光の玉を観察してみた
部屋に浮かぶ光の玉は、数えきれないほどある。
だが、よく見ると全てが同じではなかった。
陽菜はベッドから降り、ゆっくりと室内を歩いた。
「……大きさが違う」
一つ一つは小さいが、微妙に直径が異なる。
発光の強さも揃っていない。
「明るさが強いほど、形が安定してる」
エルザは黙って見守っている。
陽菜は、手を近づけたり離したりしながら観察を続けた。
近づくと、光の玉はわずかに動く。
逃げるもの、寄ってくるもの、反応しないもの。
「外部刺激に対する応答性が違う……」
床に落ちている影を確認する。
影はない。
「実体はほぼゼロ。でも、完全なエネルギー体とも違う」
陽菜は空中で指を止めた。
「場……かな」
エルザ「場、ですか」
「力が存在できる範囲を自分で持ってる。だから形が保たれてる」
一つの光の玉にそっと触れる。
消えない。
「……これは、さっきのと違う」
もう一つに触れる。
こちらは、雪のように崩れた。
「親和性の差、だけじゃない」
陽菜は続けた。
「精霊側にも、性質がある」
エルザ「性質……」
「反応速度、安定性、指向性」
陽菜は、頭の中で即席の表を作っていた。
「低級精霊でも、個体差がある。完全な均質じゃない」
部屋の端に、ほとんど動かない光の玉があった。
他より少し暗い。
陽菜は近づいた。
「……これ、周囲に干渉してない」
エルザ「珍しいですね」
「エネルギーを外に出してない。たぶん、内向き」
そっと触れる。
消えた。
だが、今度は感触がはっきり残った。
「……今のは」
エルザ「?」
「さっきより、はっきり分かる」
胸の奥に、何かが増えた感覚。
「同時に取り込める数、限界があるかも」
エルザは目を見開いた。
エルザ「そこまで分かるのですか」
「仮説です」
陽菜は即答した。
「でも、検証はできる」
視線を上げ、光の玉を見回す。
「低級精霊は、形状・反応性・親和性で分類できる」
エルザ「……学者の方のようですね」
「理科は、観察と仮説と実験です」
陽菜は小さく息を吸った。
「精霊術も、同じ」
その言葉に反応したかのように、
いくつかの光の玉が、陽菜の周囲に集まり始めた。
エルザは静かに確信する。
この少女は、
ただの精霊術師では終わらない。




