第20話 似たもの姉妹
あの日の情事から数日。
俺は日課となっているニャンコたちへの朝飯を準備しながら猫たちの顔を一匹一匹凝視している。
この家に何匹猫がいるのか未だ定かではないのだが、たいていの顔は見覚えがある。
アイツ今日はいないな、コイツよく食うな、とか、そんな感じで印象付けている。
しかし、あの日の猫には未だ出会っていない。
たまたま会えないだけなのか、それとも佐藤さんが連れてきた猫なのか、その辺が不透明だ。
今日も今のところそれらしき猫は見当たらない。猫なんて同じような顔してるからな。俺の記憶違いなのかもしれない。
けど、あの雰囲気は独特だった。
猫vs猫ではなく、猫vs人間の女だった。
猫ではなく人間の女として扱っていた。
それもかなり手馴れていた感じで。
ビデオの向こうの世界の知識しかないので、はっきり言って勘でしかない。
とにかく手がかりのようなものはほとんどないから身近な猫からしらみ潰しに探していくしかない。
「もう全員に食べさせたの?」
モカだ。最近よく手伝ってくれる。
「あっちにいるので最後かな」
「OK.私が世話してくる」
一段落ついたところでモカとお茶にすることにした。
ちょうどいいからモカに聞いてみるか。
「聞きたいことがあるんだけど、たくさん飼ってる猫たちって、いつからなの?」
「ウ~ン、お母さんが今の仕事を始めだして間もなくだから、5〜6年前かな?その頃のお母さんは一日中働いて、家のことも全部やってたからスーパーウーマンって感じで」
「そうなんだ。てっきり家事が出来ないから使用人雇ってるのかと思ったらそうじゃなかったのね」
「全然違うよ。やろうと思えば今でも出来るはずだよ。ただ、昔と比べて身体が弱くなったみたいで…。私たち子供3人を食べさせるために一生懸命働いてたから…」
「そんなに苦労してたんだ…」
「ルナは学校の成績が良かったから、お母さんは何としても大学に進学させたいと思って、それまで以上に必死で働いて。私のときはここに住みだして間もなかったし、その頃は生活も随分と楽になってたから大学行くことも出来たんだけど、私そんなに成績良かったわけでもないし、やりたいこともなかったから、無駄に大学行ってお金使わせたくなくて、それで高校出てフリーターやってるの」
「そうなんだ。結構考えてるんだな」
「未だにやりたいことは見つかってないんだけどね」
「ロクに働いてない割には大飯喰らいだよな」
「ちょっ…いろいろ考えてるからお腹が空くのよ!」
「冗談だよ冗談。さっきの話に戻るけど、5〜6年前から少しずつ飼い出したわけ?」
「数が増えだしたのはこの家に移ってからかな?だから3年前くらい。お母さんがどこかから拾ってきたのか貰ってきたのか知らないけど。それから佐藤さんがこの家にきて、猫たちの相手も探してきたわけ」
「佐藤さんがこの家に来たのも同じ時期なの?」
「ウ~ン、確かそれくらいだったと思う」
「そっか、いろいろ聞いて悪かったね」
「ううん、大丈夫。旦那になるならこの家のことも知っとかなきゃだもんね」
「妙に理解があるな」
「そりゃ、あとになって騙されたー!って逆ギレされたら困るし(笑)」
「この家に来た時点で半分騙されてるけどな(笑)」
「そんなのお互い様だよ(笑)」
モカと談笑しつつも、この家の情報を引き出すことに成功した。
しかし、まだまだ謎が多い。
考えてても仕方がないので掃除と洗濯に取り掛かった。
洗濯物を干していると今度はノアに声を掛けられた。
そうか、今日は学校休みだったな。
この仕事を始めてから曜日の感覚がなくなってきている。
「今日一緒に行くでしょ?」
「え?どこへ?」
「陶芸教室に決まってるじゃない」
「一緒に行ってもいいの?」
「え?それは…行くの行かないのどっち?」
「行くよ。行くから干し終わるまで待ってて」
ノアは去り際に俺には聞こえない小さな声でブツブツ何か言ってるが、顔は照れているように見えた。
可愛いなぁ。
ノアにも何か聞けることあるかな?
俺はチャチャッと洗濯物を干し終えて出かける準備をした。
そして、ノアと一緒に陶芸教室へと向かった。
まずは他愛のない話をして様子を伺いながら家族のことを聞いてみることにした。
「今日は生徒さん多いのかな?」
「土曜日だから多いかも」
「今日は何作るか決めてるの?」
「花瓶かな。部屋にお花飾りたくて」
「いいね。女の子らしくて」
「掃除するとき割らないように気をつけてね」
「分かりましたよ。ところでさ、ノアはルナのことどう思ってるの?」
「どうって、ひと回り歳の差があるから、小さい頃は可愛がってもらった記憶はあるけど、大きくなってからはどっちかって言うとモカと一緒のことが多かったかな」
「それはノアが大きくなってからのこと?」
「ううん、ルナが高校生くらいになってからだと思う」
「近づきにくくなったのかな?」
「どうだろ?ルナは勉強よく出来たから受験勉強で忙しかったのかもしれない。あまり構ってもらえなかった気がする」
「昔から今のようなクールな感じなの?」
「どうだろ?私的にはそんなに変わってないと思うけど、家族以外の人が見たらそうなのかもしれない」
「ふ~ん、ごめんね変なこと聞いて」
「結婚相手になるなら相手のことをよく知っとかなきゃだもんね」
「ならノアのことももっとよく知らなきゃだな」
「このロリコンスケベ!(笑)」
さすがに姉妹だけあって反応似てるわ。




