気がつくと異世界でした
重い感触が背中にあった。
柔らかいが、いつもの自分のベッドとは違う。
陽菜はゆっくりと目を開けた。
視界に入ったのは、見覚えのない天井。
レンガ造りの重厚な建物らしく、石材が規則正しく組まれている。
病院でも、ホテルでもない。
「……ここ、どこ?」
身体を起こすと、部屋の中に無数の光の玉が浮かんでいるのが見えた。
白とも青ともつかない淡い光。
理科室で見たプラズマ球を思い出すが、構造が違う。
空気中に浮遊している。
しかも――規則性がない。
好奇心が先に立った。
陽菜は反射的に、手を伸ばす。
指先が光の玉に触れた瞬間、
それは雪のように、ふわりと崩れて消えた。
冷たさはない。
むしろ、微かに名残のような感触だけが残る。
「……消えた?」
一つ消えると、また別の玉が近づいてくる。
まるで様子を窺っているようだった。
「……精霊?」
口にした言葉に、自分で首を傾げる。
そんなもの、知識としてしか知らないはずなのに、
なぜかしっくり来た。
そのとき、部屋の扉が静かに開いた。
エルザ「お目覚めですか?」
入ってきたのは、二十歳くらいの女性。
落ち着いた物腰で、メイド服を着ている。
突然の第三者。
異世界だとしたら、最初の接触相手。
陽菜の頭は一瞬で切り替わった。
「……あなたは?」
エルザ「エルザと申します。こちらのお屋敷でお仕えしております」
「……お屋敷?」
エルザは微笑みながら、室内に漂う光の玉を一瞥した。
エルザ「やはり、もう見えているのですね」
その一言で、確信が生まれた。
ここは異世界。
そして、この光の玉は――
精霊だ。




