街道を整地してみた
馬車が、大きく跳ねた。
「……思ったより、揺れるのね」
エルザ「街道が荒れておりますので」
「舗装、してないから」
ハウエル「石を敷くには費用がかかる」
「石じゃなくていいです」
即答だった。
陽菜は、馬車の床を見た。
「さっきの荒地と違い。地盤が緩い」
ハウエル「水のせいか」
「水もですけど、締まりがない」
馬車は再び揺れた。
「このまま水を撒いても、泥濘むだけです」
エルザ「では、どうすれば」
陽菜は、外を指さした。
「整地します」
ハウエル「……街道をか?」
「はい」
馬車が止まる。
御者が怪訝そうに振り返るが、
男爵が手を上げて制した。
ハウエル「続けよ」
陽菜は、街道の端に降りた。
踏み固められ、えぐれ、
雨水の流れ跡が残る地面。
「まず、粒を揃える」
胸の奥で、
土の精霊が静かに応えた。
陽菜は地面に手を置く。
「耕すんじゃない。締める」
地面が、低く鳴った。
砂と土が混ざり、
空隙が埋まり、
表面が均されていく。
「……転圧されてる」
エルザ「何が起きているのですか」
「人が何十回も踏み固めた状態を、一瞬で再現してます」
ハウエル「水は使わぬのか」
「最後に、少しだけ」
陽菜は息を整えた。
「水。表面だけ」
白い光が、薄く広がる。
水は染み込まず、
土の表層で止まった。
「これで、粉塵も出ません」
ハウエルは、慎重に一歩踏み出した。
地面は、沈まない。
ハウエル「……揺れぬな」
エルザも歩く。
エルザ「足が取られません」
陽菜は、街道の先を見た。
「この処理、一定距離ごとにやれば」
ハウエル「馬車の速度が上がる」
「荷も壊れにくい」
ハウエルは、完全に理解した顔になった。
ハウエル「……街道を整地しよう」
その言葉に、
土の精霊が、かすかに光った。
陽菜は、小さく頷いた。
「条件はあります」
ハウエル「何だ」
「精霊を使い潰さないこと。休ませる時間を作ります」
ハウエル「承知した」
馬車は、整地された街道を進み始めた。
揺れは、はっきりと減っていた。
「……実験、成功ですね」
エルザが言うと、
陽菜は少しだけ笑った。
「生活に使えたら、合格です」
街道の先で、
土と水の精霊が、静かに並んでいた。




