DVな男
お絵描き、折り紙、お風呂にお外で遊ぶのも全部お父さんがいいの。お母さんと手を繋ぐのはダメ!私の特権なんだから。目がぱっちりでかっこいい私のお父さん。大きくなったら結婚するんだよ?約束だよ?
そんなお父さんとお母さんと私はいつも一緒に寝るの。いつも1番に私が起きるのに、今日はお母さんとお父さんが何か言い合ってるなぁって思いながら起きたの。
多分だけど、そんな気持ちで起きたと思うの。でも、次の瞬間には壁の隅に背中をグッと近づけて、視界が歪んでて、頭もぐわんぐわんしながらただただやめてって小さな声で何度も口ずさんでた。
お父さんがお母さんの上に馬乗りになって、グーにしたり、ぱーにしたりして、腕を振り回してるの。お母さんの目がぶどうみたいな色になっていくのをただ見てることしか出来なくて。
じっと見てたら「男を怒らすとなぁ、こういう目にあうんだよ!!」って聞いたことないぐらい低い声で、でも、ビクって体が固まるぐらい大きな声でお目がぱっちりでとても怖い人が私に向かって叫ぶの。
不思議だよねぇ。それでもあの人は私の大好きな人で、大切な人だったの。
1年後両親は離婚したけど、それでもあと何回寝たらお父さんに会えるの?って何回も聞いて、毎月1泊2日のお泊まりを楽しみにしてた。
お母さんはあれから別人のようになって、気づけば「あなたなんて産むつもりはなかったの。あの人が産みたいって言うから仕方なく。あなたなんて産まなきゃよかった」って毎日言われ続けた。高校生になるまでそれがおかしい事だなんて全く気づかなかったんだけど。