃんは泰ちゃんでしょ?」
疲れた。もう、勝手にすればいいと思う。
自分から言ったくせに、俺はすぐに諦めた。
「ね、泰ちゃんは学部どこだっけ?」
自分から誘っといて、それも知らないのか…こいつは…。
「お前と同じ、文藝学部だよ」
本は昔から好きだった。都夢技ともその繋がりだ。
こいつとは、小学校からの付き合いで…。
いつも、いつも、俺を振り回す。
本当に…いい加減にして欲しい。
俺だって、好きでこいつといるわけじゃない。
逃れられないんだ…。
親同士が仲いいし…。
全く…たまったもんじゃないよ。
少女漫画だと、幼馴染みってのは1つのヒーローとヒロインだろ?
そんなlove的な展開、こいつとは絶対ありえない。
入学式なんだ。
式が終わったら、すぐに帰れる。
式が終わりホッとしてる俺に都夢技はこう言い出した。
「ね、泰ちゃん。サークル見に行かない?」
また、こいつは…
「お前さ、俺が人付き合い嫌いだって知ってるだろ?」
「うん」
都夢技のキョトンとした顔。
だから、嫌になる…。
「はぁ…。分かった。行くよ」
俺は、すぐに諦めて、席を立った。
「わーい」
都夢技は喜んで跳ね出した。
本当にコイツの行動にはイラッとくる。
『漫画研究会』、『ロボット研究会』、『秋本住戸研究会』
結構たくさんあるんだな…。
「泰ちゃーん。これ」
そう言って、都夢技が指さすもの…
『文学研究会』
これが全ての始まりだった。