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元オタクの動画配信者が結婚して嫁3人の主夫になる  作者: 龍田まや


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第23話 ルナと仕事に

家族揃っての夕飯時に珍しくルナから話を振られた。


「小谷さん、明日私の仕事に付き添ってもらいたいんですけど、お時間ありますか?」

「小谷さん、家のことは私がやっておくので行ってください」

「分かりました、佐藤さん。ということなので、明日よろしくお願いします」

「朝9時に駐車場で待っててください。営業車で出かけますから」

「分かりました。ところで行き先はどこですか?」

「新規で契約いただいたお客様のところです。小谷さんはまだ私たちの会社の仕事をよくご存じでないと思いますので、説明がてら明日一緒に同行お願いします」

「そう言えば詳しく話してなかったわね。うっかりしてたわ。この家に来てだいぶ経つし、それじゃ明日はルナに任せますね」

麦さんの言う通りで俺からも詳しく聞いてなかった。日々の仕事と宮尾家のことで頭がいっぱいいっぱいだったからだ。

ルナとも話せる機会が出来るし一石二鳥だ。

俺のほうがルナより歳上なのだが、他の2人とは違ってまだ敬語で話している。

まだ微妙に距離があるからだ。

今夜は早めに就寝することにした。


翌朝、いつものように朝食の準備をし、後片付け等は佐藤さんに任せて、俺は言われた通り駐車場に向かった。

えーと、あの車だな。

あれ?不用心だな、鍵かかってないのか。

俺は運転席に乗り込んだ。

すると足元に怪しげな黒い影を見つけた。

何かいる?

暗闇に目が慣れるとそこには猫がいた。

鍵がかかってないから潜り込んだのだろうか?

すると、遅れてルナがやってきた。

「お待たせしました」

「ああ、猫がいるんで家に戻してきますね」

「いいんですよ、一緒に連れて行くんですから」

「え?猫同伴ですか?」

「その子で稼がせてもらってますから。さぁ、行きましょう。あ、運転は私がしますから助手席へどうぞ」

よく分からないが、時間が来たので車を走らせて、お客様宅へ向かった。


「この猫で稼がせてもらってるってどういうことですか?」

「猫関連のビジネスをやってることはご存じかと思いますが、今の当社の主力となっているのは猫のレンタルなんです。今風に言えばサブスクですね」

動物のサブスクって確かニュースにもなってて、かなり批判があったはずだが。

「それってかなりマズいことでは?」

「確かに。ただし、ウチは徹底してやっています。動物を飼うのって、最期まで面倒を見切れずに終わったり、酷いときは虐待に遭ったりすることもあります。飼う方も飼われる方も不幸になる場合もあります。なので、まずはお客様の徹底した身辺調査から入ります。調査報告者を元に社長である母が確認してOKならば、派遣する猫を選定します。ウチで飼ってる猫は母が厳選して連れてきてるので、そこは間違いないです」

「あれ?でも、麦さんは佐藤さんが相手の猫を連れてきたって言ってたような…」

「そっちの猫ではないですね。あくまでも母が連れてきたほうです」

「みっちり教育された猫ってことですか?」

「平たく言えばそうですね。分かりやすく言えば自立してるというか。ペットショップにいるような猫ではないことは確かです」

タレント猫みたいなものだろうか?


「そろそろ着きますよ」

車は少し古びた家の前に停めた。

どうやらここがお客様の家らしい。

ルナが玄関のチャイムを押した。

すると中から年老いたお婆さんが出てきた。


「あら、ルナさんお待ちしてましたよ。今日はお二人ですか?」

「おはようございます。新人も同行させてきました」

「さぁ、上がって上がって」

いつの間にか俺も社員にさせられてる?

便宜上そう言っただけだよね?

「こちらへどうぞ」

俺達はリビングに通された。

外観は古いが中は綺麗な家だ。

「お身体の調子はいかがですか?」

ん?このお婆さん体調悪いのだろうか?

「最近はとっても良いですよ。今日も早朝から公園まで散歩に出かけましたから」

「それは元気ですね」

「今日を楽しみにしてましたからね」

「それじゃ、こちらになります」

ルナは連れてきた猫をキャットハウスから出した。

「あら、かわいい」

猫はお婆さんの元へゆっくりと歩を進めた。

「賢いですねぇ。今日からよろしくね」

「契約についてはこの間説明した通りです。何かあれば24時間サポート受付にご連絡ください。定期的にも訪問いたしますので」

「ありがとうございます」

見たところこのお婆さん以外に人が住んでる形跡はない。

高齢者が猫を1人で世話できるのだろうか?

素人目にはそのような心配があったが、徹底した身辺調査をしてると言ってたし。

「それでは失礼します」

そのような心配をよそにルナはさっさと帰ろうとした。

帰りは俺が運転を替わって帰ることになった。


「あのお婆さんって一人暮らしですよね?」

「そうです。先日まで入院されてました」

「身寄りがないってことですか?」

「旦那さんは他界してて、お子さんがいますが、家を出て疎遠になってるようです」

「猫を飼うのは寂しさを紛らわすためということですかね?」

「それが大きいと思います。直近まで入院していたということもあり、私たちも派遣することには慎重に検討したのですが、最終的には社長がOKを出しました。とりあえず期間としては1ヶ月です」

「その間にその…お婆さんに万が一のことがあったらどうするんですか?」

「先ほども言いましたが、我が家の猫はペットショップにいるような猫ではないのです。小谷さんが想像している最悪な事態になったとしても、我々は対処出来ます」

凄い自信だ。

自信があるからこのビジネスが成立しているのだろう。

しかし、このビジネスには少し謎がある。

「会社のHP見たんですけど、レンタルのことはどこにも載ってないですよね?」

「はい、載せてません。いわゆる裏メニューってやつです」

「裏メニュー?」

「会社の紹介動画にメッセージを潜ませてます。サブリミナル効果ですね」

「それって分かる人少ないのでは?」

「大々的に宣伝はしてないですからね。その辺のところは今後の課題です」

「あのお婆さんよく分かりましたよね」

「あの人は社長がたまたま病院で会って、話相手になって紹介を受けただけです」

「そういうのもアリなんですか?」

「そこは営業の仕事でもあります。人を見極める眼力も必要となりますけど」

「もう一つ気になってたんですが、洗濯物たくさんありますよね?あれはいったい?」

「レンタル期間が終了したらそのお宅で猫が生活していた部屋のものを一式引き取って洗濯してお返ししています。猫が住んでいたという痕跡を残さないためです。ウチはあくまでも派遣であって、たとえ気に入ったとしても売買は一切行っていません。飼いたくなればペットショップへどうぞ、というわけです」

「凄く徹底してますね」

「そこは誇れるところですね」


ルナの話を聞き入ってしまい、会話が終わってからも色々と考えてしまった。

そうこうしてるうちに家に着いた。


「今日はありがとうございました。ためになりました」

「いえいえ、こちらこそ」

「それじゃ、俺は仕事に戻りますね」

一足早く車から出ようとしたその時、

「ところで、小谷さん。私に聞きたいことがあるんじゃないですか?」

ルナの俺を見る鋭い視線。

俺は背筋が凍るような感覚に襲われた。







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