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イノコヅチ  作者: 林田ナカヤ
1/2

ある刑事の話

1

あれからもう、20年ですか。長いものです

ね。どうりで私も年をとるわけだ。まったく、変わっていません。近くに山があって、その近くに住宅街が少しある。変わったといえば、駅ができてるということくらいですかね。あの頃は、電車なんか通ってなかったから、来るのに相当時間がかかりましたよ。何しろ、都市部からバスで2時間半かかって、そこからさらに歩かなければいけないんですから。

ここの名物、知ってます?焼き餅なんですよ。ただ、焼いただけではなくて、中に小豆が入ってる。おいしいですよ。いまでは、チーズとかも入れて販売してるとこもあるらしいですが。

当時はね、何しろよく買って食べましたよ。嫌でもここに来て捜査しなければならないんですから。

2

さて、どこから話しましょう。

ああ、いいですよ。お金なんて。今日は私の奢りです。

まず、あの事件は私にとっても衝撃でしたね。

少年犯罪が結構問題になっている時期でしてね。でも、そういうものではありませんでした。あの事件は。何しろ、中学生の女の子が、顔を滅多打ちにされて、全身ズタボロで見つかったんですから。

仏さんを見たとき、思いましたね。これは正気の沙汰じゃない。と。

事件の起きた日は、中学校の遠足で山までやって来ていたそうなんです。近くにお寺もありますし、それを見に来てたんですかね。通報を受けたのは、四時ごろでした。担任の女の先生が、生徒がいなくなった、と通報してきたんです。

いなくなった女の子は、途中まで友達2人といて、そのあと、いなくなったらしいんです。たしか、綺麗な花があるから取ってくるといって森の奥まで行ってしまったとその友達は話していたと思います。

本部にも連絡が入って、捜索隊が山に入りました。私も、その時は、山で足を滑らせて、どこかで気を失っているだけだろうと思いました。

ですが、違ったんです。

捜索から2時間後に女の子は変わり果てた姿で見つかりました。


え、時間は大丈夫かって?

大丈夫です。家内は今子供と旅行に行ってますから。遅くなっても文句は言われませんよ。

一応、犯人らしき男は捕まりました。


バス停から、中学生の団体にずっと付いて来ていたのを、1人の学生が見ていたので、防犯カメラの映像で割り出しました。

そして、近くに落ちていた凶器らしき棒に、その男の指紋が付着していたんです。

でも私は、真犯人は別にいると思っているんです。

え、誰かって?


…。


友達2人がいなくなるまで一緒にいた、と言いましたよね。

本当に、痛ましくなるくらい2人は泣いていたんです。でも、私は今はこう思うんです。

2人は、戻ってくるのが別々だったんです。

名前をAとBにしておきましょう。

Aが先に担任の元に戻ってきて、ブルブル震えていたんです。

Bは5分後に戻ってきました。

簡単なことだったんです。


なぜ、Bは遅れて戻って来たのか。


犯人だったからではないでしょうか。


今となっては分かりません。証拠もありません。


ただ、1つ言えることは、2人は転校していってしまったんです。


逮捕された男が犯人ということになって、一応事件は終結しました。

でも、男が取り調べ中におかしなことを言っていたんです。

彼女のためにやった。


この彼女というのがBのことだとしたら?

Bが殺された子に恨みを持っていたとしたら?

そして、男に殺させたとしたら?


そう思いませんか?




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