第18話 モカの悩み
モカの様子だが、あの後に麦さんが話を聞いてからだろうか、食欲についてはいつものように白飯3杯食べるようになった。
見た目的にはこれまで通りのモカに戻っているように思える。
俺に対しては少し優しく接してくれるようになった。
悪くないことだが、若干調子が狂うといったところか。
ノアはあれからずっと早起きして朝食の準備を手伝ってくれてる。
「姉さん最近様子変わったと思わない?」
「え?モカのこと?」
この家の姉妹はお互いを呼び捨てで呼んでいる。一番歳下のノアも2人の姉を呼び捨てだ。そのような家風なのだろう。
「どうだろ?いつもと変わらないと思うけど」
「少し丸くなったというか」
「昔からよく食べるけど体型はそんなに変わってないよ」
「いや、体型じゃなくて性格が」
「うーん、そんな言うほど変わってないように思えるけど。まだそんなにモカのこと知らないからじゃない?」
ノアの言う通り、俺はまだモカのことをよく知らない。ノアのことですら最近少し分かってきたつもりだ。
「いつも通りご飯食べてるから大丈夫だと思うよ。全くご飯食べなくなったら一大事だけどね」
ノアはそう言って笑った。
俺が気にしすぎなのだろうか?
「無駄口叩いてないで早くそこのお野菜切ってよ。魚も焼いといてね」
「俺のほうが先輩だぜ?」
「いいから早く手を動かして!」
完全に場を仕切ってるな。
家族の朝食が終わり片付けに入る。
ノアは学校があるのであと片付けは基本的に俺の仕事だ。
片付けが終わればいつも通りにニャンコたちへの朝飯の準備だ。
庭の定位置にスタンバってる猫が何匹もいる。
よしよし、待ってろよお前ら。
ん?モカがいる。
今日も猫と戯れている。
大量のキャットフードを抱えた俺を見つけてこっちへやって来た。
「あの、ちょっと話があるんだけど、時間あるかな?」
「それはいいけど、まずはこの子たちに飯食わせてからね」
「うん。部屋で待ってるから」
わざわざ部屋に呼び出して話って何だろう?
他のみんなは学校や仕事に行ってて誰もいないのだが、猫にも聞かせられない話なのだろうか?
俺はニャンコたちの飯の世話を早々に切り上げてモカの部屋に向かった。
「部屋入るよ」
「どうぞ」
「それじゃおじゃまします」
「あ、そこに座って」
「改まって話って何?」
「実はさ…結婚のことなんだけど」
「えっ?結婚?」
「仮によ、仮の話なんだけど、相手が誰であっても愛さえあれば結婚出来ると思う?」
これは俺に愛の確認をしてるのだろうか?
それとも誰かほかに好きな男が出来たのだろうか?どっちなんだ?
「お互いの家族のこともあるけど、最終的には当人同士で話し合って決めることじゃないかな?」
とりあえず無難な答え方をしておいた。
「そっか、そうよね。それじゃあさ、結婚するなら隠し事はないほうがいいよね?」
「そりゃあ、ないほうがいいけど、家族になると言っても誰しも隠し事の一つやふたつはあって当然だと思うし、そこまで踏み込む必要はないんじゃないかな。さすがにとんでもない額の借金があるとか、他にも付き合ってる相手がいるとかは問題外だけど」
3人と結婚しようとしている俺が言えたセリフじゃないと言ってから気付いた。
「私さぁ、今定職に就いてなくて、バイトと趣味のバンド活動やってるけど、ある程度区切りつけて就職したほうがいいのかな?と思ってて」
「それって、実家の会社に就職するってこと?」
「まぁ、それが大前提なんだけど」
「麦さんの仕事は姉さんが何れは継ぐんでしょ?」
「流れ的にはそうだけど、私も手伝ったほうがいいのかな?と思ってて」
「もしかして麦さんに何か言われたの?」
「いや、仕事に関しては何も言われてないけど、他のことでちょっとね…」
何か歯切れの悪い言い方だ。
やっぱり何かあるんだな。
「今何かやりたいことがあるならそれを優先的にやればいいと思うよ。仕事のことは姉さんたちに任せてさ。それが出来る環境だと思うし」
「うん、ありがとう。もうちょい考えてみるね」
モカはまだ何か俺に伝えたそうな顔をしたが、それを飲み込んで話を切り上げた。
「何かあったら俺がいつでも相談に乗るから。家族に話せないこともあるだろうし。俺も一応家族だけどね」
「まだ家族とは認めてないから」
そう言うと彼女は笑顔を見せた。とりあえず一安心ってところか。
「それじゃ、これからバイト行って、その後にはバンドの練習あるから少し帰り遅くなるかも」
「晩飯たくさん用意しておくから」
「お米だけは切らさないでよね(笑)」
「はいはい、いってらっしゃい」
結局のところ彼女の悩みは何なのか具体的なことは一切分からなかった。
結婚の話から就職の話って単に今後の人生について悩んでるだけだろうか?
俺からすれば実家は会社を営んでるし、経営も安定してる。跡継ぎとして長女が頑張ってて、次女は遊びたい放題してても親に叱られないって羨ましい限りなのに。
俺に相談してくるってことは、ノア同様に少しは心を開いてくれたってことで一歩前進した感はある。
長女のルナだけはまだ壁があってまともに話せてないし。
家でも麦さんと佐藤さんにしか話してないイメージだもんな。
何かきっかけがあればいいんだけど。




