バカなマーメイド登場
「さてさてさてさて...」
ルイの背中を見送った秋はパソコンで、調査に役立ちそうな情報を集めていた。
秋の情報網を使い、目ぼしい物があったらルイへ送る。
そしてネットを使って情報を集めているときだ。
空き巣や、暴行事件、不審者情報など様々な記事がある中で、画面に映るとあるニュース記事が秋の手を止めた。
画面の約三割ほどを占めるような、デカデカとした太い文字で"都内でのカーバンクルの失踪が相次ぐ"と見出しが書かれている。
「今回の件と何か関係あるのかな...」
ルイが関わると、嫌な方向に予感が当たってしまう場合が多いことが常。
「まぁ、とりあえず」
秋の視線の先には部屋の上部に設置された神棚。
そこには、どうせ拝むならと二体のフィギュアを置いてある。。
金髪巨乳の服着脱可能フィギュアがルイで、魔法少女フィギュアが秋の趣味だ。
取り敢えずはルイの無事でも祈っておこうと、神棚に向かって二拍一礼。
フィギュアの中心にいつの間にか居座っているティルもご満悦の様子。
繁華街から全力疾走十数分。
住宅街から一転して、辺りに自然が多く見えるエリアにルイは居た。
ここは都内でもかなり力を入れて自然との調和をうたっている場所であり、遠目からでも分かるほどに一番大きな樹がある場所が最大のシンボル自然公園だ。
「初めて来たが、結構な人がいるんだな」
車が所狭しと並んでいる駐車場を抜けると、目の前に広がるコンクリートで舗装された大きな道。
ルイの視界の先まで続く道には、家族連れがワンサカ押し寄せており、秋の情報通り休日を楽しんでいるようだ。
「えぇっと、こっちか?」
ルイは、散歩コースに沿って辺りを散策。
すると、この公園の人気スポットの大きな湖が見えてきた。
視界いっぱいに広がる湖はこの公園の三分の一を占めるほどの大きさであり、大型のショッピングモールが入るほどだ。
そして、この公園が作られた理由の一端が、ルイの目の前に現れた。
「へぇ...ホントに住んでるんだな」
視線の先には、湖に上半身を出した状態で談笑しているマーメイドたちの姿が。
水面に浮かんで寝ている者も居れば、岸辺に腰かける者、家で寛いでいるかのようなリラックスしている様子だ。
「絵本の中の光景が都内の公園で見れるとは、時代は変わるもんだなぁ」
更に驚くことに、マーメイド達だけではく、此処に住む幻想種達は訪れる人達と仲良さげに話している。
子供達が彼らに興味津々で、構わず柵を乗り越えようとじゃれつく。
それに微笑みながらも近寄り手をつなぎ、会話に花を咲かせていく。
水に手を突っ込み興味津々な男の子を見つけた男性のマーメイドは、家族の許可を取り肩車の要領でスイスイと湖中を進んで行く。
文明の利器では出来ないであろう、水上スレスレを風を浴びながら進む体験は男の子の目を一層輝かせた。
大切な子供の命を他人に預けることが出来るほどに、彼らとの間に信頼関係が出来ているのが伺える。
彼らのほかにも、子供達の周りをひらひらと飛びながら無邪気に遊ぶ木に住まう妖精や辺りを駆けまわる小人達。
此処の光景こそが、人間と幻想種の共存の象徴なのだろうと感じたルイ。
春にここに広がる笑顔をいち早く取り戻して欲しいと思いつつ、本格的な捜索を開始することに。
「おーい、何処に居んだー! 出てこーい!」
叫んでみてもカーバンクルが出てくる気配はない。
それどころか、散歩コースを離れた森林内で叫ぶ成人男性が居るという事で変な注目を集めてしまうルイ。
(出来ることなら探偵業の方で注目を集めたかったが、溢れ出るスター性が一般民衆たちを魅了してしまったようだな)。
男性アイドルのような端正な顔立ちにスラリと伸びた手足。
夏だと言うのにジャケットを羽織り、全身白色で統一。
急に大声を出し、独り言を言う成人男性。
挙句の果てに、一人でポージングをする。
ここまで注目を集めるのも無理はない。
だが、ルイは生粋のナルシストなのでそんなもの知る訳がない。
「なーに変なポーズして? 気持ち悪いよ?」
ルイが、背後を振り返ると、全身ずぶ濡れの女性が居た。
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