一話「3人組の日常」♯3
夕暮れ、軽音部の音楽室。
アンプの電源を落とし、ギターケースを背負う有祐。
汗をぬぐいながら出口へ向かうと、廊下の先に誰かの姿があった。
有介「・・・・あれ?」
多野「・」
偶然通りかかったのか、多野が窓の外を眺めて立ち止まっていた。
ふだんは大人しくて控えめな彼女が、ほんの少し緊張した顔で振り向く。
有介「おお、多野!今帰り?」
多野「うん…...。ちょっとだけ、ここを通っただけ」
有介「へえ?まさか俺の演奏、聞いちゃった?」
多野「.....少しだけ」
その言葉に、有介はにやりと笑った。
並んで靴箱へ向かう。
廊下にはもう人気がなく、夕日が赤く差し込んでいた。
有介「どうだった?ギター」。
多野「......」
一瞬迷ってから、小さな声で答える。
多野「真剣な顔、してた。......いつもと違って、かっこよかった」
その言葉に、有祐がわざと大げさに胸を張る。
有介「おおっ、キタ!人生で初めての”かっこいい”いただきました〜!」
多野「ふふ…・・・・・大げさ」
口では呆れながらも、笑みをこぼしてしまう。
彼のいつもの冗談っぽさと、さっき見た真剣な横顔のギャッ
プ。
そのせいで、胸の奥が少しざわついていた。
靴を履き替えながら、まだ会話は続いていた。
有介「俺、普段はアホだし忘れ物もするけどさ。音楽だけは本気なんだ・・・」
多野「・・・知ってる」
有介「え?今なんて?」
多野「今日、見て思ったの。・・・・・・真面目で、いいなって」
思わず口にした瞬間、多野は顔を赤くして視線を逸らす。
有介は一瞬きょとんとして、それから耳まで赤くしながら笑った。
有介「おいおい、そんなこと言われたら、ニヤけ止まらんだろ・・・・・」
多野「・・・・もう、知らない」
二人が並んで歩いていると、遠くから声が飛んできた。
芳賀「おーい、有介一!そろそろ集合時間だぞー!」
一葉「おー!さっさと来いバカ丸尾!」
校門前で手を振る二人。
どうやら、すでに待っていたらしい。
有介「おっと、いけね!遊ぶ約束してたんだった」
多野「.....そうなんだ」
有介「うん。また明日な!」
有介は軽く手を振って、仲間の元へ駆け出していく。




