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第二話 「プレゼント」♯1

芳賀「着いたー!俺、まずダンエボで踊るわ」

一葉「お前は走るだけじゃ飽き足らず、ゲーセンでまで運動

   するのか」

有介「俺はギター型のやつ・・・・・・・無えな。じゃ、格

   ゲーで指慣らし」

一葉「対戦しようぜ」

(数分後)

有介「うおらっ必殺一あっ、負けた」

一葉「“必殺ボタン連打”は必殺じゃない」

芳賀「いい汗かいたぜ、次はUFOキャッチャー行こうぜ。

   あのキーホルダー、オタク的に欲しい」


芳賀「で、有介。さっき校門来る前、誰かと話してたな?」

一葉「“誰が”というか、“多野”だろ」

有介「おっ、見てたのか。まあな、俺様の音楽に酔いしれて

   たらしいから、感想ヒアリングしてただけだ」

芳賀「出たー“俺様”。痛いのにちょっと似合うのムカつく」

一葉「まず“俺様”より“チューニング様”をめろ」

有介「いやでもさ、今日のリフはマジ良かったのよ。だから

   聞いた。”どう響いた?”って」

芳賀「へぇ~、“どう響いた?”ね。言い方キザ!」

一葉「で、なんて返ってきた」

有介「・・・・・・・かっこよかったって。小声で、目見な

   いで言ってた」

芳賀「おま、ニヤけてるぞ」

有介「ニヤけてねえ。表情筋が勝手に・・・・・・」

一葉「(少し間を置いて).......まあ、真面目にやってる時の

   お前は、たしかに見られて困らない顔してる」

有介「お、珍しく褒めたな!」

一葉「事実の報告だ」

芳賀「お祝いついでにプリクラで黒歴史でも刻む?」

有介「いらねぇ黒歴史」

たわいのない談笑が続き、芳賀が不意に立ち止まる。

芳賀「なぁ、有介あのキーホルダー、多野がカバンに付けて

   るキャラじゃね?」

一葉「たしかに、筆箱もあのキャラだったな」

有介「ごめん、ちょっと取るわ」

(ガコン、スカッ)

有介「今のは偵察」

(ガコン、ズルツ)

有介「重力が今日強いな」

一葉「現実の物理法則に文句言うな。いいか、角度はここ、

   アームは半押し、縁で転がす様にしてみろ」

有介「イエス・サー!!」

(コトン)

芳賀「取れたーー!」

有祐「お前、物理の申し子かよ・・・・・・・」

一葉「プレゼントする時は“このキャラ可愛いよな、これ良

   ければ貰ってくれるかな?”だぞ」

芳賀「台詞を用意してる。やっぱ演劇部だわ」

芳賀「腹減った。ラーメン寄って帰る?」

一葉「明日も部活。塩分は控えめにな」

有介「(キーホルダーを見つめて、)...”どう響いた?”じゃ

   なくて、今度は“ちゃんと聴かせる”って言お」

一葉「言えばいい。言葉は行動の前置きだ」

芳賀「名言っぽいけど難しい。どゆこと?」

一葉「言葉にすれば自然とその行動を行うって事だけど、

   芳賀は普段から言葉とは逆の行動するからなぁ。」

芳賀「ん、つまり、さっき『腹が減った』と言ったから飯食

   いに行くでオッケー?

有介「どんだけ腹減ってんだよ!」

(3人の笑い声がゲーム音に溶ける)

ネオンを背に歩き出す。手の中の音符は軽いのに、胸の奥は少しだけ重くて、温かい。


朝の教室。窓から差し込む光がノートに斜めの影を落とす。

有介「(よし、多野が来たら渡す。これ昨日ゲーセンで取っ

   たの上げる♪、変じゃないよな、自然だな、

   よし!)」

芳賀「顔こわっ。有祐なんか悪い事するやつみたい」

一葉「ポケット握りしめすぎてるぞ。・・・・・・昨日のや

   つか」

有介「しっ!声小っちゃく!」

(教室の扉が開き、女子たちが入ってくる)

鈴木晴「おはよー。......って丸尾、今日は妙に大人しい?」

岡崎「“俺様のリズムに酔いしれろ!”の声が、これは事件」

多野「・・・・おはよう」

有介「お、おはよ」

有介(心の声)「(今だ、渡せる・・・・・・・!)」

(立ち上がりかけた瞬間、予鈴が鳴る)

有介「......っ!」

一葉「うん、はいチャンス消滅~」

有介「あの鐘の音、恨む!」


休み時間。席を立ち、各々好きに過ごす生徒たち。廊下に走る足音、教室のあちこちから笑い声。

有介「(人が散らばってる今なら、“渡すだけ”って自然にで

   きる!)」

有介「た、多野。ちょっとー」

鈴木晴「ねぇ多野~、ノート貸して!ここの式ぜんぜん分か

    んない」

岡崎「多野、昨日の続きの漫画、貸してぇ!」

多野「あ、うん。ちょっと待って」

有介「(え、もう人集まってきてる!?無理!今ここで出し

   たら完全に茶化される!)」

(スッと引き下がる有介)

芳賀「戻ってきたな。何もせずに」

一葉「“今は違う”顔、二回目」

有介「違うって言うな!タイミングだってあるんだよ!」

芳賀「お前、普段はタイミング無視で喋ってるくせに」


昼休み。机を寄せ、弁当の包みを広げる音が響く。

鈴木晴「そういえば文化祭の出し物、軽音って何やるの?」

有介「ポップス中心。バンド全体で盛り上がれる曲、選んで

   る」

岡崎「へえ。丸尾がギターかき鳴らすとこ想像すると、

   ちょっとカッコいい.......いや、やっぱウルサそう」

有介「ウルサそうは余計だ!」

多野「......・でも、昨日の演奏はよかったよ。真剣だった」

有介「っ・・・・・·」

鈴木晴「おーい、丸尾固まった。」

岡崎「照れてる、照れてる。青春~♪」

有介「(ここで渡すのは....ムリ!女子達の中でって...。

   いや、ムリ!)」

一葉「“これ、あげる”の一言で済むのに。簡単だろ」

芳賀「それに、“君に似合うと思った”って言えたら百点」

有介「お前らが茶化すな!」

5限後。短い休み時間、移動教室にて移動中、廊下は人がほとんどいない。

有介「(よし、今なら二人きり。

   自然に渡せる・・・・・!)」

有介「多野、ちょっとだけ」

多野「......うん?」

(二人、廊下の窓際に並ぶ)

有介「昨日さ、ゲーセンでー」

多野「うん」

有介「(今だ、渡す!)」

(その瞬間、教室から生徒が飛び出してきて、ぶつかりかけ

る)

生徒A「あっ、悪い!」(走り去る)

有介「っ・・・・・」

多野「......続きは?」

有介「.......いや、その、あとで・・・・・・・!」

多野(小さく笑って)「うん」

有介「(なんでだよ…・・・・・・!あと一歩だったの

   に!)」



夕方。帰りのHRが終わり、机の上に西日が伸びている。

芳賀「で?結果は?」

有介「......まだ渡せてねえ」

一葉「お前にしては珍しいな。いつもはノータイムで

   突撃するのに」

有介「......・そうなんだよ。俺もなんでか緊張して、言い訳

   ばかり思い浮かんで、渡せないんだよ、」

芳賀「まぁ、好きだからこそ、な」

一葉「らしくなくてもいいじゃないか。恋心に翻弄される

   お前、ちょっといい」

有介「マジで、どうしていいか、分かんねえよ」

有介「・・・・・・ちょっと待て。なんでお前ら、

   俺が・・・・・・」

芳賀「あ、やっぱりそうなんだな」

一葉「見てれば分かるよ。俺らを誰だと思ってんだ」

(丸尾、思わず顔を赤くして拳を握る)

有介「なつ・・・・・・神に友と書いて、しんゆう!.......

   だからって、なんで恋心までバレるんだよ!」

一葉「・・・なんでそれが言えて、プレゼント一つ渡せない   んだよ・・・」

芳賀「......・でもな、有介。気づいてたけど、やっぱりお前

   の気持ちは本物だ。だから俺らは応援してる。お前ひ

   とりで背負い込むな」

一葉「そうだな。別に押し付けるわけじゃないけど、勇気が

   出せないなら俺らが少しだけ後押しするだけさ。それ

   でどうにかなるなら、な?」

(丸尾は一瞬、二人の顔を見上げ、目の前の夕日で目が細くなる)


有介「(...そうか。俺には。親友がいる。

   支えてくれるやつがいる・・・・・..。だったら、

   もう少しだけ勇気を出してみてもいいんじゃない

   か・・・・・)」

机の上の西日が伸びる中、丸尾はそっと拳をほどき、握っていたキーホルダーを胸の前で握りしめる。心臓の鼓動が夕日の光に溶けてゆくように感じる。

教室に残る夕日のオレンジ色が、決意と友情の温かさをそっと照らす。

丸尾は握った手の中のキーホルダーを見つめ、明日こそ、勇気を出して渡すことを心に誓った。



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