第1話「3人組の日常」♯2
教師「じゃあこの式を板書しとけよー」
チョークの音がカリカリ響く。
一葉「(カリカリと書きながら).....
・有祐、ノート出せよ」
有祐「(キョロキョロ)......あれ?ノートがない」
芳賀「はい出たー、第二の忘れ物」
有祐「いやいや、紙なら頭の中にあるから!」
一葉「その頭に筆記用具は?」有介「ない!!」
教室がクスクスと笑いに包まれる。
芳賀「(小声で)お前昨日、
テスト範囲のプリントも無くしたろ」
有祐「プリントは心にしまってある!」
一葉「心はストレージじゃない」
芳賀「もう“物理的に保存できない男”って呼ぶぞ」
有祐「かっけー!異名いただきましたー!」
一葉「いやダサいからな」
机を寄せて、3人で昼食。
有祐「見よ!今日の母ちゃん特製弁当!」
芳賀「うまそうじゃん。俺はコンビニのカレーだわ」
一葉「俺は購買でパン。並んで買ったから汗だくだぞ」
有祐「イケメンが汗かくと女子の目線集めるな〜、」
一葉「3人しかいないだろ?」
芳賀「つーか有祐、その卵焼き甘い?しょっぱい?」
有祐「ん、食べてみる?」
(卵焼きを箸でつまみ、わざと芳賀の口元に近づける)
有祐「はい、あーん♥」
芳賀「パクッ! うん、だし巻きだ!)^o^(」
一葉「(冷静に)お前らカップルか」
近くの女子グループがザワつく。
岡崎「ちょっ、今の見た!?
丸尾くんが芳賀くんに“あーん”って!」
鈴木「尊い・・・・!この学園に舞い降りし、
禁断の愛・・・・・・!」
岡崎「ノートに書かなきゃ・・・・.いや、
今すぐマンガにする!」
鈴木「タイトルば“昼休みの甘い罠”だな」
多野「・・ふふっ・…(小さく笑う)」
女子たちの視線がじわじわ三人に注がれる。
有祐「なんだよ女子、そんなに見んなって!」
一葉「見られるようなことしてる自覚を持て」
芳賀「......てか午後は実習だからな?
実習着忘れてないよな?」
有祐「大丈夫!ちゃんと持ってきてる!」
一葉「“はず”を言い忘れてるぞ」
有祐「俺はフラグ製造機じゃねぇ!!」
一一昼休みの談笑
有祐の視線はふと、笑みをこぼした多野に吸い寄せられていた。
チャイムが鳴ると同時に、教室の空気が一気に緩んだ。
有祐が勢いよく立ち上がる。
有祐「っしゃー!放課後ターイム!
軽音部のギターボーカル、丸尾有祐、
今日もロックで魂を解放してやんよ!」
ギターケースを背負って胸を張る有祐に、クラスの何人かが苦笑いする。
芳賀「はいはい、解放するのは自由だが・・・・・..
俺は今日は帰りてえ」
一葉「またかよ。陸上部サボる気か?」
芳賀「だって今日、顧問来るんだぜ?
絶対しんどいじゃん。ゲームしてた方が有意義」
有祐「部活やる気ゼロの陸上部員、ここに誕生!」
芳賀「俺ば“幽霊部員界”のトップ目指してんだ」
そう言って机に突っ伏した瞬間、後ろの席から影が差す。
鈴木「ほら出た。芳賀の必殺技“机に根生やし”」
芳賀「うおっ!?鈴木・・・・・・お前か」
鈴木「“お前が”じゃねぇよ。部活行くぞ」
芳賀「やだ。今日は体調不良ってことで・・・・・・・」
鈴木「はい嘘~。元気にしゃべってんじゃん。
中井先輩待ってるんだからサボれねえって!」
鈴木が芳賀のバッグを強引に肩へ掛けさせる。
引きずられながら芳賀が必死に抵抗する。
芳賀「ぐはっ、俺のオフタイムがああ!」
一葉「諦めろ。鈴木に逆らえるやついない」
有祐「頑張れ芳賀!陸上で世界を変えてこい!」
芳賀「お前の音楽で変えろや!」
わいわいした空気の中、鈴木に押し出される形で芳賀は教室を後にした。
残された有祐と一葉も、それぞれの部活へ。
音楽室に入ると、ベースの塚田が静かにチューニングしていた。
背の高い体格に似合わず、指先は器用に弦を弾く。
有祐「おっす、塚田!
今日も黙々とベース職人してんな〜!」
塚田「・・・・・・・落ち着くんだよ。低音って」
そこへドラムの吉岡が勢いよくドアを開ける。
吉岡「お待たせーツ!
今日も俺のビートで女子をしびれさせるぜ!」
有祐「バンドマン=モテっていう幻想、そろそろ捨てろ」
吉岡「うるせぇ!
ハーレム街道を歩む俺をなめんな!」
有祐がギターを手にし、音合わせを始める。
部屋の中に鳴り響くコードに、空気が少しだけ熱を帯びた。
グラウンドに着いた瞬間、中井部長が笛を鳴らす。
中井「芳賀、準備できてるな?タイム測定だ。全力でいけ」
芳賀「....・・・うへえ、
全力とか聞いただけで筋肉が悲鳴あげるわ」
横で鈴木がにやりと笑う。
鈴木「どうせ走り出したらスイッチ入るくせに」
芳賀「入らねーよ…....俺は省エネ人間だっての」そうぼやきながらも、スタートラインに立った瞬間、表情が変わる。
地を蹴る音と共に、真剣な眼差し。
風を切り、ゴールに向かって一直線に駆け抜ける。
中井「.......いい走りだ、芳賀!」
芳賀「(息を切らしながら)
・・・・・・はあ、はあ・・・・・ありがとうございます・・・・・」
(心の声:結局、本気出しちまうんだよな・・・・・・)
旧視聴覚室を改造した演劇部の練習場。
そこには副部長の近藤美優が立っていた。
同学年で別クラス。整った顔立ちに加えて演技力も抜群、学年のマドンナ的存在だ。
近藤「藤井くん、今日も台本合わせよろしくね」
一葉「あ、ああ・・・・・・・
(心の声:やっぱ美優はオーラすげぇ・・・・・・)」
後輩の原口が台本を握りしめて駆け込んでくる。
原口「先輩!ぼ、僕今日こそセリフ噛みませんから!」
一葉「・・・フラグ立てんなよ」
練習が始まり、原口がセリフを張り上げるが一
原口「きっ、君の・・・・・・・ひや・・・・・・・
百年後も、愛して.....ます!」
近藤「(必死で受け切ろうとする)」
一葉「(心の声)おいおい、大丈夫かよ…・・・・
でも、こういう必死さ嫌いじゃないんだよあ」
放課後の空、それぞれの部活の声が校舎に響く。
ギターの音、走る足音、舞台のセリフ。
違う場所にいても、3人の青春は確かに同じ時間を刻んでいた。
【高校2年の春。まだ誰も知らない、それぞれの心の行き先を抱えながらー彼らの日々は、ゆっくりと動き出していく。】




