ないものはない ごはん
「ちょうだい」
ないものはない。
だからねだるな。
「おねがいちょうだい」
無理なものは無理なんだ。
いい加減にしてくれ。
「ちょうだいったら」
だーかーらー。
ないっていってるだろ!
「わんわん!」
「わうん、わうーん!」
「わうわう、わおんわおん!」
私はずっとねだり続ける。
相手の困り顔がさらに困り顔になった。
あと、もうひと押しかな?
飼い主は私に甘い。
散歩の時は、疲れたら抱っこしてくれるし、怪我したときはすぐ手当てしてくれる。
きっとこうしていれば、今回だっていつかは折れてくれる。
だって、前もそうだったし。
私はワンワン吠えて飼い主に食べものを催促。
けれど飼い主は一向に、それを出してはくれない。
「高級フードは特別な時だけって言っただろ? 餌の袋をもってきて、そんなうるんだ瞳で見上げてきても、買ってきてないから、ないものはないんだ」