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幻想探偵 ルイマーレ  作者: あねものまなぶ
15/27

一旦別れ

ハーピィ男の襲撃から数日後。

無事、正式な退院となったルイは、事務所で延期となっていた具無しカレーパーティーを行っていた。

「ったく。最近の荒事は困っちゃうわ! 秋、お代わりー! ごはん多めね!」

「私もー大盛一丁!!」

秋は機嫌よくお代わりを準備してくれる。

「いやぁ、よく食べるね。マーレちゃんも凄いね?」

「でしょでしょ? 私って結構凄いのよ!」

秋に驚かれて、鼻高々と言った様子のマーレ。

ほっそい腹をさすりご満悦。、

「ばっか。女なのによく食うなって言ってんの。つまりは、女子力皆無だって遠回しにディスってんのよ」

ルイの言葉に、マーレはカレー皿を置いた。

「な、なんだとぉ! それって女性差別って奴だから!」

「でたよ...女性差別。そんなこと言ってる奴らは大体が、食事代は男性持ちデート代も男性持ちなんだよ。そんなこと言ってる奴らこそが、男性差別をしてんだよ。都合のいい逃げ道作ってんじゃねぇぞ! 俺だって、お金があったら金髪ねぇちゃんとイチャコラしてぇんだよ!」

思わず漏れた心の声に、マーレドン引き。

最後に漏れたルイの本音は、切実で少年のような、手を伸ばしても絶対に届かない遠い理想。

マーレは無性に、ルイの事がみじめに思えた。


「まぁ、いいことあるって...飲みな?」

マーレが注ぐ酒は、ルイの心に染み渡った。

沢山食べたら、食後の緑茶でい落ち着く。

皆で一息ついて、事務所でテレビを見て、ゲームして具無しカレー大宴会は終了した。

気付けば時刻は二十二時。

事務所の窓からは暗い空と地面を照らす蛍光色が。


「おいマーレ。そろそろ帰れよ」

「えぇ!? ここからがいいとこじゃん! やってないゲームいっぱいあんじゃん! 麻雀をばーちゃんとシャーマンでチャーハンだよ! イエェー!」

ラッパー気取りで韻を踏みポーズを決めるマーレとその肩に乗るティルは随分とご機嫌な様子だ


「確かにゲームの魅惑は強力。だが、帰りを待つ人が抱く、暗い不安はリアル。早く帰ると誓う、その為にしようぜ帰宅! イエェー!」

駆け出しラッパーであるマーレは、ルイの前に膝をついた。

「ほれ、何時までも膝ついてないでさっさと行くぞ」

「ありゃ? 送ってくれるの?」

「渋々ながらだ」

「しゃーないなぁ。渋々ながら送られましょう! そんじゃね、秋君、ティルちゃん!」

スーツの上着を着つつ玄関に向かうと、挨拶を済ませたマーレが走ってくる。

秋たちに見送られつつ、夏の夜の繁華街を抜けてマーレが住む自然公園へ。

「ルイってあの街の皆と仲いいよねぇ? やっぱり事務所があるから?」

ルイは、繁華街を抜ける時に、あちこちのキャッチの兄さんに捕まっては雑談をしてを繰り返していた。

マーレはそのことを言っている。

「まぁ、ずっとあそこに居るからなぁ。自然と話してるうちにって奴だなぁ。それはマーレだって同じだろ?」

「まぁ、ねぇ。あそこに住む皆とはいつの間にか仲良くなったねぇ」

そんな感じにのんびりと身にならない話をしながら自然公園前へ。

繁華街の五月蠅さも消えた静かな場所。

夏だからだろう、鈴虫のような音も聞こえる。

マーレは静かにゆっくりと、内に渦巻く気持ちを吐き出していく。


「ルイはさぁ、私達のことを過大評価し過ぎだよ」

「どゆことだ?」

「密猟者ってのが居て、私達が傷つくのをルイは気にしてるでしょ?」

マーメイドには人の考えを見透かす力は無い筈。

「私達は人間から見たらそりゃ色んなことが出来ると思うよ。でもさ、それって私達から見た人間も同じ。私達は、あんな綺麗な繁華街は作ろうと思わないし、会社も作らない。働きもしないし、こんな公園も作らない。人間は私達のことを幻想種って呼ぶけど、私達からしたら、人間の方がよっぽど幻想だよ」

マーレとルイは公園から見える都会の光を眺める。


「私達の中には、そんな不思議な人間が羨ましくて、一緒に住んだり、付き合ったり、結婚したいって子がいっぱいいるんだ。それ位に人間には憧れがあるの。私達って、ルイが思う以上に欲深なんだよ?」

マーレは茶化す様にルイに笑いかける。

無言の時間が過ぎていく。

二人は唯々、この時間を楽しんだ。

そして、この時間を終わらせたのはマーレ。


「ルイってさ、肝心な所は話さないよね? 私が居るとルイの邪魔になっちゃうかな?」

「......そんなことねぇよ」

「...そっか」

ルイはマーレが何を言いたいのか理解していた。

そして、この答えによってはマーレに消えない傷を残すことも。

だから、しっかりと目を見て、落ち着いて話していく。


「最近、密猟者の動きが活発になっている」

「うん」

「前もおかしな奴らが居たろ? ...だからさ、俺達と一緒に居ると危険だ。今まで通りの奴らならどうにかなるかもしれねぇ。でも、ドラゴン達みたいな奴らが相手だとよ...ダセェ事言うが...守れる自信がねぇ」

街灯に照らされた散歩コースには誰もおらず、いつの間にか湖の前に。

ルイの言葉に思う事があったのか、何も言うことなくゆっくりと湖に向かうマーレ。

チラリと見たマーレの表情は、いつになく優しい表情で、だけどその青い瞳は何か悲しそうだった。

どうやら、今晩は曇りのようだ。

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