置かれた場所で咲けとは言うが 2
何も考えずに書けるテンション高めの主人公なので、ついつい書いてしまいました。
念の為、シリーズ化しておきますm(_ _)m
一応、前作の続きの話的なものとはなりますのでご注意を。
先日無事(?)異世界転生を果たした、わたくし大根でございます。
ただ今、飼い主から朝ご飯のお水をもらっております。
本日も我が飼い主の顔面は麗しく素晴らしい事をここに報告しておきます。
「¥&▲」
しかし、低めのイケボで何を言ってるかはまだわかりません。
学習しようにも我が飼い主は寡黙というか、あまり独り言を洩らさないためなかなか難しいのです。
なんて、脳内で誰かへ報告するようなナレーションを流していた私は、飼い主へのアピールで軽く大根菜部分にあたる葉を揺らしておく。
飼い主は満足気に目を細めて微かに微笑んでくれたので、私の大根としての反応は正解だった模様。
「■■✕▲▲◯」
珍しく飼い主が長めの単語を口にしてくれたが、相変わらず聞き取れる気はしない。
ただ耳……はないけど、耳的な部分が喜んでる。
顔面も素敵な我が飼い主は、声もイケボなので出来ればもっとたくさん声を聞きたい。
そんな私の願いが通じたのか、いつも飼い主が入って来る方の扉がノックされ、そこから男性が入って来る。
飼い主は二十代ぐらいに見えるが、入って来た男性は飼い主より年上の渋いイケオジだ。
「□▲◯」
声も見た目通り渋くて、こちらも素敵なお声だ。
飼い主とイケオジが会話を始めたため、先ほどのささやかな願いは早速叶ってしまった。
私はやはり幸運な大根のようだ。
食べられるまで大切に育ててもらえる上、こんな素敵な人達を見て過ごせるとは……。
これで美女か美少女まで揃えばさらに幸福度アップするんだけど、さすがにそれは欲をかきすぎか。
えへへと心の中で笑いながら葉を揺らしていると、イケオジの目がこちらを見る。
イケオジが口を開いて何事か喋ろうとするのと同時に、私の脳内に響く、もしかしたらと期待していた声。
『全言語翻訳スキルを獲得しました』
「旦那様、あちらは?」
「(翻訳来たぁ!)」
突然イケオジの言葉がわかるようになり、驚き混じりの歓喜の声を上げながら葉をゆっさゆさと揺らす私。
「……マンドラゴラのはず、だ」
飼い主の言葉もきちんと翻訳されましたよ、奥さん!(誰)
「はず、とは?」
「……少し、おかしい気がする。少し動きすぎだ」
「確かに、ずいぶんと活きがよろしいようで……」
「枯れるよりはいいのだが……」
突然の翻訳スキルの獲得に喜んでいた私は、会話をする二人の視線が自分へ注がれている事にやっと気付く。
シリアスな雰囲気で話していた二人だったが、会話の中心は窓辺の大根である私だったようだ。
注がれる視線が照れ臭くて、よじよじと葉を捻っているとさらに視線が強くなった気がする。
「……マンドラゴラとは、こんな愛嬌のある動きをするのもので?」
「……私に聞くな」
てれてれしていた私は二人の会話を聞いて、ぱたりと葉を揺らすのを止める。
聞きました? 奥さん!(誰)愛嬌あるって言われちゃいましたけど!
脳内ご近所の奥さんへ報告をしていた私は、かなり経ってからふとある一言に引っかかりを覚えて、自らの大根ボディを見下ろす。
本日も可愛らしい色味の大根ボディだ。
どうせなら色白肌に緑が映える青首大根が良かったけれど、贅沢を言っちゃいけない。って、問題はそこじゃない。
気のせいじゃなければ、私の飼い主が私の事を『マンドラゴラ』って言ったような?
マンドラゴラってあれだよね。
私でも知ってる、あれ。
クネクネした人の形っぽい根菜なファンタジー植物で、しれっと顔もついてて、抜いたら大絶叫する少しうるさいやつ。
え、私あれなの? マジですか? 抜かれたら叫ばなきゃいけないの? あれなんて叫ぶの?
でも、色は何かポップで可愛い感じだし、ボディも私の知ってるマンドラゴラより丸っこい……あ、でも、ちょっとゆるキャラっぽい人の形に見えなくもない? ほとんど埋まってるからわからないけど。
私の知ってるマンドラゴラの知識なんて、某ハリーさんの映画でちらっと見たやつだからわかりようがないんだけど、そもそもの話。
ゆっさゆさと葉を揺らして悩んでいると、飼い主のご尊顔が近づいてきて魅惑(笑)のボディを突かれる。
「(キャー、えっちー)」
抜かれていないので悲鳴を上げる必要はないと思うが、何となく上げておく。
飼い主とイケオジには聞こえてないんだけど。
ついでに葉を使って体を覆い隠すような動きのオプション付きだ。
「…………すまない」
なんともいえない表情になった飼い主から、ちょっと困った感じで謝られた。
悪ノリした私も悪かったと思うので、気合を入れてぶんぶん頭(葉)を揺らしていると、なだめるように飼い主が頭(葉)を撫でてくれる。
ぎこちないながら優しい仕草と触れ方が嬉しくて身悶えしてたら、何かポンッと気の抜ける音が頭上から聞こえて、飼い主の目が驚きで見張られる。
「おや、花が……」
「……咲いたな」
イケオジと飼い主の発言から何が起きたかはわかったが、我が体ながら意味はわからない。
「ちょうどマンドラゴラの花が必要だったんだが、もらっても構わない……のか?」
「旦那様の物なのですから構わない……とは思われますが」
飼い主とイケオジが揃って屈んで私を覗き込んで、そんな会話をしながら私を窺うように見てくる。
その視線を受けながら、私は感動に葉を震わせる。
かなり当たりの転生先だと思っていたが、まさか植物相手に『花を取っても構わないか』なんて気にしてくれるなんて!
心の中で叫びながら、ロックコンサートかよと突っ込まれそうな勢いで頭(葉)を縦に振る。
私の花で良ければどうぞどうぞ! って事で!
「……構わないそうですよ」
「そのようだな」
苦笑いながらもふわりと柔らかい微笑みを浮かべた飼い主にぽーっとなっている間に、私の頭に咲いた花は飼い主の手の中へと。
あまりに優しい手つきに痛みなんてなかったよ。
正直なところ、髪の毛を抜かれる程度の痛みは覚悟してたんだけど。
そして、飼い主の手の中にある花は、可愛らしいピンク色のタンポポにしか見えないという……。
マンドラゴラの花って変わってるね。
──それとも、やっぱり私異世界産大根なのかな。
「…………これは本当にマンドラゴラ、なのか?」
イケオジが去った後、一人になった飼い主が私の花をしげしげと眺めて、心底不思議そうに呟いているぐらいだし。
●
先日無事に全言語翻訳スキルなる素晴らしいものをゲットしたわたくし、自称大根、他称マンドラゴラです!
「水よ」
「(おはよう、飼い主、ありがとー)」
今日も見目麗しい飼い主から水をもらい、元気にゆさゆさと葉を揺らして朝の挨拶と感謝を告げておく。
ずっと「おはよう」的なのだと思っていた朝一の飼い主の一言が、私へ水をあげるための呪文? 的なやつだったのはちょっと寂しい。
でも、伝わらないとわかっていても毎朝と毎夕ちゃんと挨拶は続けている。
まさにおはようからおやすみまで!(違う)だ。
そして、美人は三日で飽きると言うが、あれは絶対嘘であると私はここに宣言しよう!
何故なら私は未だに我が飼い主の美しさに飽きる気配はないからだ。
朝の気だるげな飼い主も、夕暮れ時のお疲れな飼い主も、ちょっと寝惚けてる飼い主も素敵だよー!
これが推しが出来るという感覚かと、前世で未体験だった推し活というやつを異世界で満喫出来るとは、素晴らしい人生……じゃなくて植生(?)だ。
今日は外へ出る用事はないらしく私へ水をくれた後、飼い主は本棚から取り出した本を手にソファへと腰かける。
これはより多く飼い主を眺めるチャンスだ。
全言語翻訳スキルを獲得した私としては、飼い主が何を読んでいるのか気になってしまい、葉を左右に揺らして手元を見ようとする。
だが、視力的には本の文字はそこそこ見えているのだが、角度的に表紙は見えない。
それでも頑張ってゆさゆさしていたら、本を読んでいた飼い主が突然ハァとため息を吐いて、ソファから立ち上がって窓辺の私の方へ近づいて来る。
今日はいい天気だから日差しがキツくてカーテン閉めるのかと見守っていると、私の体が住処の植木鉢ごと宙へ浮く。
ついに私も魔法を使いこなせるように! ……ではなく、飼い主が植木鉢を持ち上げて運んでくれているのだ。
これはついに食材になる日が来たのか覚悟を決めたのに、置かれたのは飼い主が腰かけていたソファの前に置かれているローテーブルの上だ。
「……鬱陶しいからここでおとなしくしていてくれ」
困ったようななんともいえない表情をした飼い主からそんなお言葉をいただき、目の前のローテーブルには植物図鑑っぽい本が開いて置かれる。
「(これを読んでろということだね、飼い主!)」
置かれたのは植物図鑑っぽいというかまんま植物図鑑だったようで、綺麗な色付きの植物の絵と文字が載っている。
ゆっさゆさと葉を揺らして開いて置かれている植物図鑑を読みながら、読書をしている飼い主の姿をチラ見する。
読んでいる本のタイトルは『魔法理論どうのこうの』……目が滑る。
読む事は出来たけど、私には単語が難しくて理解が出来なかったというやつだ。
うむうむ、私の飼い主はとても頭がいいようだ。
本棚にびっしり詰まってる本も同じような小難しいタイトルばっかだし。
しかも、イケオジは飼い主を『旦那様』って呼んでたからね。つまりは、使用人がいるような身分でもある、と。
飼い主は貴族とかなんだろうかと悩みつつ、せっかく飼い主が置いてくれた植物図鑑を眺める。
元の世界の植物に似たような物もあるが、ポーションの材料になるとかドラゴンの好物だとか、スライム避けになるとかファンタジーな説明文があってかなり面白い。
開かれていたページを読み終えてしまい、葉で捲れないかとゆさゆさしていたら、飼い主がノールックでページを捲ってくれた。
気配りも出来る飼い主素敵すぎる!
そのまままったりと読書を続けていると、銀のお盆を手に持ったイケオジが部屋へ入って来る。
ノックしたんだろうけど、どうやら私が本に夢中で気付かなかったぽい。
飼い主は驚いた様子もなくお茶を入れてもらってるし。
美麗な青年に渋いイケオジがお茶を差し出す。
「(絵になるなぁ)」
絵画にでもしたい尊い光景に思わず声に出してしまうと、イケオジが私を見て微笑ましげな顔をする。
「ご一緒に読書ですか」
「……視界の端で動き回られて落ち着かなかったんだ」
なんと、あのため息はそういう意味か!
あー、そうだったのか。なんか申し訳ない。
確かにやたらと葉をうごうごしていた自覚はある。
私としての意識が目覚めた直後は動かしにくかったんだけど、今はもう手足のように動かせるから、ついついね。
根にあたる本体(?)の方も動かせるような気がしないでもないが、さすがに自称大根としては植木鉢からの脱出は二の足を踏んでしまう。
他称であるマンドラゴラも歩いたり……しないよね? しちゃ駄目だよね?
見つからなきゃいいか。
かなり悩んだけど、最終的に家の中を見て回りたい好奇心に負けた私がいたりする。
「マンドラゴラとは、本を読むもので?」
「……私が読んでいる本を読みたがっているように見えたんだ」
「さようで……」
そんな会話が飼い主とイケオジの間で行われている事を知らずに、私は葉をうごうごさせて読書を続ける。
最終的に『鑑定スキルを獲得しました』という天の声により、私に新たな属性が付加されるのだった。
いつもありがとうございますm(_ _)m
恋愛要素とか全く欠片もないので、やけに書きやすい主人公です。
凹んでもすぐ復活出来るメンタルつよつよ、ついでに使ってはいないけどチートスキルもゲットして、のんびり窓辺に置かれています。




