第27話 撮影日に…
今日はスタジオを借りてのPV撮影の日。
撮影クルーだけではなく、取引先のお客様も一部見学に見える。
会社としてもそれだけ力を入れているのだ。
俺は一足先にスタジオに入った。
佐藤さんは姉妹たち3人を連れてくる予定だ。
現場に着くとすでにクルーがスタンバイの準備に取り掛かっていた。
セットも俺がイメージしていたものにバッチリ仕上がっている。
遅れて佐藤さんたちが到着。
3人は衣装に着替えるために楽屋入りした。
取引先のお客様も続々と到着した。
当然初めて見る人たちばかりなので、会社の社員の方が対応なさって下さる。
社長は所用の為、今日は不在なので、現場の監督責任はプロデューサーの俺にある。
緊張するぜぇ。
「お待たせしました」
衣装に着替えた3人が現れた。
いやはや、想像以上にセクシーだ。
3人ともよくOKしたよな。
特にルナはボディラインがくっきりで、若干照れているように見える。
男性のお客様を呼ばなくて正解だった。
このこともあり撮影クルーも全員女性にしてもらった。
ここにいる男性は俺だけ。
よし、準備が整ったし始めるか!
「皆さんおはようございます。私、今回の事案に対するプロデューサーを務めてます、小谷です。本日はお集まりいただき誠にありがとうございます。よいPVが作れるように短い時間となりますが、よろしくお願いします」
今回のPVは通しでリハーサルを何度か行ったあとに、カメラを止めずに一発撮りでの本番を行う。
長々やって予算をかけたくないのと演者に緊張感を持たせるためだ。
リハーサルで各々のポジションや流れも確認。自主練してることもありスムーズに事が運んだ。
そのまま本番へと進む。
「それじゃ本番いきまーす」
カメラが回った。
ここからは一発勝負。
歌に関してはリップシンクなので、問題はない。
ダンスのほうも順調だ。
練習の成果が出ている。
心配されたルナも落ち着いている。
いよいよクライマックスだ。
どしゃ降りの中で3人佇むシーン。
特殊効果で雨を降らす。
そして暗転からの光を当てる。
拾われた猫が光射すところへ向かうイメージだ。
よし、バッチリ!
しかし、光に目が慣れたその瞬間、とんでもないものが目の前に。
ルナの衣装だけスケスケになっており、生まれたままの姿が露わになった。
俺は言葉を失った。
周りもざわつき出した。
ルナは手で胸と局部を隠し、その場にうずくまった。
「誰か!バスタオル持ってきて!早く!」
モカが叫ぶと同時にノアがダッシュで楽屋に戻り、バスタオルを持ってきた。
「ルナ大丈夫?」
ノアは優しく声を掛けるが、ルナの目は虚ろで震えていた。
ルナはモカとノアに抱えられてそのままその場から立ち去った。
「今日の撮影は中止にします!皆さん撤収してください!」
俺はこの場を収めることを優先した。
撮影なんていつでもやり直し出来る。
いや、もうなかったことにしてもいい。
とにかくルナの精神状態が心配だ。
しかし、何故ルナの衣装だけこんなことに?
自宅に帰るとルナはそのまま部屋に引きこもってしまった。
モカもノアも一緒にいることは拒まれた様子だ。
「私がいきます」
佐藤さんがルナの部屋に入っていった。
2人は中学の同級生だから分かり合えることもあるかもしれない。
だが、あの関係を知ってる俺からすれば奇妙な光景にも見える。
とにかく今は静かに見守るしかない。
麦さんには適当にごまかして中止になったと伝えておくことにした。
動画の撮影から数日経ってもルナは姿を見せない。自室に引きこもってるようだ。
佐藤さんが食事の用意はしてくれてはいるが、皆の前には姿を現さないでいる。
さすがにこのことを不審に思った麦さんに隠し通すことは無理だった。
俺は事の顛末を伝えた。
麦は「そうですか」とひと言申すだけに留めた。
このことを受けてイメージキャラクターの件は一旦白紙に戻った。
俺は俺でショックだった。
俺が思いつきで言ったひと言でこんなことになったと責任を感じていた。
プロデューサーを任されて浮かれていた自分が恥ずかしくも思った。
自室に戻って横になっているとスマホにある通知が届いた。
登録しているお気に入り配信者が新作動画を更新すると通知がくるアレだ。
俺は誰の動画だろうと確認したら、それは俺のアカウントからだった。
俺が動画配信者として活動していたアカウントからの更新通知だった。
この家に着てから動画の更新は一切やってないはずだが何故?
俺は通知を開いて確認した。
「ん?この動画は…」
その動画はあのとき中止した動画そのものだった。
誰がこれを?!
マズい、このままだと最後のシーンが…。
ルナの衣装がスケスケになるシーンもバッチリ映っていた。
さすがにこのままだとup出来ないので加工処理はされていたが、紛れもなくあのときの動画だ。
加工処理されたということは、処理前の動画もup主は持ってるはず。
早く削除しないと!
あれ?削除できない?
ていうかアカウント乗っ取られてる!
マズい、すでに再生回数そこそこ増えてる。
いったい誰がこんなことを?
この動画は噂になり、出演者を特定しだす輩も出始めた。
そして、ルナは行方をくらませた。




