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幻想探偵 ルイマーレ  作者: あねものまなぶ
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二度目の恋は依頼と共に

人間が幻想だと思っていた生き物たちがこの世界に姿を現してから数年。

空を羽ばたくハトの群れに交じりハーピーが飛び、人間と協力し漁をする人魚達という十数年前なら腰が抜けるようになるような光景が日常となったこの世界。

人の生活が劇的に変化したということもなく、人間達が築いていた社会に彼らが溶け込むという形で順応していった。

だが、生き物はそれぞれ固有の考えを持っており、その性質が違えば生きる環境によって価値観も違ってくる。

それは人間同士に言えることだったが、幻想種も同じだった。

彼ら幻想種も人間同様に意志を持ち、同じ言語で生活している。

人と幻想種の共存。

だが人間と幻想種が共存していると言っても、折り合いがつかないことも出てくる。

喧嘩も起これば事件も起こる。

それは彼らの性質故の仕方のないことから、やったやってないと言ったしょうもない喧嘩まで様々だ。

姿形が変わろうが、やってることは人間と大差ない。


東京は大田区にある薄汚い繁華街。

夜は蛍光色が眩しく光る大人の街、昼は買い物客で賑わうと言った二面性を持つ街。

繁華街入り口にある行き過ぎた装飾が施されたゲートのすぐ傍の黒ずんだ三階建ての縦長雑居ビル。

その中の一室に、下村ルイ探偵事務所があった。

「それで、カッコつけから報酬は受け取らずに帰ってきたと」

「うん!...うん!」

ソファーに座り、不機嫌な視線を送る男性、(しゅう)

彼の前に置かれたガラステーブルには、残高二十万円の通帳が開かれていた。

そして、秋の視線の先、向かい合うように置かれたソファーの上で正座をしているのは、自称クールガイの下村ルイ。


ルイは、先日のハーピィの女性から依頼料を受け取っていないことを秋に詰められていた。

「美人が一目ぼれした男に告ろうってんだ、何とか手助けしてやりたいだろ?」

「その手助けにはお金が掛かるの。調査するために色々出費があったでしょ? 報酬貰えなきゃ赤字だよ?」

探偵と言うからには、依頼を受けて達成したら報酬を貰うというサイクルを回していく。

報酬を貰わなければ、その調査分は赤字となる訳だ。

それに対しては、

「赤字については何とかなるって! ...おっ?」

テーブルの上に置いてあるルイのスマホが震える。

秋のゴミを見るような視線に耐えつつスマホ画面を操作すると、チャットアプリが立ち上がる。

そこには、さっきの依頼主であるハーピィのアカウントがある。

「ほっほう。ほれ? 報酬は貰ったぜ?」

彼女から送られていた画像には、幸せそうな笑顔を浮かべる女性とその隣で引きつった笑顔を浮かべている男性が写っていた。

写真の背景は豪華絢爛なベットと薄暗い部屋。

ピンクのライトがどこか見覚えのある景色だと錯覚させているが気のせいだろう。

「なんか男の人...今にも死にそうじゃない?」

秋の言う通り、確かにスマホに映る男性の瞳は僅かに曇っていた。

力なく笑うその姿は精気を失ったしわがれたミイラの様にも見える。

「そんな訳無いだろう。自分の隣にいる男が死にそうなら、あんな花も咲くようなと形容できる笑顔を浮かべることが果たして女性は出来るだろうか?」

ルイの言葉から何となくハーピィが押せ押せドンドンをしたのだと理解した秋。

彼は、ハーピィの肉食っぷりは凄まじいと知っていたので対した驚きもない様子。

「まぁ恋する乙女は強いってことでいいだろう。おう。いいんだろう!」

「はぁ...ホントカッコつけたがるんだから」

「どんなときでもカッコつけるんが、俺の魅力だろ?」

反省色が見えないルイの言葉に諦めたような秋の溜息。

こんなやりとりは毎度のことを繰り返しているのが此処の日常だ。

何時もならルイの下手な話題転換で空気を散らすのだが、、今日はその必要もないらしい。


「お!」

部屋の奥から物凄い速度で事務所の玄関に向かう茶色い毛玉。

例えるならゴキブリのような速さだ。

勿論、毛玉にそんなことを言ったら殺されるんでルイたちは心の中に留めている。

「ほぉお客さんか。珍しい...」

「自分で言うのそれ? まぁ、僕は奥に引っ込んでおくから」

秋はマグカップ片手に、事務所左奥の扉の中に消えて行く。

それと同時にインターフォンの音が鳴る。

茶色い毛玉が走るのは来客の合図なのだ。


「はーい、はいはい」

ルイが上機嫌に古臭い金属製のドアを開けると、そこには一人の女性が今にも泣きそうな顔で佇んでいた。

薄いベージュのロングスカートに白のトップスを合わせた落ち着いた雰囲気の女性。

その身に纏う落ち着いた雰囲気から、二十後半から三十くらいの年齢だろうとルイは予想した。


「あぁ! なんて可憐な!」

笑う姿、何かを憂う姿色んな姿はルイの内に眠る獣欲を刺激する。

「私は悲しい。貴方の綺麗な顔を曇らせているこの現実が。私が貴方の笑顔を取り戻して見せる」

その白魚のような白く透き通る手を取るルイ。

そして、ルイの言葉が切っ掛けとなり泣き崩れる女性。

「お願いします!あの子をっ!」

慰めるために抱き寄せたその体。

程よい肉付き、柔らかい手触り。

ルイは確信した。

うるさい位に頭の中に響く心臓の鼓動。

本日、二度目のルイの恋が始まった。

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