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元オタクの動画配信者が結婚して嫁3人の主夫になる  作者: 龍田まや


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33/40

第33話 お義父さんとなる方へ

この問題を解決するキーマンはやはり中川先生だ。

彼に会って確かめることがまだまだある。

しかし、今の俺には怒りの感情が芽生え始めている。

彼との対話の前にこの怒りを鎮めないと。

対話の前に陶芸教室予約しておくか。

土に触れたときのひゃーっとしたあの感覚。

無心になってモノを作れば嫌なことは忘れるだろう。

俺はさっそく明日予約を入れた。



やはり土に触れると何かも忘れる。

頭の中を空っぽにしてひたすら土を練る。

そして細かく紐状にして積み重ねる。

ロクロを廻して形を整える。

この一連の動作。

やはりハマるわ。


「それじゃ出来上がった人から棚に並べて帰ってくださーい」

「先生お疲れ様でした」


作り終えた生徒が順次帰っていく。

全員が帰ったのを見計らって俺も作品を棚にならべた。


「先生、お話があるんですけどお時間ありますか?」

「ええ。大丈夫ですよ」

「その前に先生。お話の前に俺はこれからあなたをぶん殴ります。殴る理由は殴ってからお話します。その理由に納得がいかなければ俺を殴り返してください。いいですか?」


こういうときは何も言わずに相手の顔面に右ストレートをブチかますのが定石なのだろう。

しかし、俺は生まれてこの方ケンカなどしたことがない。

親に怒られてビンタをくらったこともない。

そんな男がカッコよくパンチをクリーンヒットさせるなんてよっぽどの腕っぷしがないと無理だと踏んだ。

なので、これから殴りますよとお伺いを立てた。

下手に避けられてケガでもしたらその後の会話なんて即中止で病院行きだ。


「おかしなことを言いますね。まぁ、いいでしょう。遠慮なくどうぞ」


中川先生は両手を後ろに回して足はハの字にして立ち、目を閉じた。

それを見て俺は後ろを振り返りパンチの空打ちを数回して最終確認をした。


「それじゃ、いきます!」


「ボカッ!」

「グワラゴワシャーーン!」


鈍い音がしたが俺の右ストレートが見事に先生の左頬に入った。

先生は数メートル後ろの棚によろけながら倒れ込んだ。


「見事なパンチですね。格闘技か何かやってたんですか?」

「いえ、アイドル現場でペンライト振ってただけのオタクでした」

「そうですか。それじゃ理由を聞きましょうかね」


俺は倒れ込んだ先生に手を貸して、教室の隅っこに移動して話始めた。


「実はある方から話を聞いたんですが、麦さんの前に交際していた女性とはいつ頃まで関係があったのですか?」

「…ある方とは?」

「それは後々話します」

「…彼女とは麦と出会って付き合い始めてからも関係は続いてました。ですが、このままではいけないと思い、彼女との同棲を解消し、麦と付き合うことになりました」

「それはいわゆる二股ってことですよね?」

「そうですね。男としては恥じるべき行動だと思います」

「別れた彼女とはその後に連絡を取り合っていたのですか?」

「いいえ。別れてからはそれっきりですね。今どこでどうしてるのかさえ分かりません」


彼女が亡くなったこと、そしてその彼女に子供がいて父親の可能性が高いこと、どちらも知らないようだ。

嘘をついてるようにも見えない。

俺は真実を伝える前に佐藤さんが言っていたことの確認を先にした。


「ルナが小学生の頃に運動会があったと思いますが、それに家族で観覧なさってましたよね?そのときにルナと同じ歳くらいの女の子があなたと会話をしたのは憶えてらっしゃいますか?」

「小学生の頃ですか?運動会には毎年応援に来ていたので、それがいつの頃なのか記憶にないですね。随分と昔のことなので」

「麦さんと離婚…というか、あなたが家族の元から姿を消したのはルナが中2の頃で間違いないですか?」

「おそらく…その頃だと思います」


ここから先は先生も知らないことだろう。

その後の話と現状起こっていること交えて話す。


「あなたと麦さんが離婚してからルナは性格が変わりました。正確には一部の人に対してですが。俗に言うイジメのようなことをするようになったのです。あなたと暮らしているときにそのような兆候はありましたか?」

「えっ?…ルナがそんな子に?いや、私と暮らしているときはそんなことをするような子ではなかったです。どちらかと言えば人見知りする子だったので」

「イジメの対象となった子はルナの同級生で、小学生で初めて出会い、中学で再会しました。そして、あなたと麦さんが別れてからルナはその子に対してだけイジメをするようになりました」

「その子って…先ほど話された小学生のときに私が会ったとされる女の子のことですか?」

「ええ、その彼女です」

「それは非常に申し訳ないです。私たちの離婚がきっかけでルナの性格にまで悪い影響を与えてしまって、親として失格です」

「そうではなく、その彼女について何か心当たりありませんか?」

「どういうことでしょう?」

「その子の名前は佐藤アヤです」

「佐藤アヤ!?え?まさかそんな…」

「心当たりありますか?ここから先は未確認ですが、あなたが当時付き合っていた女性も佐藤さんですか?」

「…ええ。その子の名前はおそらく偽名かもしれません。なぜなら私が交際していた女性の名前が佐藤アヤだったからです」

「なるほど…」

「アヤは、私が付き合っていたほうのアヤは今はどうされてるんですか?」

「彼女は随分前に亡くなったそうです。残された子供に父親はおらず施設に引き取られたそうです」

「そうでしたか…。では、子供のほうのアヤ、アヤさんはどうされてるのでしょうか?」

「彼女は現在宮尾家で使用人として働いています。話の流れでお分かりになられたと思いますが、情報提供者は彼女からです」


先生は状況が少し飲み込めてない様子だ。 

俺は簡潔に要点をまとめて説明した。



①佐藤アヤ(親)は亡くなっている


②佐藤アヤ(娘)は生きており、中川先生の娘の可能性が高い


③佐藤アヤはルナにイジメを受けた


④佐藤アヤは宮尾家で使用人として働いている



「その、佐藤アヤが私の娘である可能性が高いのは理解しましたが、イジメを受けていたルナがいる家で働いているのはなぜ何ですか?」

「使用人として働かないかと申し出たのはルナのほうです。話を端折りましたが、高校に入ってからのルナはアヤさんをアイドルとすべくオーディションを受けさせて、その目的を果たしました。おそらく辱めを受けさせる為にアイドルにさせたのでしょう。今のアイドルはお笑い芸人がやるような仕事をすることもありますし、アヤさんは見た目も良いので、そういう人がヨゴレ仕事をすることで、カタルシスを得るためだったと思います。ですが、アヤさんにとってアイドルは天職と呼べるような職業で、日々のアイドル活動を楽しんでいました。それに業を煮やしたルナはあの手この手を使ってアヤさんがアイドルを辞めざるを得ない状況にまで追い込みました。アイドルを辞めたアヤさんは何をやっても上手くいかず、そんな彼女にルナは手を差し伸べる形で宮尾家で働くことを勧めて今に至ります」

「ということは過去のわだかまりがなくなったということですか?」

「いえ、状況はさらに悪化しています」

「悪化って、悪くなりようがないように思えますが…」

「彼女は、佐藤アヤはルナと母親である麦さんに対して復讐を計画して実行中です」

「!?」


復讐という言葉は使いたくなかったが、宮尾家では恐ろしいことが起こっていることは事実だ。

彼にはそれを知って受け入れてもらう必要と責任がある。












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